生命の森[熱帯雨林]を 知って感じる。人びとが地球環境を考えるきっかけに
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清田義昭さん千葉市動物公園
調整主任
岡野鈴子さん千葉市動物公園
飼育2班
盛口 満さん沖縄大学 人文学部こども文化学科
教授
中川百合さん乃村工藝社
クリエイティブ本部 第二デザインセンター デザイン3部 深野ルーム デザイナー
竹内東子さん乃村工藝社
クリエイティブ本部 プランニングプロデュースセンター 企画2部 第5ルーム プランナー
安藤慶行さん乃村工藝社
コンテンツインテグレーションセンター テクニカルディレクション1部 第1ルーム テクニカルディレクター
planning & design ─大人から子どもまで学べる[ミュージアム]
千葉市動物公園 動物科学館
千葉・若葉区
市民の身近な動物園として、1985年に開園した千葉市動物公園。2005年には、飼育されているレッサーパンダの「風太くん」が、一世を風靡したことをご記憶の方も多いだろう。園内には開園時から、主に熱帯の動物について学べる動物科学館が併設されていて、国内では先駆的な存在になっている。その動物科学館は、2025年3月、開館40周年を機に館内の展示を一新。学術的なレベルの高さを追い求めながら、まるでテーマパークを思わせるような、熱帯雨林を体感しながら学べる施設へと生まれ変わった。
20年前から温めてきました

リニューアル前とほぼ変わりない建物のエントランスに足を踏み入れると、一転して、そこは「生命の森 熱帯雨林」の入り口。3階の高さまで吹き抜けになった天井を突き破るようにシンボルツリーのフタバガキがそびえ、周囲を熱帯の植物たちが囲む。樹から樹へと渡ろうとするサル。枝や幹に隠れた小動物たち。上空には鳥が舞う。ボルネオ島の熱帯雨林を再現した精巧なジオラマだ。
ここを起点に、館内には熱帯雨林のさまざまな顔を見せてくれる9つの展示室が続いている。コースの途中には、熱帯雨林に生息するアルマジロ、コウモリ、ロリス、小型サルなど、小動物の生態がガラス越しに見られるエリアや、半球形の巨大なガラス張りドームに、熱帯植物が生い茂り、熱帯の鳥やナマケモノが放し飼いにされた[バードホール]などが散りばめられている。
2025年3月まで千葉市動物公園の副園長としてリニューアルプロジェクトを担当し、現在は同園の調整主任を務める清田義昭さんは、リニューアルは時代の流れでもあったという。
「園内の大きな建物で、動物の展示はもちろん、色々な学習機能やレクチャールームに使えるホールもあって、来園者の休憩スペースにもなる。こういう施設をつくったのは、日本では千葉市動物公園が最初だったと思います。
言い換えれば、日本で一番古い施設なわけで、展示内容や扱っているテーマが時代に即していないという想いは、かなり以前から持っていました」
実は、清田さんが最初にリニューアルを構想したのは、20年以上も前のことだった。
「おそらく2000年前後のことですが、私がまだ飼育係をしていた頃、施設部門の責任者から、ゆくゆくは動物科学館を改修することになるだろうから、何か意見書を出してください、と言われたんです。
温度管理ができるので、当時から館内で飼育しているのは熱帯に棲む動物がメインになっていました。それをちゃんと生かすには、熱帯雨林をテーマにするべきだという意見書を書きました。今回のリニューアルでも、その意見書が生きています」
清田さんが続ける。
「そもそも動物園の使命のひとつに“種の保存”があります。絶滅にひんした動物を動物園が協力して、ちゃんとつないでいこうということなのですが、その絶滅しかかっている動物は、あらかた熱帯の動物なんです。
そうすると、動物だけを展示して、大切な動物だから、絶滅しかけている動物だから増やしていきましょう、と言うだけでは人びとにあまり実感してもらえない。動物たちが暮らしている環境を知ってもらった上で、理解していただく。
熱帯雨林について、生態系などの自然科学的な面と、人間が熱帯雨林を破壊してきた歴史も含めた人文学的な面の両方を見せたいというのが、基本的な考え方でした」

清田さんとともに、リニューアルプロジェクトを担当した千葉市動物公園の岡野鈴子さんは、来園者に考えるきっかけをつくることが課題だと考えていた。
「動物園の来園者は、こういう学習施設よりも、生きた動物を見に来られる方が大半です。そうした人たちに、どうやって興味を持っていただくのか。熱帯の動物を多く見ることができる一方で、その動物たちがどんな環境で暮らしているのか、知ってもらうことが、動物への理解を深めるきっかけになります。
それが、さらに環境や森の保全といったところへもつながり、来園者が考えるきっかけとなり、何かを持ち帰れるようにしたい。それがリニューアルの課題だと思っていました。リニューアル前は、展示が内容的にも老朽化していて、みなさん、素通りしているような状態でしたから」
熱帯雨林について猛勉強

リニューアルプロジェクトは、2021年頃から具体的に動き出す。乃村工藝社のデザイナー、中川百合さんは、最初は自主提案から始まったと振り返る。
「清田さんから声をかけていただいて、リニューアルのコンセプトをビジュアル化しました。実は、千葉市動物公園は子どもの頃に何回も来たことがあるのですが、その頃とまったく変わってない。今となっては、建物も展示も古くなっていて、生きていないんです。
でも、大きな建物に十分なスペースがあって、生きた動物も植物もいる。環境的なポテンシャルとしては、とてもいいなと思いました。動物園側のコンセプトがしっかりとありましたので、それを乃村工藝社のフィルターを介してアウトプットした感じでした」
その提案がもとになり、プロジェクトそのものは、どんどんブラッシュアップされていく。清田さんが感心したのは、空間丸ごとを一体化する発想だったという。
「私たちが扱いたいテーマは、最初からわりとはっきりしていました。それをどんな順番で見てもらい、どんなストーリーを描くのか、みんなで随分と議論しました。
もともと館内には、ガラス越しに動物が見られる展示通路と、展示物のみの部屋とが交互に配置されていて、最初はこの展示室部分だけをリニューアルするつもりだったんです。それが乃村工藝社さんから、動物の展示通路も生かしましょうとご提案いただきました」

中川さんはいう。
「ひとつのお話みたいに、既存建築を生かして隣り合う部屋同士がつながりを持つといいなという想いで、動物を見るエリアもしっかりと演出したい。それで展示室だけではなく、丸ごと提案させていただきました」
とはいえ、もともと配置が決まっているハードを、展示のテーマや役割を入れ替えながらストーリーに組み上げるのは容易ではない。並べていく順序や演出の内容をめぐってプロジェクト関係者の間で意見が食い違い、幾度となく熱い議論が交わされたという。
その度に、みんなから頼りにされたのが沖縄大学教授の盛口満さんと、日本モンキーセンター所長で京都大学名誉教授の湯本貴和さんだった。盛口さんは博物学、湯本さんは熱帯生態学が専門で、ともにリニューアルの監修者を務めた。盛口さんはいう。
「今から見れば、見事に全体がつながっていますけれど、本当にどうなるか見えない時もありました。動物園側には、こんなテーマで、こんな展示を見せたいという想いが強くあって、乃村工藝社側には、見せるとしたらこうしたほうがいい、という展示のプロとしての想いがある。
食い違うこともありましたが、それが噛み合うことでいいものができる。だから、私たち監修者は、展示内容そのものを決めるのではなく、この内容を伝えるにはどうしたらいいのか、伝えるのはこの内容でいいのか、それを考えることが仕事でした」
そして監修者の2人は、熱帯の動植物について素人の知識しかない乃村工藝社チームにとって、知識の源泉であり、指導を仰ぐ先生でもあった。乃村工藝社のプランナー、竹内東子さんは、みんな猛勉強したという。
「そもそも、知識がないと議論にならないんです。自然科学と人文科学とを併せて見せるというコンセプトだけに、勉強すべきテーマが非常に幅広い。本や資料で勉強して、いったん理解したつもりで話していると、想像もしていなかった角度から球が飛んでくる。それを理解して打ち返すためにまた資料を探して読む。その繰り返しでした。
監修の先生方に教えを請う場面も多かったですが、一緒にものづくりをする仲間として、寄り添った目線でアドバイスいただけたのがありがたかったです」

写真=阿部 了
プロフィール
清田義昭さん千葉市動物公園
調整主任
岡野鈴子さん千葉市動物公園
飼育2班
盛口 満さん沖縄大学 人文学部こども文化学科
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