天野 晴香(あまの はるか)
”自分の住んでいる地域が好きになる”ようなミュージアムをつくりたいという想いで入社。制作部門1年、企画部門1年を経て、公共文化施設の営業を担当。2019年まで熊本県と長野県の案件を主に担当。産休・育休を経て2021年に復帰し、都内案件を中心に担当している。
ミュージアムや公共施設などの文化市場に携わりたいと2015年に乃村工藝社に新卒入社した天野 晴香。文化環境事業部の営業主任として、数々のプロジェクトを手がけます。出産や子育てを経験し、さまざまな利用者が抱える文化施設への心理的・心理的アクセシビリティを課題にR&D活動にも取り組む天野が、これまでのキャリアや想いを語ります
天野が所属する営業推進本部 文化環境事業部 営業1部 第2課は、国や地方自治体をお客さまに持ち、博物館や美術館、科学館、図書館、子育て支援施設などの公共施設のプロジェクトを手がける部署です
天野 「カバーするエリアは北海道から九州まで全国各地にわたります。その中で私は主に東京都内の案件を担当しており、現在は国の展示施設の設計業務、区の観光センターや図書館のコンサルタント業務など、複数のプロジェクトを進行中です」
現在進行中の大規模な国の展示施設のプロジェクトは基本設計の段階。お客さまの「こういう空間や展示にしたい」という要望を丁寧にヒアリングし、チームのデザイナーやプランナーと共に企画やデザインに落とし込んでいきます。
天野 「お客さまとの細かなやりとりは営業である私の担当です。プロジェクトマネジメントに始まり、お客さまの本音を引き出す役割も担います。
営業担当として、私はお客さまの一番の理解者でありたいと思っています。『話しやすいな』『この人なら話が通じるな』と感じてもらい、社内メンバーの誰よりもお客さまに近い存在として、ただ話を聞くだけでなく、お客さまの発言の裏にある想いまでくみ取るよう心がけています。
今回のプロジェクトは、お客さまの中に博物館の展示を制作するのが初めての方もいらっしゃいます。だからこそ、本質的なニーズをじっくり丁寧にヒアリングすることが、お客さまの本当にやりたいことの実現につながると思っています」
さらに公共施設の場合、企業案件とは異なる難しさがあると天野は話します。
天野 「公共施設は、大切な税金を使っている事業なので、市民(納税者)などの利用者にどう使われるべきかを一番に考える必要があります。
そこでよく行う手法は、市民などの利用者とのワークショップ。最近では視覚や聴覚に障がいがある方、小さな子どものいる家族など、これまでミュージアムに行くハードルが高く『行きたいのに行けない』と感じている方々にもヒアリングを行っています。よりひらかれた場所にしていこうという動きが増えています」
社会的な課題や共生社会の実現に向けた国の取り組みなどに仕事で触れる中で、自身も問題意識を感じた天野。3年前から「インクルージョン&アート」という社内のR&D活動に参加しています。
天野 「クリエイティブな活動を通じた「共生する社会づくり」と「共創する仕組みづくり」をテーマに『どうすれば、あらゆる人のお出かけ先に対する心理的・物理的アクセシビリティが向上するのか』という調査・研究を行っています。
例えば、空間の使い手と対話を重ねながら場づくりをおこなうカード形式のワークショップツール『インクルーシブデザインパターン』や、視覚に頼らずに触覚や音を頼りに絵画鑑賞を楽しめる新しいツールづくりなどを行っています」
乃村工藝社では通常、営業職であっても入社1年目は制作部門で現場を経験し、2年目から営業職のキャリアをスタートします。しかし天野のケースは少し異なっていました。
天野 「入社前からプランニング職にも興味がありました。そこで当時の上司の理解もあり、2年目に企画部門で経験を積ませていただけることになったんです」
このようなキャリアパスは現在の制度では基本的に設けていないものの、当時の特例でプランナーの仕事を1年間経験した後、3年目から営業職として全国の文化施設のプロジェクトに携わることに。2016年から2019年にかけて、熊本城天守閣や松本市立博物館の展示設計業務、菊池市中央図書館の施工業務など、多くの案件を手がけました
天野 「行政案件は、企業のような継続的な顧客関係がないことが特徴です。1つの仕事が終わると、また一からお客さまとの関係性を構築して、新たな事業や仕事を自ら作っていかなければなりません。いわば『開発力』が、文化環境事業部の営業では非常に重要だと学びました。
また、2年目にプランニングを経験したこともあり、『開発力』に『提案力』を掛け合わせることで、よりお客さまの本質的なニーズや想いを引き出せる営業になれるのではないかと考えるようになりました。
例えばデジタルコンテンツを作りたいというご要望があれば、トレンドや事例の紹介だけではなく、さまざまな方向性の別の手法も提案することで、『本当はこれがやりたかったんだよね』という声を引き出し、具体的な仕事につなげていく。想いをかたちにするための可能性を提示できる力を伸ばしていきたいなと感じました。」
その後、2019~2021年にかけて産休・育休を取得。復帰前には上司との面談があり、今後の働き方について丁寧にすり合わせできたことが安心につながったと振り返ります。
天野 「私の希望として、時短勤務にしたいこと、出産前は全国の案件を担当し出張も多かったのですが今後はできるだけ移動距離が少ない関東の案件を担当させてほしいこと、業務量は徐々に増やしていきたいことなどを伝えました」
復帰後は、周囲の協力を得ながら、より効率的な働き方を意識するようになりました。
天野 「上司や周りのメンバーの理解もあり、要望や状況を伝えやすい環境です。
現在は子どもの保育園のお迎えの時間に合わせ、残業せず定時で退勤するスタイル。子どもの急な発熱や急ぎの仕事が入っても対応できるよう、復帰前よりもスケジュール管理を徹底するようになりました。緊急度や重要度を考慮して優先順位をつけ、1日のスケジュールを分単位で管理しています」
▲ 日本科学未来館常設展示「ナナイロクエスト -ロボットと生きる未来のものがたり」
産休・育休から復帰直後は、上司のサポート的な役割で徐々に新しい働き方に慣れていった天野。しだいに「営業として自分1人で仕事を回して、もっと挑戦したい」という気持ちが高まってきたと言います。
その中で手がけることになったのが、「日本科学未来館 常設展示「ハロー!ロボット」「ナナイロクエスト -ロボットと生きる未来のものがたり」「ノーベルQ」 でした。開発段階からプロポーザル獲得、設計、施工まで約2年間、大規模プロジェクトに挑戦しました。
天野 「社内のコンテンツ系チームやグラフィックチームなど、これまで関わったことのないメンバーとの横断的な編成で、関係者も多く取りまとめに苦労しました。特に展示内容は、ロボットと謎解きを掛け合わせた展示や、 “老い”を疑似体験できる展示など、前例のない新しい取り組みだったので、社内チームはもちろん、お客さまと一緒に悩みながら作り上げていきましたね」
このプロジェクトでは、インクルーシブデザインの視点も重視しました。
天野 「視覚や聴覚に障がいのある方、車椅子の方、子どもや高齢者の方などを招いて、展示のデモ検証を何度も行い、そこで出たさまざまな意見を取り入れていきました。
個人的にも関心のあった分野ですが、仕事として本格的に携わったのはこれが初めて。当事者の方の意見から得られた発見や気づきも多く、とても勉強になりました」
2023年、主任への昇格を経て、天野は次なる挑戦として東京国立博物館「あそびば☺とーはく」のプロジェクトに監修として参画します。
▲ 東京国立博物館「あそびば☺とーはく」 ©ナカサアンドパートナーズ
天野 「2024年11月に、同館で初めてお子さまも保護者の方も一緒にのびのびと遊べる場所が期間限定でオープンし、乃村工藝社は企画監修を担当しました。
『博物館で思い切り遊んで、未来を担う子どもたちに、「楽しかった!」という気持ちを持ち帰っていただきたい。そして、お子さまを連れてご来館くださった保護者の皆様にも、周りに気兼ねする必要がない、居心地の良いスペースを提供したい。』そのような思いを込めて東京国立博物館様が企画されたプロジェクトです。
当社は、社内R&D「インクルージョン&アート」の知見を活かし、子どもが使用するプレイスペースとしての造作・什器の安全面やグラフィック・サインのあり方、カームダウンスペースのあり方などをご提案させていただきました。
実際にオープン後、子どもたちが楽しそうに遊んでいる姿を見られたのはうれしかったですね」
今後はより多くの人々にひらかれた文化施設の実現を目指したいと、天野は話します
天野 「文化施設は全ての人にひらかれているべきですが、実際に訪れる人は偏っていると感じています。その裾野を広げるという意味でも、文化市場を盛り上げていく意味でも、誰一人取り残さず、だれもが訪れやすい空間を提案していきたいです。
目指すのは、人々の“お出かけ先”の選択肢にミュージアムなどの文化施設が入る世界。小難しい場所ではなく、気軽に楽しめる身近なスポットの1つになるといいですね」
天野が抱く文化市場への想いは、地元・熊本での経験に深く根ざしています。
天野 「私は大学入学時に上京したのですが、地元を離れて初めて熊本の良さを実感しました。その体験から、地域の魅力を発信できるミュージアムがあれば、地元にいながらその地域を好きになれるのではないかと考えたんです。これが乃村工藝社を目指し、文化市場に携わりたいと思った理由でもあります」
そんな乃村工藝社の魅力を、天野はこう語ります。
天野 「やりたいことを応援してくれる会社だと思っています。夢であった文化施設のプロジェクトに関われていますし、インクルーシブデザインや新しいことにも挑戦したいと思えば、仲間が集まり、それを極め、仕事の中でも活かせています。目の前の業務をこなすだけではなく、自己実現もかなえてくれる会社だと感じますね。
また、産休・育休から復帰した後もスムーズに業務に戻れる環境や、上司との関係性など、多様なライフステージに合わせて働きやすい風通しの良さも魅力の1つです」
最後に、天野が考える営業の仕事の面白さとは。
天野 「私はコンペやプロポーザルに取り組んでいる時が一番ワクワクします。それは、お客さまの想いをいかに理解できているかが問われる場面だから。自身の提案が採用されることは、お客さまの一番の理解者になれたという証明です。それを実感できる時が、私にとって一番うれしい瞬間ですね」
※ 記載内容は2025年5月時点のものです
”自分の住んでいる地域が好きになる”ようなミュージアムをつくりたいという想いで入社。制作部門1年、企画部門1年を経て、公共文化施設の営業を担当。2019年まで熊本県と長野県の案件を主に担当。産休・育休を経て2021年に復帰し、都内案件を中心に担当している。
お問い合わせ/お見積もり依頼/資料請求は下記よりお気軽にご連絡ください。
お問い合わせの多いご質問や、よくいただくご質問は別途「よくあるご質問」ページに掲載しておりますので、
ご活用ください。