空間創造によって
人々に「歓びと感動」を届ける

乃村工藝社
WE ARE NOMURA

“好き”を原動力に、多彩な強みを活かす。領域を越えて紡ぐ空間づくり

空間デザインの最前線で、自らの“好き”を原動力に走り続ける中川百合。文化施設の展示設計から本物の自然を扱うランドスケープデザインの領域へと、その視野を広げつつあります。圧倒的な熱量と、先を見据えるプロとしての視点。その両方を胸に抱きながら歩んできた軌跡と、これからの空間づくりについて語ります。

常にお客さまの視点に立つ。手と足を動かし、五感に響く体験価値をカタチに

中川が所属する稲野辺ルームでは、文化施設を中心に数々の空間デザインを手がけています。そこで中川は現在、動物園や水族館などの自然環境教育に関わる展示設計を担当しているといいます。

「行政の担当者や学芸員、飼育員と一緒に、施設のメッセージや展示体験を考えるのが私たちのチームです。若手が多く、デスクに動物のぬいぐるみがたくさん置いてあるようなワイワイと楽しい雰囲気があります。私自身も生き物が好きなので、動物園や生き物についての啓発を目的とした施設を多く任せてもらえるのはうれしいです。「ミュージアム+α」がルームのテーマということもあり、これまで乃村工藝社であまり扱ってこなかった屋外空間の領域にも少しだけ携わっています」

そんな中川には、空間を創り上げる中で大切にしている価値観があります。

「私が仕事をする上で大事にしているのは、手と足を使うことです。「現場」に足を運んで実際に見て感じないと、人に伝わる空間は作れないと思っています。特に生き物や自然に関するテーマは、実際の環境から感じた魅力や、いのちの尊さに心動く体験を元にすることで、訪れる方の心にも届くものになっていく。また、そうした体験が、専門性をもつクライアントと同じ目線にたつことにもつながっています。自分の中に想いを取り込むことで、自分が心から納得できる水準に達するまで手を動かし続けられます。私たちのルームは「こんな施設になったらいいな」という、川上から考えたいメンバーが多いので、企画とデザインの領域を横断しながら想いをカタチにしているイメージです」

情熱を持って手を動かす一方で、お客さまと向き合う際にはプロとしての配慮を忘れません。

「文化施設のプロジェクトは、行政の方や施設運営者など、異なる専門領域を持つ方々と一緒に進めます。だからこそ常に、お客さまの立場ならどう受け取るかを想像しながら、最善の表現を探っています。最高のアウトプットを出すのは当然ですが、『こんな疑問を持たれるかもしれない』と懸念を先回りして、直感的に伝わる資料を用意する。そうした細やかな配慮も、お客さまと同じゴールを目指す上で欠かせないと思っています」

オールジャンルを形にできる、空間デザインへ。引き出しの多さを強みに現場で汗をかく

中川が乃村工藝社に入社したのは2017年のこと。幼い頃からものづくりが好きだったという原体験から、空間デザインという道を選ぶまでの歩みをこう振り返ります。

「正直、学生の頃は『これだ』と言い切れるやりたいことが見つからなくて。ただ、手を動かして何かを作ることはずっと好きでした。だからまずは好きを信じて、美術の大学へ進みました。そこで平面も立体も網羅的に学ぶうちに、特定の分野に絞らずオールジャンルに関わることのできる仕事がいいな、と思うようになりました。そんな時に、同業他社のインターン経験を通じて空間デザイナーという職種を知ったんです。業界大手の乃村工藝社なら規模も大きく、さまざまなことに挑戦できる土壌があると感じて入社を決めました」

大学時代に特定の分野に縛られずマルチに学んだ経験は、現在の業務にも大いに活きているといいます。

「乃村工藝社というと、建築を専門に学んだメンバーが多い印象が強いかもしれませんが、私自身は建築のバックグラウンドを持っていません。その代わり、映像やグラフィック、ブランディングなど、さまざまな視点から多角的なアプローチを考えることが得意です。空間をひとつの正解に固定して組み上げていくのではなく、こういう見せ方もある、あんな表現もできると、アイデアの選択肢をたくさん提示できる。そうした自分なりの引き出しの多さは、いろいろな専門家を巻き込んで新しいものを生み出す上で大きな強みになっていると感じています」

多彩なアプローチを武器にする一方で、プロフェッショナルとしての基礎を身につけるきっかけとなった経験があります。それは入社2年目で携わった、アクアワールド茨城県大洗水族館の改修プロジェクトでした。

「先輩デザイナーと一緒に担当したのですが、学ぶことが本当に多い案件でした。とくに印象に残っているのは、やったことのないことにも果敢に挑戦する姿です。手探りだった水槽の照明演出やイルカショーの演出まで、経験がないことでも現場でのテストを繰り返したり、生き物の特性をよく知ることで課題を解決したり…その熱量で、クライアントの信頼をどんどん獲得していっていました。

制作の終盤では、家具や標本、グラフィックのレイアウトや映像調整で現場に入り、私含めて職人さんたちと走り回っていたのも印象的です。デザイナーはパソコンの前で図面を描いているだけではないんだな…と知りました。最後の最後まで決して妥協せず、いいものを残すために、自ら手足を動かし続ける真摯なプロの姿勢を背中で教わりました」

5カ国13施設を視察。デザイナーの枠を越えてつかんだ“伝え方”

▲ヒアリングで訪れた、アメリカのブロンクス動物園。自然への敬意を感じる、空間づくりの秘密を伺った

中川は、水族園実績に次ぐ、動物園分野への参入可能性を調べるための社内プロジェクト「みらい動物園」の活動に携わりました。

「デザイナー主体で進めた開発プロジェクトです。3年間でヨーロッパやオーストラリアなど5カ国13施設に自ら足を運びました。海外における動物園での展示傾向や潮流を手探りで調べたり現地スタッフへのアポイント取りから通訳の手配まで行いました。はたして成果につながるのだろうか、といった不安もありましたが、この視察がきっかけでこれまで乃村工藝社にはなかった協力会社や国内外の業界関係者との新たなつながりがたくさんできました。個人の熱意や挑戦を応援してくれるのは、当社のいいところだと思います」

海外で得た知見やつながりは、次のプロジェクトを形にする際にも大きな強みとなりました。

「『アマミノクロウサギミュージアム Quru Guru』では、海外の事例をもとにお客さまへ提案しました。動物愛護の観点から、日本では実現が難しかった公開型の治療室ですが、海外での事例を用いながら、公開の意義を伝えることで採用されました。海外で学んだ新しい知見が、社会課題との新しいタッチポイントの創出につながると実感しました」

続いて手がけたプロジェクトの中で、自身の仕事への想いを再確認するきっかけとなったのが、『千葉市動物公園 動物科学館 -生命の森 熱帯雨林 Wonder of Rainforestー』の展示改修でした。

「小さい頃から通っていた思い出深い施設で、仕事を通じて生物や自然のことを考えるうちに、生き物が大好きだった気持ちにあらためて気づかされました。チームメンバーと熱帯雨林について猛勉強しながら、お互いに補完し合って進めたことも印象的でした。実際にボルネオ島の熱帯雨林に環境音の収録等に行ったりもして、過酷で豊かな環境を身をもって体感してきたことも、没入感のある空間づくりに生きています。楽しく夢中で仕事をするうちに、クライアントとも良い関係を築くことができました。クオリティの高い仕事ができたのも、海外での知見や自分の“好き”が、色々な方を巻き込む”歯車”になっていたからだと思います」

▲千葉市動物公園の展示監修者らとボルネオ島の国立公園内の熱帯雨林へ。現地環境音の収録・スチール撮影を担当。

さまざまな経験を積む一方で、空間デザインという仕事のプロとしての厳しさについても語ります。

「自分が手がけた仕事が誰かの心に残り続けるのは、大きなやりがいです。10年、20年と長く残るものを作っているからこそ、安全性や設備に不備がないかなど、気にすべきことが多岐にわたります。そうした大変さはありますが、完成した展示を来館した子どもたちが見入っている姿をみると、嬉しくなります。幼いころ大好きだった動物公園を訪れていた自分と重なり、胸が熱くなりました」

さらに中川は、民間企業の案件を通じてお客さまへの伝え方にも変化があったと話します。

「八幡屋礒五郎の案件で初めてメインのデザイナーを任された時のことです。実はそれまで、自分のデザインを言葉で説明するのが苦手でした。でも、相手を納得させるためのデザインではなく、ゼロから自分が考えて、心から思うあり方を形にして伝えてみたんです。すると不思議と言葉にも詰まらなくなりました。クライアントの課題をひもときながら、純粋な想いを織り込むことが大切なのだと気づくことができました」

チームで創り上げる熱量を大切に。周囲への気遣いを胸に、思いもよらない空間を一緒に

さまざまなプロジェクトを経験し、一歩ずつ確実な歩みを進めてきた中川。自らの好きを起点にした、これからの目標についてこう話します。

「これからも、自分の"好き"をとことん極めながらジャンルの幅を広げたいと思っています。『生き物が好きなデザイナーといえば中川』——そう認知される存在になれたらうれしいですね。最近は、あるプロジェクトで屋外の植栽計画に携わったことをきっかけに、本物の自然を扱うランドスケープデザインに強く惹かれています。屋外領域は、当社が中期経営計画で新たな柱として掲げているテーマのひとつでもあります。野鳥や虫が実際に息づく屋外空間の設計にも、自ら手を挙げて関わっていきたいです。そして将来的には、同じ想いをもつ人たちと一緒に、生き物と人のウェルビーイングな関係を、空間でもっと体現していきたいです」

そんな目標の先にある、まだ見ぬ未来の景色について、中川はさらに言葉を続けます。

「やりたいことを自ら発信する勇気を持って、みんなで一丸となってひとつの空間を創り上げる。そうした面白さに共感できる人と、新しい場所を創れたらいいなと思っています。自分の担当領域を超えて周りに目を配れることも、プロとして信頼を得る上でとても大切になります。若い方の新しいアイデアや着眼点にいつも期待していますし、まだ誰も思いもつかないような空間のあり方を、いつか一緒に考えていけたらうれしいです」

自身の好きを確かな原動力に、周囲への細やかな配慮とプロとしての責任を胸に進む中川。これからも手と足を動かし、人々を魅了する新しい体験をカタチにし続けていきます。

※ 記載内容は2026年6月時点のものです

中川 百合(なかがわ ゆり)

千葉市出身。東京藝術大学デザイン科卒業
乃村工藝社入社以来、博物館、水族館、動物園等の展示・空間デザインを手掛ける。自らの自然体験を活かした設計をすることをモットーに、インプットとアウトプットに日々追われている。
好きなもの:サウナ、高校野球、海水浴、自然と生き物を感じること

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