クリエイティブ・デザイン本部デザインコレクティブセンター“no.10”でルームチーフを務める鈴木 祥平は、商業施設や専門店、住宅やオフィスなど、幅広い空間デザインを担当しています。クオリティを追求し、期待の一歩先を提案する姿勢を貫く鈴木が、仕事のやりがいと信念を語ります。
目線を揃え、個を伸ばす。大型プロジェクトを成功に導くチームマネジメントの極意

▲2025年日本国際博覧会 日本館
担当範囲:展示デザイン(基本設計、実施設計)、施工、運営 / クライアント:経済産業省、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
※ 丹青社とのJVにて推進
2025年大阪・関西万博の日本館、アーチを描く美しい建築の内部では、丹青社と乃村工藝社によるコンソーシアム(共同企業体)が組まれ、展示デザイン業務が進められていました。この大きなプロジェクトにおいて、乃村工藝社側のクリエイティブを主導したのが鈴木です。
鈴木「総合プロデューサーである佐藤オオキ氏が掲げるコンセプトをベースに、展示空間を具現化していくというミッションを担うことになりました。それぞれ異なる強みを持つ丹青社と乃村工藝社が足並みを揃えてデザインワークを進めていきました。コンセプトに向かって各エリアをどうチューニングし、多岐に渡る関係者の承諾を得ていくか。そこが大きなポイントでしたね」
展示空間の実装に向けて、定期的な打ち合わせの中で懸念点を洗い出し、言葉や図面だけでは判断が難しい造形や演出については、ほぼ実空間を組み上げる「仮組(かりぐみ)」を行うことで、徹底したリスクヘッジを積み重ねていきます。
鈴木「クライアントの皆さまや、プロデューサーと一緒に確認し、同じ完成像を描く。そうして目線を合わせていくプロセスを何より大切にしました。必要な対応を重ねながら確認項目を1つずつ潰していったからこそ、円滑にプロジェクトを推進することができたのだと思います」
こうした大型プロジェクトの一方で、鈴木は国内のみならず国外においても、また業態も異なる案件を常に10件前後並行して推進しています。マルチタスクを円滑に進行させる鍵は、関係者との密なコミュニケーションだと言います。
鈴木「関わる人々の認識にずれが生じると、軌道修正や調整に時間がかかることがあります。オンラインでの打ち合わせでも、電話1本でもいい。とにかく全員が同じ方向を向いて最短距離で進んでいるかを確認し続けることが、案件数が多くなればなるほど重要になります」
現在鈴木は、乃村工藝社のデザインチーム“no.10”に所属し、鈴木ルームを率いています。年齢やキャリアも多様なメンバーの個性を引き出しながら、チーム全体のパフォーマンスを最大化するマネジメントを行っています。
鈴木「メンバーによって、CG、図面、スケッチなど、得意分野はそれぞれ異なります。業務や案件の振り分けの際はそうした点も加味しますが、本人の希望や成長の方向性も踏まえ、場合によっては新しい領域にも挑戦してもらうことがあります。ときにはあえて苦手な領域に入ってもらい成長を促すことも。個人の稼働状況や作業のペースを見極めながら余裕を持って調整し、モチベーションを損なわないようなスケジュールコントロールを心がけています」
成長を支えた「信念」と「一念発起」。タフな現場で磨かれたデザイナーの礎

今でこそ数々の空間デザインを同時に手掛ける鈴木ですが、大学時代はデザインとは遠く離れた経営学部に在籍していました。しかしふと、自分の部屋のインテリアに興味を持ち始めたのが転機となりました。
鈴木「些細なきっかけからインテリアの世界に興味を持ち始めました。そこから空間に関わる仕事が世の中にあるのだと知り、そういった職業に就いてみたいと思いました。
大学3年で単位を全て取得した後は、4年次の1年間をアルバイトに費やし専門学校に進学しました。周囲が就職活動をしていくなかでも、躊躇はなかったですね。『自分で一度決めたら進む』そういう性格なので」
専門学校を卒業後、2008年に店舗デザインを中心に手掛けるデザイン事務所へ入社します。専門学校の専攻は住宅でしたが、あえてプロジェクトのサイクルが早い商業空間の領域を選んだのには、強い危機感がありました。
鈴木「今思えばそんなことはないのですが、当時は大学を経ての専門学校ということで、焦りがあったのだと思います。とにかく数をこなして経験を積んでいかなければならないと考え、あえてサイクルが早くて厳しい環境を志望しました。
入社後は常に10件以上の案件を並行して抱え、タイトなスケジュールの中で非常に密度の濃い日々を送っていました。忙しい時期もありましたが、あの圧倒的な数をこなした5年間が、間違いなく今のベースになっています」
携わった全てのプロジェクトにそれぞれの難しさがあり、トラブルや壁が存在しました。それを鈴木は「自分がやらずに誰がやるんだ」と潔く決断し、突破してきました。過酷な下積み時代を経て、プロジェクトを進行する上でのリスクを察知し、先読みをする嗅覚も身についたと言います。
そんな鈴木は、2013年に次なる一歩を踏み出します。「これからの仕事に必要」と感じた語学力を身につけるため、濃密な5年間の休暇も兼ねて海外へと目を向けました。
鈴木「フィリピン・セブ島での半年間の語学留学、そしてアメリカ・コロラド州の設計事務所でのインターンシップを経験しました。単身で言葉も文化も違う異国の地に身を置き、新しいものをつかみにいく。その経験自体が大切だったのだと思います。視野が広がり、それまでの自分の枠組みのようなものが外れて開かれる感覚がありました。
帰国後にフリーランスを経て乃村工藝社へ入社しましたが、まったく知らない新しい環境へ飛び込むことにも、海外経験を経た後だったからこそ迷いはありませんでした」
求められる期待の一歩先へ。クオリティを高めていく、妥協なきデザインプロセス

▲% Arabica Jakarta PIK Drive Thru
乃村工藝社への入社後、鈴木のキャリアを象徴するプロジェクトとなったのが、グローバルコーヒーブランド「% Arabica(アラビカ)」です。“no.10”がブランド全体で現在130店舗以上を手掛けるなか、鈴木自身は進行中のプロジェクトを含め50店舗近いデザインを担当。世界各国に共通する美しいブランドイメージをベースとしながら、それぞれの国や店舗に合わせたローカライズをカタチにしています。世界各国の都市でデザインをカタチにしていくプロセスは、常に挑戦の連続です。
鈴木「それぞれの国やエリアごとにどのような店舗にしていくかしっかりとコンセプトを構築し、デザインを進めていきます。世界各国、その店舗ならではのコンセプチュアルなデザインや空間を具現化できるということも踏まえて、挑戦や新たな発見があるプロジェクトだと感じています。
お客さまから要望をいただいた際は、ご要望に沿ったプランをベースとして整理したうえで、ニーズの一歩先を行く選択肢もあわせてご提案します。期待に応えることの繰り返しが、結果としてさらなる依頼や、建築から手掛けるような大規模プロジェクトへとつながっていくのだと思います」
こうした真摯な仕事ぶりの根底には、全ての制作物に対して徹底的に向き合い続けるという、鈴木の確固たる信念があります。
鈴木「仕上げた図面やデザインを、一度で終わらせずに何度も見返します。昨晩必死に仕上げたものでも、朝起きて見直したときに『いや、ちょっと違うな』と思えば描き直す。より良いデザインにするために、自分が一度作り上げたものを提出まで練り上げていく。そのプロセスの積み重ねこそが、クオリティの高さに直結すると信じています」
世界のどこでも「同水準のクオリティ」を。卓越した仲間と刺激し合う

プロフェッショナルとして国内外を問わず多くの実績を重ねる鈴木は、近年、アワードへの積極的な挑戦も続けています。数々の権威あるデザイン賞への応募や受賞を通じて、個人や会社の社会的認知度を高めるだけでなく、自身のクリエイティビティを研ぎ澄ます貴重なインプットとなっています。
鈴木「応募する過程で他の人たちがどんなデザインを手掛け、どんなプロジェクトが受賞したのか、その潮流やトレンドに深く触れる機会が多くなります。必然的に目が肥えていきますし、自分のデザインを客観的に見つめ直す良い機会になっています。量だけではなく質の向上を意識し続けるためには欠かせない挑戦ですね」
現在、鈴木の活躍は商業空間の枠を軽々と飛び越えています。海外ブランド関係者の国内住宅や、有名企業の本社移転プロジェクトなど、住宅からオフィスまで多様な空間を手掛けています。入社以来10年以上にわたって、この場所で走り続けられる理由を、鈴木はこう語ります。
鈴木「多様な規模のプロジェクトに携われる機会が豊富にあり、専門性を持つ優秀なメンバーと協働できる環境があると感じています。同じ会社にいながら、周りのメンバーの仕事を少しのぞくと、『すごい』と圧倒される瞬間がたくさんあります。
成長する人ほど他の人たちのデザインを見て学んでいると思いますし、そうやってお互いを刺激し合える優秀な仲間達が良い意味でひしめき合っているのが乃村工藝社というフィールドだと思います」
自身の決断力と、積み重ねた経験によってキャリアを切り拓いてきた鈴木。デザインの道を志す未来のクリエイターたちに向けて、豊かで広大なフィールドを持つ乃村工藝社という環境の可能性を伝えます。
鈴木「他ジャンルからでも簡単に飛び込める、とは言いませんが、ただ、乃村工藝社が持つ多様な機会に溢れた環境は、飛び込んだ人に対して新しい道を示してくれますし、その人自身が輝ける場所を提供してくれます。
国内と国外、同等数のプロジェクトに携わっている今、自分としては新しいジャンルへ挑戦することと同時に、日々目の前にある案件を確実に進行させ、世界のどの地域でも国内と同水準のクオリティを実現できるよう、これからも実直に空間や関わる人々と向き合っていきたいです」
※ 記載内容は2026年6月時点のものです
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