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地域力を高める“人”が主役の施設運営を。PPP課のミッションを体現するプランナーの想い

2005年から公共施設の運営を手がけてきた森 美樹。空間のデザイン・設計を得意とする乃村工藝社において、公民連携の施設運営業務をリードしてきました。“人が主役”の運営スタイルを実現してきた森。18年間に及ぶPPP事業の取り組みに迫ります。

 

公民連携プロジェクトをリード──文化施設の運営と新規案件のコンペに参画

ビジネスプロデュース本部公民連携プロジェクト開発部PPP課で、プランニングディレクターを務めている森。PPPとは、公共(Public)と民間(Private)が連携(Partnership)し、公共サービスの提供を行うスキームのこと。民間の資本やノウハウの活用による効率性や質の向上を目指す仕組みで、公民連携とも呼ばれています。森は2005年からPPP事業に携わり、公共の文化施設の運営を担ってきました。

森  「PPP課の主な業務は、公共の文化施設の運営です。現在、全国17館の施設を運営しており、スタッフは全館あわせると200名以上。本社は12名体制で運営の管理・サポート業務を行っています。


当課のミッションは、施設運営を通じて来館者や地域の方々に歓ばれるサービスを提供すること。同時に、施設の設置者である自治体とパートナーとなって、施設や地域の課題解決に貢献していくことを目指しています」

森の所属するPPP課は2022年、ビジネスプロデュース本部下に入り、新領域の拡大にも挑戦しています。

森  「最近は自治体だけでなく民間企業がお客さまになることもあります。また、資金調達や新サービスの提案など、運営だけでなく施設づくりの前段階からサポートするソリューションも提供し始めました。施設の種類も拡大中です。現在はミュージアムを中心に運営していますが、今後は図書館などさまざまな領域に広げていきたいと思っています」

新しい価値を生み出すべく、コンペではほかの部署と連携する機会も増えているという森。

森  「当社では2021年からソーシャルグッドの活動に力を入れており、社内のソーシャルグッドチームと連携して、インクルーシブな参画体験プログラムなども提案しています。また最近は、施設の設計から運営まで民間企業がトータルにプロデュースするPFI(Private Finance Initiative)案件が増えていて、展示設計チームとの連携もますます重要になってきています」

社内で各部署が連携し、One Teamとして取り組むことができる乃村工藝社だからこそ成功したケースも。

森  「DBO方式(※)で施設改修の設計から運営までを受託した『浜松科学館』は、基本設計から竣工までがわずか1年半というとても大変なプロジェクトでしたが、展示設計と運営計画が平行して進められたので、運営予定者の意見を展示設計にも反映することができました。


今も本社の担当者として運営に携わっていますが、計画から共に携わった施設には愛着がわくものです。浜松科学館では、子どもたちが主体的に、さまざまなことを試しながら考えることのできる場づくりを目指しています。ですから開館後にはさまざまな調整をしなくてはならない時期がありましたが、スタッフのみなさんは展示をうまく使いこなし、自分たちでさらに良くしていこうと日々活動しています」

森がPPP事業で大事にしてきたこと、それは、来館者やスタッフの方々の声でした。

森  「私たちの会社は展示のプロですが、より良い施設にしていくには、来館者や現場で日々工夫を重ねているスタッフの視点がとても大事だと思っています。浜松科学館は来年度に展示をアップデートするための展示更新を控えているのですが、スタッフが主体となって、開館から4年間のお客さまの動きとこれまでの活動をもとに、当初のコンセプトをより良いかたちで実現するための展示の改善や新たな展示の計画を立てています。


お客さまやスタッフの声をきいて、それを次の展示に反映させていく。デザイナーからスタッフへとバトンを受け渡しながら施設を成長させていけるのは、空間活性化を追求してきた乃村工藝社ならではの強みになると思っています」

 

文化施設にマーケティングの視点を取り入れ、PPPの礎に

学生時代は美学芸術学科で学び、国内外の美術館を巡った森。卒業後はハウスメーカーで働くつもりでしたが、ふとしたことで乃村工藝社の存在を知ることに。

森  「乃村工藝社を受けたきっかけは、友人に付き添って行った会社説明会でした。会社案内を見て仕事内容にも興味を持ったのですが、社員のみなさんの熱量が高く、いきいきとした雰囲気がそれ以上に印象的でした。しかも、当時では珍しく営業職で女性の募集があったんです。女性も活躍できる会社だと思ったのを覚えています」

1989年、森は同社初の女性営業職として入社。営業として大手メーカーの展示会などを約5年にわたり担当し、乃村工藝社のシンクタンクである文化環境研究所への異動と同時にプランナー職に転身しました。

森  「文化施設に携わるようになったのは、プランナーになってから。プランナー時代の経験が、いまの仕事につながっていると感じます。当時の主な担当は文化施設の展示プラン二ングでしたが、博物館を設立するときの基本構想や事業計画からお手伝いすることもあったんです。


ミュージアムの機能や社会的役割の検討のほか、リサーチ業務も経験しました。リサーチ業務では、博物館と共同研究をしたり、来館者が展示をどう使っているのかを評価したりして、送り手の想いと来館者のニーズとのギャップの理解に努めました。展示のちょっとしたところを直すだけで来館者の反応が劇的に変わることを知るなど、貴重な体験ができたと思っています」

2002年には、本格的なマーケティング調査にも挑戦。当時、文化施設としては珍しい取り組みだったと言います。

森  「来館者だけでなく来館経験のない人にも意識調査を実施し、送り手と来館者の求めている価値が異なることが多いことを実感しました。たとえば、小さな子ども連れの人とそうでない人とでは、博物館の利用目的や視点が違うという結果に。それまで、どのような人が来館して、それぞれが何を求めているかをはっきりとイメージできていませんでした。

生の声を聞いたり、大規模調査をしたりすることで、来館者のイメージが一変。このときの経験がいまの仕事に大きな影響を与えていると思います」

その翌年、公共施設の指定管理者制度が施行され、同社は2005年秋に開館した長崎歴史文化博物館を皮切りに、佐賀県立宇宙科学館青森県立三沢航空科学館などの指定管理を手がけることに。森は2005年夏にPPP開発センター(当時)へ異動しました。

森  「それまでの業務は施設の開館まででしたが、PPP開発センターでは、開館の準備や運営など、初めてのことばかり。最初のころは館のスタッフや社内メンバーの力を借りながら手探りで進めていきました」

 

主役は“人”──地域のボランティアと協働し、年間来館者数が5年で10万人増加

▲ 多摩六都科学館「しぜんラボ」での花粉の観察。スタッフやボランティアが運営を支えている

PPP事業の中で森にとってとくに印象に残っている仕事があります。それは、2013年にリニューアルした多摩六都科学館の運営に関わったときのことでした。

森  「オープンから約20年が経過した多摩六都科学館の展示リニューアルを担う案件でした。ミッションは、どういう施設にしていきたいかを検討し、それを実現するための空間をつくること。私たちが重視したのは、人と人が対話できる場をつくることでした。主役は展示装置ではなく、“ 人”。スタッフやボランティアが主役となり、地域の人たちが活躍できる舞台になる施設にしようと考えました」

“ 試して、参加して、対話する ” をコンセプトに、リニューアルを果たした同館。施設が地域のハブとなり、人が集まって何かが生まれることを目指した運営が始まりました。結果、5年後には年間来館者数がリニューアル前より約10万人も増加したと言います。

森  「成功要因は“ 人”です。まずは、スタッフの努力。来館者と対話しながら実験や観察ができるラボを、スタッフが構築してくれました。地元の研究機関や大学、企業などと連携してさまざまな展示や体験イベントを行っています。


また、地域のボランティアの力も見逃せません。運営がスタートした当初は60人ほどの組織でしたが、地域で一緒に科学館を盛り上げようという機運が広がり、子どもから大人まで最大150人規模に。スタッフとボランティアの協働する新しい運営スタイルができあがりました。おかげで、訪れるたびに新しい発見があり、新しいことにチャレンジできる施設になったと思っています。来館者や地域の方々との対話を通じて、成長できる科学館が実現しました」

同館をはじめとする運営事業の成功には、同社ならではのマインドが寄与しているという森。

森  「当社の運営施設では、乃村工藝社のOBが責任者になるケースが少なくありません。元営業担当だったり制作担当だったり、文化施設に関わるのは初めてという方もいますが、来館者にどうやって楽しんでもらうか、施設をどうやって良くしていこうかと率先して取り組んでいらっしゃるんです。


そのような姿を見ていると、当社の社員にはものづくりに留まらず、お客さまにより良いサービスを提供したい、新しい価値を生み出したいというマインドが根づいていると強く思います。同時に、施設を一緒に運営するスタッフや地域の人たちが、このマインドに共感してくれているからこそ、施設が成長できているとも感じています」

 

従来の枠組みにとらわれない、新しい価値をつくり出す存在でありたい

▲ 施設運営事業に携わる本社メンバー(一部)。少数精鋭で全国17館の運営をバックアップしている

森がPPP事業に携わって2023年で18年。これまでを振り返り、新しい価値が求められる時代になったと語気を強めます。

森  「近年のPPP事業ではPFI業務が増えていて、新しい価値を生み出せる施設が求められていると感じます。当社としては、設計・施工・運営の実績を活かしつつ、これまでにない視点も幅広く採り入れていく必要があります。これからは、社内の部門を超えた協力体制の強化はもちろん、同じ価値を共有できるパートナー企業にもお声がけしながら、新しい価値を開拓していけたらと思っているところです」

そして自身も新しい価値を生み出せる存在でありたいと話す森。次のように続けます。

森  「これからの文化施設は、従来の枠組みにとらわれないかたちになっていくと予想されますが、そこで新しい価値をつくるのが、ほかの誰でもなく私たちでありたいんです。チャンスが来たら、いろいろな人とチームを組んで飛び込んでいけるように準備しておきたいと思っています。これからもさまざまな地域で、いままでにないものをつくるお手伝いがしていきたいですね」

「我々は人間尊重に立脚し、新しい価値の創造によって、豊かな人間環境づくりに貢献する」という経営理念を掲げ、空間の可能性を追求してきた乃村工藝社。PPP事業を通じ、ソーシャルグッドにもつながる「人」「地域」「文化」「環境」をつなぐ取り組みを18年も前から行ってきました。今後、人と空間の関わり方はどう変わっていくのか。その鍵を握るのは、森たちです。

※ 記載内容は2023年12月時点のものです

森 美樹(もり みき)
 

文化施設づくりにおける展示計画や事業計画を主に担当。2005年から公共施設の運営を担う部門に異動し、主にミュージアムの運営計画に携わる。2022年にはビジネスプロデュース本部公民連携プロジェクト開発部に異動し、携わる領域を拡げている。

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