Project Introduction
プロジェクト紹介

乃村工藝社でのプロジェクトの流れ

お客さま(クライアント)の​空間に関するあらゆる課題を​解決することが、​私たちの仕事です。​

生活者発想を基点とする集客力の高い環境の創造により、お客さま(クライアント)の事業繁栄とそこに集うお客さま(エンドユーザー)の心の豊かさを創造し、お客さまに歓びと感動を提供する。 ​
私たちは、その空間に​訪れることによってはじめて感じる​ワクワクやドキドキといった「感動体験」を演出し​空間の中でヒトとヒト、ヒトとモノ​、ヒトとコトが直接出会うコミュニケーションを創出します。​
商業施設、ホテル、博物館​、ショールーム、展示会、イベントなど​人が交わる全ての“場”の魅力を​最大限に高める「空間プロデュース企業」です。​

乃村工藝社でのプロジェクトの流れ

プロジェクトとメンバーの関わり

営業職プランニング職デザイナー職ディレクター職
① 調査・企画・コンサルティング
① 調査・企
画・コンサル
ティング

お客さまの要望や課題に関する各種調査・分析、コンセプトや事業・運営プランなどを策定

②デザイン・設計
②デザイン・
設計

コンセプトや企画に基づくデザイン・設計

③ 制作・施工
③ 制作・施工

デザイン・設計に基づく展示物の制作、施設内外装の施工

④ 運営・管理
④ 運営・管理

事業・運営プランに基づく施設やイベントの運営・集客支援、活性化およびメンテナンス

Culture社風を知る

利益と公益を両立した公民連携事業を──持続可能な事業モデルの実現に向けて

利益と公益を両立した公民連携事業を──持続可能な事業モデルの実現に向けて

ビジネスプロデュース本部で公民連携プロジェクトの開発に携わる小笠原 明徳。企画やデザイン、設計、制作にとどまらず事業運営までを担い、前例のないビジネススキームの構築にも果敢に取り組んできました。これまで手がけてきた主なプロジェクトを振り返りながら、公民連携事業にかける想いを語ります。 PFI事業に初の代表企業として参画。公民連携でめざす官民一体となったまちづくり既存のビジネス領域の枠を超え、持続的な事業運営に向けた新たなビジネススキームづくりを手がけるビジネスプロデュース本部。中でも公民連携プロジェクト開発部では、公共と民間とが連携してプロジェクトを組成し、ビジネス化する取り組みを進めています。小笠原が所属するのはPFI課。民間の資金や技術を活用した公共事業を主に担当しています。小笠原 「PFIはプライベート・ファイナンス・イニシアティブの略で、民間の資金とノウハウを活用して、公共施設等の設計や建設整備、維持管理、運営を行う手法です。目下進めているのが、『(仮称)静岡市海洋・地球総合ミュージアム整備運営事業』です。これは、静岡市の清水港の一角に、水族館と博物館の機能を併せ持つ“海洋・地球に関する総合ミュージアム”を新設しようというもの。当社としては今回初めて、PFI事業の代表企業として参画しています。われわれが担うのは、展示制作および運営業務です。公共施設の運営業務には2001年ごろから取り組んできましたが、入館料によって運営費用のほとんどを賄おうとするのは今回がはじめて。民間側が運営の収入リスクを担う形になっているのが、今回のPFI事業の大きな特徴です」PFI事業を実施するに当たっては、特別目的会社(SPC)が設立されるのが一般的です。今回、プロジェクトに参加する企業等と共に、乃村工藝社が代表企業となって「株式会社静岡海洋文化ネットワーク」を立ち上げ、小笠原は同社の取締役に就任しています。小笠原 「PFI事業では、特別目的会社(SPC)が自ら資金調達を行い、市からのサービス対価および入館料収入を原資として借入金を返済したり、SPCの構成企業である各事業会社に業務委託を出したりする仕組みになっています。乃村工藝社は代表企業であり、株主であると同時に、委託を受ける受託業者でもあります」事業コンセプトは、“駿河湾とつながるみんなのキャンパス”。大学や国立研究機関などと共に、地球環境と海洋、人のつながりを探究する楽しさが伝えられるような施設をめざしています。小笠原 「まるで大学のキャンパスのように、学びや学術を軸として、そこに集まる人たちが中心となって街に賑わいが広がっていく。そういうコンセプトで事業活動を行う予定です。SPCに協力いただいている東海大学や、JAMSTEC(海洋研究開発機構)など海洋に関わるさまざまな方々と連携しながら、調査研究・交流・創造・発信といった事業を進め、官民一体となって海洋文化拠点を構築していけたらと思っています」同プロジェクトが見据えるのは施設単体の成功だけではありません。最終的なゴールとなるのは、“国際海洋文化都市・清水”の実現です。小笠原 「当プロジェクトがベースにしているのは、施設が建てられる埠頭地区の再開発構想。この施設は、まちに賑わいを取り戻していくためのリーディングプロジェクトとして位置づけられています。拠点施設となって新しいまちづくりを盛り上げていくことが最大のミッションです」 公共施設の運営委託に見いだした新たなビジネス。スキームの考案がマイルストーンに▲東京都水の科学館|4面映像に囲まれる大迫力の「みずのたびシアター」父親がミュージアムの研究をしていたことから、博物館のような社会教育施設に興味を持つようになったという小笠原。大学で放送技術を学んだ後、より幅広い表現に関わりたいとの想いで選んだ就職先が乃村工藝社でした。入社後に配属されたのは、希望していた文化環境事業部。企業ミュージアムなどの担当を経て携わったのが、東京都水道局の『水の科学館』でした。小笠原「施設を全面リニューアルするプロジェクトにリーダーとして参加し、プロジェクトマネジメントを担当しました。当初は、調査、企画、デザイン、設計、施工といった通常の展示業務だけを請け負っていたのですが、その後、施設の管理・運営を包括的に委託する包括管理業務委託というスキームについて、提案する機会を得ました。当時はそのようなスキームで運営業務を受託した前例は皆無。委託業務の形態でありながら、事業者のインセンティブを確保し、いかに創意工夫を発揮するか、が課題となりました。何度もシミュレーションを繰り返すなど苦労しましたが、運営業務のなかで実施するイベントや広報施策などを企画し、施設の集客をどのように拡⼤していくかを提案した結果、受託することができました」小笠原にとって、この出来事はその後のプロジェクトを推進していく上での大きな糧となります。小笠原 「たとえば、“水の日”にちなんだイベントを企画してニュースリリースを出し、記者に来てもらうなど、限られた予算の中でも露出効果が得られることを学び、実際に期待以上の広報効果につなげることができました。それまで当社があまり注力してこなかった集客のための一連のプロセスを経験できたことは、とても大きかったと思っています」 業界初となる文教施設分野でのDBO事業をリード。困難なプロジェクトで得た手ごたえ▲浜松科学館「みらいーら」|サイエンスショーが行われている、みらい―らコアその後、小笠原はチーフに就任。大規模な文化施設のプロジェクトマネジメントを担当するようになりますが、中でもチャレンジングな取り組みだったのが、浜松科学館「みらいーら」です小笠原 「延床面積が6,000平方メートル以上もある大きな施設の展示改修の設計・施工・運営を一手に担い、基本設計から竣工までを約1年半という短期間で行うものでした。自治体が事業主体となるこうした施設の場合、長いときで10年、短くても3年はかかるのが普通です。そのような中、指定管理者として管理運営業務も請け負うため、運営計画と設計作業を同時に進める必要がありました」当時、設計・施工・運営を民間事業者が包括的に一括受注する、いわゆるDBO方式(※)によるプロポーザルを文教施設の分野で獲得したのは、業界初。社内にもノウハウがない中、プロジェクトを率いる小笠原はここでも試行錯誤を迫られます。小笠原 「博物館をつくる際は、行政や運営を担う学芸員がまず施設の方向性を決め、それに基づいてわれわれが展示空間について提案するという流れが一般的です。ところが、時間がなく運営計画と展示制作が同時進行だったため、社内でも運営チームと展示制作チームが互いに主導権を譲り合い、プロジェクトが停滞する期間が長く続いていたんです。そこで、プロデューサーのような立場から統括すべきと判断し、当時の部長の力を借りて全体的なコンセプトを設定。それをソフト(運営)とハード(展示制作)それぞれのチームに落とし込み、プロジェクトをまとめていきました。いまとなっては当たり前の手法ですが、当時の乃村工藝社には前例がほとんどなく、手探りの状態。幅広い業務領域を並行して検討しながら整合性を図る必要がありました」約17カ月という短い期間での設計・施工・運営を成功に導いた小笠原。反省点が残るとしながらも、同プロジェクトを通じて大きな手ごたえを感じたと言います。小笠原 「施設を運営する“人”の魅力こそが来館者を惹きつけるし、リピーター獲得につながるというのが私の考え。科学館でいえば、学芸員の方によるサイエンスショーこそが最大の目玉だと思っていて、施設の一隅につくられることが多いショースペースを浜松科学館ではど真ん中に配置し、どこからでもステージが見られるように設計しました。こうしたプランニングの発想は、運営予定者が設計段階から参画したからこそ生まれたもの。DBO方式ならではの展示空間が実現できたと思っています」※ DBO 方式(Design, Build, Operate):資金調達を公共が行い、設計・施工・維持管理・運営を民間事業者に包括的に一括発注するもので、公民連携の一つの方式 公民双方にとって有益なビジネススキームの確立を。教育や子育ての分野にも意欲公民連携の最前線で運営リスクを進んで取る道を選択し、先陣を切って事業の幅を広げてきた小笠原。これからもそのスタンスに変わりはありません。小笠原 「商業やイベントといった分野の請負事業は寡占状態で、価格競争に陥っているのが現状です。他企業と同様、当社もまた、SDGsなど従来のビジネスでは避けられてきた公共の領域に、積極的に参入していく必要があると思っています。とはいえ、人口減少が社会問題となる中、民間事業者だけが利益を得るようなビジネスには持続性がありません。公民双方がリスクやリターンをシェアしていけるようなマネタイズのスキームを考え、サービス品質を向上させていきたいですね。とくに、公共事業では前例が重視されます。大きな利益が期待できる分野ではないだけに、リスクをうまくコントロールできるよう、まずは経験値を積んでいくことがいまの目標。そうやって成果を積み上げていくことで、当社が代替のきかない存在になっていけると考えています」これまで公共文化施設の領域で存在感を発揮してきた小笠原。そこで培った経験や知見を武器に、今後は教育や子育ての分野にも手を広げて行きたいと語ります。小笠原 「共働き世帯が増加したことで、子どもがひとりで過ごす時間がますます長くなってきました。経済を優先することで子どもたちに皺寄せがいかないよう、施設の空間づくりや運営の面から、教育現場の改革にも関わっていきたいと思っています。また、両親が働きに出ることで、地域コミュニティの希薄化が進んでいます。休日にお父さんお母さんが情報交換できるような仕組みを、公園事業に採り入れる試みを始めているところですが、そうした社会課題を解決するようなソーシャルグッドな取り組みにも、率先して取り組んでいきたいですね」会社の利益を、お客様、そして社会の利益に——都市空間開発において官民が協働する時代を迎える中、より良い空間とまちづくりをめざしてきた小笠原と乃村工藝社にとって、公民連携事業の新たなページがいま開かれようとしています。  

人々のくらしを豊かにする仕事を。既成概念を排した空間作りを目指すデザイナーの哲学

人々のくらしを豊かにする仕事を。既成概念を排した空間作りを目指すデザイナーの哲学

クリエイティブチーム“no.10”の部長を務める青野 恵太。no.10のほぼすべてのプロジェクトのディレクションを手がけ、既成概念にとらわれない空間デザインを追求してきました。近年は、ソーシャルグッドや、空間の未来を創造・研究するプロジェクトにも取り組む青野。これまでの足跡、信念を語ります。 no.10のチーフデザイナーとしてほぼすべてのプロジェクトのディレクションを担当2020年にクリエイティブチーム“no.10”を立ち上げ、その部長を務める青野。インテリアを中心に国内外のプロジェクトを数多く手がけています。青野 「no.10は空間デザインをメインとしたクリエイティブチームです。メンバーは30代を中心に、外国人を含む約25人のメンバーが在籍。商業的な物件を中心に、空間にまつわるあらゆるものを担当しています。2023年3月現在進行中のプロジェクトは海外と国内がそれぞれ半分程度で、グローバルに活動をしている点が当チームの特徴的なところです。建築から空間を創出できるところがわれわれの強み。近年は建物のデザインに始まり、そのインテリアであったり、そこで実施されるイベントであったりをデザインするケースも増えてきています」部長職としての役割を果たしながら、チーフデザイナーとして同チームのほぼすべてのプロジェクトのディレクションを手掛ける青野。青野 「たとえば、海外でも展開しているコーヒーブランド『% Arabica』のプロジェクトでは、常に20件くらいが同時に動いています。各デザイナーがそれぞれの案件を担当していますが、戦略会議に参加してデザインの方向性や進捗状況を確認するなど、クオリティを管理することがチーフデザイナーでありディレクターである私の役割です」社会に幸せなインパクトをもたらし、社会的な課題の解決に貢献しようという“ソーシャルグッド”の取り組みを、グループ全社で推進している乃村工藝社。no.10自体がそれを体現するような存在でありたいと青野は言います。青野 「当チームが大切にしているのは、“モノゴトのはじまりからおわりまでを考え、その重心がどこにあるのかを模索する”こと。何かを生み出して終わりでなく、それを活かしていくことも大事なことだと考えています。たとえば、船が右に傾けば、バランスを保つためには左の方へ移動しなくてはなりません。そうした行動を、デザインを通して真っ先にやっていきたいというのがわれわれの基本的な行動指針です。一見すると、うまくバランスと取るという行為だけに見えますが、実は真っ先に違う行動を取るということなんです。コアにあるのは将来的な社会の均衡を見ていきたいという思想。それをデザインに置き換えていくことが、社会貢献にもつながると思っています」no.10のプロジェクトの中でも、とくに“ソーシャルグッド”の取り組みとして位置づけられるもののひとつが、マグロ漁船『第一昭福丸』の内外装デザイン(2020)です。青野 「船内の環境改善が食の安全につながるのではないかという発想に基づいて、漁船のデザインを担当しました。重労働を伴う洋上生活を、約10カ月にわたって強いられるマグロ漁船の乗組員の心身ストレスは大きく、若手の離職率は5割を超えるとも言われます。彼らが少しでも快適に過ごせるようにと、スマートフォンやテレビ画面など、陸上での生活を想起させるような直線を多く内装に取り入れました」また、カジュアルファッションブランドであるユニクロの旗艦店、UNIQLO TOKYOの期間限定のインスタレーション展示「LifeWear SPRING」(2021)を担当。マテリアルとしてワインのコルク栓を原料とした再生コルクを使用するなど、自然との共生を考え、地球に負荷をかけないブランドの理念を空間作りに落とし込んでいます。 建築から空間を創出する取り組みを目指し乃村工藝社へ。“onndo”での活動が転機▲内外装を手がけた、マグロ漁船「第一昭福丸」芸術系の大学で建築を専攻する中で、建築界の常識に違和感を覚えていたという青野。既成概念を覆す環境を求め、乃村工藝社に入社しました。青野 「学生時代、建築と内装が連動してこそ良い空間ができると考えていました。ところが、建築家が箱を作り、インテリアの専門家が内装を担当するという具合に、当時は建築と内装とが明確に分断されていたんです。そこで、インテリア側から変えていきたいという想いから、内部をメインに建築から空間を創出する取り組みができそうな環境を探していて、乃村工藝社と出会いました」1999年の入社以来、商業施設を中心にさまざまなプロジェクトを担当し、成功へと導いてきた青野。2013年、15年目という当時では類を見ない速さで自身のチーム、“青野ルーム”を発足させます。その翌年には、“nendo”の佐藤 オオキ氏と個別プロジェクトにおいて協業を開始。2016年にはnendoと乃村工藝社との業務提携によって、空間デザインオフィス“onndo”が発足しました。onndoでの活動が大きな転機になったと振り返ります。青野 「青野ルームとして佐藤さんと協業していたとき、より密接な形で仕事ができないかということになり、新たにデザインオフィスを立ち上げました。われわれは空間に関するデザイン全般を担当。佐藤さんと一緒にやることで、内装だけではなくグラフィックやプロダクトから建築までという、点ではなく線や面としてデザインすることができました。世界的なクリエイターである佐藤さんと対等な立場からプロジェクトを進めたことは、その後に影響を与えています。onndoでの活動は、仕事の領域として国内と海外の境界がなくなるきっかけにもなりました。クリエイティブの力を持ってすれば、国境に関係なく活動できることを再認識し、視野がさらに大きく広がったと思います」どのプロジェクトにもドラマがあり、おしなべて印象的だと話す青野。中でも記憶に残っているというのが、福岡の外資系ホテル『ヒルトン福岡シーホーク』の巨大なアトリウムに、ラウンジやレストラン・チャペルをつくり上げたもの。青野「建築を担当したのは、シーザー・ペリという著名な建築家。その中にある、飲食ゾーンやチャペルなどから成る巨大なアトリウム空間を担当しました。建物の中に建物をつくるような、まさに学生時代から構想していた、建築と内装の境界を排したようなプロジェクトといえるかもしれません。海外の方と共に案件を進めていくきっかけにもなったという点でも、意義深かったと思います」そんな青野には、今目標にしている存在がいると言います。青野「ロンドンを拠点に活躍するトーマス・ヘザーウィックというデザイナーのようなクリエイターになれればと。no.10が、あらゆる3次元デザインをこなせるチームになれたらと思っています」 デザイン以外のプロジェクトにも参加。乃村工藝社の持続的成長と社会貢献をめざしてno.10としての活動以外にも、さまざまなプロジェクトに参加している青野。そのひとつが、2022年に始まった未来創造研究所の活動です。青野 「乃村工藝社の企業価値創出と持続的成長に向けた空間研究機能の構築・強化を目指した取り組みです。空間における未来の兆しを創造・研究することを目的に活動しています。現在は6名のメンバーが参加しています」また、乃村工藝社のソーシャルグッドな取り組みの一環として、空間と行動・心理を科学的に実証するプロジェクトのチームリーダーも務めている青野。青野 「乃村工藝社では、過去130年にわたり経営理念のひとつである『歓びと感動』を提供してきました。これまで当社では、実績以外の面で、歓びと感動のことを語ることがあまりできていませんでした。そこでたとえば、過去のプロジェクトの竣工写真から脳波のデータを取得し、感動の要素を抽出していくという具合にいろいろな研究をしています。これを“歓びと感動学”という名のもと、科学的に実証したり、心理的な背景を紐解いて社会に対して説明したりすることを通じて、新たな歓びと感動の提供につなげていくことをめざしています」乃村工藝社の歴史と同じだけ、つまりこの先130年以上にわたりこの取り組みを続けてほしいと話す青野。その理由についてこう続けます。青野 「歓びと感動を分析し説明可能な状態にするためには、継続的な実証が欠かせません。人間の五感による知覚のうち、視覚が9割近くを占めると言われていますが、たとえば、空間の中で音が人の心理にどう作用するのかという具合に、いろんな感覚が複合的に歓びや感動を沸き立たせていく過程を明らかにすることをめざしています」 何ものにもとらわれないデザイン、人の感情に寄り添った空間作りをめざして2022年で入社24年目を迎える青野。デザイナーとして大切にしていることがあります。青野 「一貫して意識してきたのは、何ものにもとらわれないこと。たとえば、国内/海外、建築/内装をはじめ、人間が作った観念上のラインが世の中にはたくさんあります。そういった既成概念から解放されたデザインをしたいという想いは、ずっと大事にしてきたと思います」そう話す青野が、no.10としての取り組みだけでなく、未来創造研究所やソーシャルグッドの活動を通じてめざすのは、“空間の力によって人々を豊かにする”こと。次のように続けます。青野 「音楽を聴くと笑顔になったり涙を流したりと、さまざまな感情を隆起させますが、空間にも同じように大きな力があるんです。それは決して音楽のようにわかりやすいものではありませんが、空間を通じてたくさんの人に歓びや感動をお伝えできたらと思っています。たとえば、末期のがん患者の方がいらっしゃるとします。余命宣告を受け、最後のときを過ごす人の心を安らかにする空間とはどのようなものなのか。そういったものを考えるのが僕らデザイナーの仕事。人の感情に寄り添った空間作りを実現していきたいと思っています」▶クリエイティブチーム no.10 オフィシャルサイト:https://www.no-10.jp/▶クリエイティブチーム no.10 公式Instagramアカウント:https://www.instagram.com/no.10_official/   

お客さまとクリエイターをつなげる橋渡し役──個の魅力を最大限に活かせるプロデュースを目指して

お客さまとクリエイターをつなげる橋渡し役──個の魅力を最大限に活かせるプロデュースを目指して

新設されたビジネスプロデュース本部で新領域のプロジェクト開発を手掛ける二ノ宮 由香子。さまざまな業界の新しい空間づくりに意欲的なクライアントをサポートしています。彼女の仕事におけるこだわり、お客さまとクリエイターをつなげる“橋渡し役”として目指す姿に迫ります。 自身の感性や意見も、乃村工藝社の商品。代替できない存在であるためにビジネスプロデュース本部に期待される役割は、中長期を見据えた活動を通じて、乃村工藝社グループの持続的な事業繁栄を促していくこと。中でも、二ノ宮が所属する新領域プロジェクト開発部は、クライアントとともに新規事業を創出したり、クライアントが新しい領域に進出する際の事業開発を支援したりするチーム。クライアントは、金融やメーカー、医療機関など多岐にわたります。二ノ宮 「たとえば、飲料業界の案件では、ある企業が運営する施設のプロデュースを担当しました。施設のオープンから3年経った2023年1月現在は、見えてきたオペレーションやブランド戦略の課題を洗い出して、商品の売り方や接客の仕方を含めたリニューアル企画にも携わるなど長期的に支援しています。また、ある病院からは、『病院をもっとオープンな、“健康テーマパーク”と呼べるような地域の交流拠点にしたい』とのご依頼をいただきました。商業施設やテーマパーク、文化施設などのプロデュースで培った乃村工藝社のノウハウを活かし、企画からサポートしています」プロジェクトごとにチームは編成されますが、二ノ宮はプロジェクトリーダーとして、プロジェクトに最適なプランナーやデザイナーをアサインしチームビルディングに努めながら、事業や企画を提案し業務を軌道に乗せて確立させる川上部分のプロジェクトマネジメントを担っています。二ノ宮 「お客さまと関係性を築いたり、新しい仕事のチャンスを得たりするためにはどうすべきかを考えたりすることも役割のひとつです。また、デザイナーやプランナーをどう売り出すかも常に考えていて、『あなたにはこのプロジェクトでこんな役まわりを担ってもらいたい。だから、こうしたパフォーマンスを心がけてほしい』といったリクエストを伝えることもあります」クライアントとチームメンバーのいわば橋渡し役を務める二ノ宮。とくにクライアントに対しては、発注者/受注者の関係ではなく、人対人のコミュニケーションを心がけていると言います。二ノ宮 「クライアントから明確な要望が寄せられるケースもあれば、当社へ企画・設計を依頼する前段階に必要な社内調整や対応方法について相談されるケース、ゼロからともに新規事業を開発するケースなどさまざまです。すでに与件がある場合でも、イエスマンになるのではなく、お客さまが認識していない課題を拾い上げたり、世の中のニーズやお客さま、エンドユーザーの潜在意識を探ったりすることを心がけています」世の中の潮流を捉えるべく、常にアンテナを高く張って情報収集に努めていると話す二ノ宮。もうひとつ大事にしていることがあります。二ノ宮 「自分はどうしたいのか、どんな社会であってほしいのかといつも自問し、自分の意見をクライアントにも伝えるようにしています。そうしないと、単なる営業担当としてしか見なされず、ある程度の信頼関係しか築けないからです。私自身も乃村工藝社の商品だと思っているので、私の感性や想いを伝えることも仕事のうち。そうすることでお客さまと“真の対話”ができるようになると考えています」 パブリックな仕事も手がけられると知り、乃村工藝社への入社を決意学生時代は、イタリアの大学で建築やデザインを学んだ二ノ宮。帰国後、照明設計会社、展示キュレーション会社、外資系インテリアデザイン会社を経て2014年に乃村工藝社に入社しました。入社のきっかけは、3社目の取引先から「二ノ宮さんは乃村工藝社が合うと思うよ」と勧められたことでした。ただ最初は、自分がやりたいことが乃村工藝社でできるのか、不安があったと振り返ります。二ノ宮 「もともと私は、まちづくりなどのパブリックな仕事に携わりたくて、照明設計会社に勤めていたときも都市景観や公園等外構の照明計画を担当していました。たくさんの方に影響を与えられるような仕事に魅力を感じていたんです」乃村工藝社は商業空間の内装デザインに特化した会社だと捉えていた二ノ宮は、自分に本当にふさわしい職場なのかどうかわからなかったと言います。やがて、乃村工藝社が博物館や美術館、学校、病院などパブリックな施設の内装やまちづくりに関わるプロジェクトも多く手がけていることを知った二ノ宮。自分のやりたいことが実現できる環境が乃村工藝社にあると確信し、入社を決めます。二ノ宮 「最初に配属されたのは博覧会準備室でした。ミラノに長期で赴任して、ミラノ万博日本館のプロジェクトに参加。帰国後はさまざまな展覧会のプロデュースを担うチームで、日本企業が海外展示会出展に出展する際の企画やサポート業務に携わりました」海外の施工会社とやりとりしながら準備を行い、展示会があるたびに海外の展示会場に出向く日々を過ごす中で、今でも記憶に残る出来事がありました。二ノ宮 「日本の大手航空会社が、海外での認知度向上を目的にアメリカでの展示会に参加したときのことです。ブースのデザインやディスプレイはもちろん、運営や接客も経験したのですが、現地の子どもから大人までたくさんの人が来場し、日本や日本語に興味を持ってくれたんです。普段なかなか知る機会のないエンドユーザーの反応をじかに感じられたことが嬉しかったと同時に、企業のプロモーションにとどまらない、日本文化の代弁者のような役割を果たせたような気持ちになりました」 ヘルスケア・ウェルネス領域のプロジェクトに参画。健康維持をメンタル面から支援▲チームメンバーと社内ミーティング現在、二ノ宮はヘルスケアやウェルネス領域のプロジェクトに多く携わっています。二ノ宮 「これからの日本において重要かつ、市場として伸びしろもあるヘルスケア領域の案件に、乃村工藝社としてもっと携わっていけたらという話を2018年ころから同僚としていたんです。上司やプランナーとも雑談の延長線でそうした話を重ねていく中で、定期的なミーティングに発展し、『この領域を知るためには、こういったステークホルダーと接点を持つ必要があるのではないか』と具体的な話になり、次第にどう事業化していくかを考えるようになっていきました」こうして、デザイン部、プランニング部、営業部などから集まった20名ほどのメンバーで構成されるチームが発足しました。ヘルスケアやウェルネス領域のプロデュースというと、フィットネスジムやランニングステーションなど、身体を動かすための空間づくりという印象を受けるかもしれません。しかし、二ノ宮は、フィジカル以外の角度から、乃村工藝社としてヘルスケアやウェルネス領域に貢献できる可能性を模索しています。二ノ宮 「健康のためには、フィジカルと同様にメンタルへの配慮も欠かせません。とくに、知的好奇心の充足度合いが、心の健康に大きな影響を及ぼすことが科学的にも立証されています。学びに意欲的で、知的好奇心が旺盛な人ほど健康に長生きできることを知って以来、知識や教養を育むための企画や空間づくりに注力していきたいと思うようになりました」こうした発想は、現在も携わっているシニアレジデンスの開発案件の中で生まれたものでした。二ノ宮 「入居者が健康になれる家づくりを目指すクライアントから、カルチャースクールやアクティビティができる場所をレジデンス内につくりたいとの要望があったんです。入居される方々について調べたり考えたりする中で、ただ体操ができる場所を用意するのではなく、どのような活動や習いごとを通じて知的創造性を育むかが課題だと感じるようになっていきました」ヘルスケア領域に関する引き合いは増えており、現在も“知の開発”の実現に向けて奔走中だという二ノ宮。二ノ宮 「商業施設が入ったあるオフィスビルの所有者様からは、『健康をテーマにしたビルにしたい』との依頼を受けました。フィットネスジムなどがまっさきに思い浮かぶところですが、あえて博物館やアートギャラリーといった文化施設の誘致を提案したんです。アートとの出会いがきっかけとなってそのビルで働く方の人生の幅が広がり、ひいてはそれが健康につながるという考えにクライアントも共感してくださって、目下、アートギャラリーの誘致を検討しているところです」ヘルスケアやウェルネス領域の案件に携わるようになってから、二ノ宮は自身の健康にも気を配るようになったと言います。二ノ宮 「ヘルスケア領域を担当するからには自分も健康にならなければと思い、2020年ころから食事と運動と睡眠の管理をしっかり行うなど、普段の生活でも健康を追求しているんです。日々の生活の中で感じたり学んだりしたことがすべて仕事に反映され、仕事で学んだことがプライベートの生き方に反映されるという具合に、良い循環が生まれています」 プランナーやデザイナーが個の力を最大限に発揮できる環境づくりを目指して幅広い案件で空間のプロデュースを担当してきた二ノ宮。乃村工藝社で今最も実現したいことは、“プランナーやデザイナーの魅力を最大限に発揮すること”だと語ります。二ノ宮 「クライアントのニーズにマッチしたプランナーやデザイナーを適材適所にアサインできるような、橋渡し役ができるプロデューサーになりたいんです。クライアントとクリエイター、さらに自分も加わって一緒にクリエイションする気概で、強固な関係性とチームビルドを築けるよう努めています。最適なマッチングを実現させることで、クリエイターの仕事に対する理解向上にもつながると思っています」そして今、二ノ宮の視線の先にあるのは、世界。乃村工藝社の名が、広く人の知るところとなる未来を思い描いています。二ノ宮 「アジア経済が発展する中で、世界を舞台に乃村工藝社が貢献できることはたくさんあるはずですが、まだまだやり切れていないと思っています。乃村工藝社のクリエイターは十人十色。思考回路や発想がユニークでクリエイティビティが高く、『こうしたい』という明確な意志を持っている人が多いんです。私を惹きつけてやまないそんな彼ら、彼女らが、日本や世界でますます活躍できるように、魅力を発信していきたいですね」  

BIMルームのリーダーが注力する無限大の可能性。DX化の取り組みと、その活動がつくる未来

BIMルームのリーダーが注力する無限大の可能性。DX化の取り組みと、その活動がつくる未来

設計から施工、維持管理にいたる建築ライフサイクル全体で情報を活用できるBIM。業務プロセスの改革やSDGsへの貢献などさまざまな可能性を秘めたBIMの活用を推進するBIMルームのルームチーフを務めるのが妙中 将隆です。立ち上げ当初から携わる彼が、2023年3月現在までのキャリアの変遷とBIMの可能性について語ります。 BIMを活用した全社的な生産性向上がミッション。社内活動にも積極的に参画▲「東京ミズマチ®」のBIMデータ。ウォークスルーで内部まで確認できるBIMとは「Building Information Modeling」の略称で、コンピュータ上に作成した3次元データを使って設計や施工などを推進していく仕組みのこと。BIMルームでは、BIMを活用して業務を効率化し全社的な生産性を向上させたり、組織として新たな魅力を打ち出したりする役目を担っています。妙中 「当ルームでは、社内におけるBIMの使用方法を統一化するためのガイドライン作成やオリジナルのシステムの開発による業務効率化、専用のアプリケーションに関する社内教育・研修などを行っています。社内教育に関しては、BIMの概要や基本的な操作方法をレクチャーするほか、BIMを使いたいプロジェクトがある場合は実践に直結するようなかたちでのサポートも行っています」BIMルームに所属するメンバーは11名。妙中はチームを統括するルームチーフを務めています。妙中 「BIMルームのメンバーはデザイン部門や設計部門、制作管理部門など、さまざまな部門から集まってきていて、配属されてからBIMについて学び、スキルを身につけている人がほとんどです。BIMはデザインや設計、制作管理のためだけにあるのではなく、全社的な仕組みにつなげて生産性を上げていくためのもの。多様なバックグラウンドを持った人が集まっていることは理にかなっていると思っています」妙中はソーシャルグッド戦略協議会R&Dチームにも参画。“サステナブルな空間の指標化と商品化”と“空間と行動・心理の科学的実証”のふたつのテーマに取り組んでおり、BIMルームとしてもそこへ積極的に参画しています。妙中 「前者のテーマでは、CO2排出量の可視化に力を入れています。BIMを使って設計すると、建築物に使用する材料の量を自動的に算出することが可能です。そのデータを使って、CO2排出量をグラフ化する仕組みづくりをしています。さらに、そのBIMデータを活用しプレカット工法と呼ばれる新しい工法を推進する取り組みも進めています。これはBIMから抽出した3次元データを活用して精密なプレカット施工の実施をめざすもの。建材の切り出し方を事前に計画し工場でカットすることで、現場での工数を削減するだけでなく、廃材を減らしてCO2排出量を削減する効果も期待できます。後者のテーマでは、“歓びと感動学”というプロジェクトを進めています。これは、人がよろこんだり感動したりする空間を科学的に検証し、それを空間づくりに活かそうという試み。中でも私は、VR空間での被験者の脳波が空間の内容によってどう変化するのか、研究を進めています」社内活動を含め、さまざまなプロジェクトに精力的に携わる妙中。仕事をする上で大切にしていることがあります。妙中 「BIMで業務を効率化することで、いかに社員本来のチカラを発揮できるようにするか、そして人々を感動させられる場づくりにつなげていけるかが大事だと思っています。自分自身がBIMで率先して実績を積み上げ、その有用性を広く周知してBIMの活用を拡げることで、業務の効率化を進め、全社的な生産性を向上させていきたいですね」 建物に縛られない1点ものの空間づくりに惹かれ、ディスプレイ業界へ妙中が建築を志すようになったのは中学生のとき。「手に職を」と父親から勧めがあったことがきっかけでした。妙中 「小さいころから自分の手でものをつくったり、絵を描いたりするのが好きだったんです。ものづくりの仕事に携わりたいと漠然と考えていたところ、父から『ものをつくるのであれば建築がいいんじゃないか』と言われて。そんな父の言葉をきっかけに建築の世界を知り、関心を持つようになりました」その後、大学・大学院で建築を専攻した妙中。とくに大学院で建築意匠設計の設計課題に取り組んだことが、入社後の仕事にも活きていると言います。妙中 「大学院では、設計課題が3カ月に1回と、比較的短いスパンで出されていました。集合住宅、市民会館、コンサートホールといったさまざまな建築の設計課題が出されたのですが、それらを設計するためには先行事例を見て回ることになります。さらに、学校の設計をする際は“教育”について、病院を設計する場合は“医療”についてと、各建築と紐づく業界に関することをイチから勉強する必要もありました。これらを短期間で調べるのは大変でしたが、わからないことがあれば実際に足を運んだり、勉強したりするクセができたことは今も役立っています」卒業後、乃村工藝社に入社する道を選んだ妙中。その背景には、同級生との再会がありました。妙中 「ディスプレイ業界の存在を知ったのは、大学院1年生のとき。ディスプレイ会社で働いている高校時代の同級生と久しぶりに会ったとき、建物に縛られない一点ものの空間を自由な発想でつくっていると聞かされ、とても惹かれたのを覚えています。でも、私が通っていた大学院では、卒業後は組織設計事務所やゼネコンに就職するのが一般的。その時点ではまだ、自分もそういった企業に就職するつもりでいました。考えが変わったのは、組織設計事務所でアルバイトをしたときのこと。高層ビルの設計図面整理、模型の作成を担当していたのですが、どれも個性のない単調な空間をつくっているようで、当時の私の心には響かなかったんです。そんなとき、友人が話してくれたディスプレイ業界のことをふと思い出し、ディスプレイ業界をめざすことにしたのです。業界のリーディングカンパニーである乃村工藝社に縁があって内定をもらい、入社を決めました」2011年に入社した妙中は、ディレクター職として大型雑貨店やアパレルのショップなど商業空間の制作管理を約3年間担当。4年目からは設計部門に異動し、入社7年目の2017年に手がけた埼玉県の温泉施設がグッドデザイン賞を受賞するなど、キャリアを着実に積み重ねていきました。 お客さまのリアルな体験を視覚化できる、BIMの可能性に開眼▲ 浅草と東京スカイツリータウン®を結ぶ「東京ミズマチ®」設計部門で実績を積み上げていた妙中が、自己申告制度(※)を利用しデザイン部門への異動願いを出したのは2018年。設計部門で働き始めて4年経ったころでした。しかし、妙中が声をかけられたのはBIMルーム。当時の心境について、こう振り返ります。妙中 「デザイン部門への異動願いを出していたので、当初は戸惑いがありました。でもせっかく声をかけてもらったからと、初年度はデザインとBIMの部門を兼任するかたちで携わらせてもらったのですが、あるプロジェクトに携わったことでBIMの可能性に気づいたんです」そのプロジェクトとは、浅草と東京スカイツリータウン®を結ぶ鉄道高架下複合商業施設「東京ミズマチ®」のこと。次のように続けます。妙中 「このプロジェクトでは、ランドスケープデザインにも携わっていたこともあり、その場所に来たお客さまがどういった体験ができるのか確かめたかったのです。1/50の模型をつくってみたのですが、模型ではよくわからなくて。そこで、BIMでフルカラーの3次元データを組み上げ、その中を自由に動き回れる“3Dウォークスルー”をつくってみたんです。すると、広さ感、高さ感、見通し感みたいなことがリアルに体験できて、川と公園に隣接するエリアにどういった人の流れをつくろうかといったところまで、しっかり検討することができました。まさにBIMの可能性に開眼した瞬間でした」BIMの可能性に気づき、BIMルームのメンバーにプロジェクトに参加してもらうよう、急遽要請した妙中。BIMをフル活用してプロジェクトを進める中、BIMのさらなる魅力を知ることになります。妙中 「東京ミズマチ®」は、エリアに隣接する川と公園、高架下がすべて違う管轄だったので、今までであれば関係者の合意形成に多くのプロセスを要しました。でも今回は、BIMを使って視覚的なイメージを伝えられたことで、打ち合わせがかなりスムーズに進んだと感じています。また、景観条例によって使用が認められていない色をあえて取り入れようとしたときも、BIMでつくったムービーや3Dウォークスルーを使用してビジュアルでお見せすることで、『これはいいですね』と納得していただけて。ルール上は認められていないものでも、全体的なイメージが伝われば承諾してもらえる余地があるとわかり、それ以降の提案の幅が広がった気がします」※自己申告制度 :キャリア開発の一環として勤続2年以上の社員を対象に部署異動の希望を出せる制度 業界を生き抜くために。これからもDX化に、ソーシャルグッド活動にますますの注力をBIMの可能性を肌で感じ、現在はBIMルーム専任で全社的な業務効率化や独自のサービス開発に取り組む妙中。とくに手ごたえを感じた出来事があります。妙中 「プレカット工法を実装する提案をしたことでお客さまからプロジェクトのご依頼をいただいたときのことは、現在も仕事のモチベーションにつながっています。複数社が提案し、その中から発注先を決めるプロポーザル方式のプロジェクトだったのですが、当社が『BIMを活用してCO2の削減に取り組みます』と意思表明をしたことが大きな一つの決め手となり、お仕事をいただけたんです。環境に対してしっかりコミットする意志を、実績や数字で示せることの大切さを実感しましたし、乃村工藝社がこの業界内で生き残っていくためにも、こうしたソーシャルグッドにつながる活動を強化していくことの意義を確信しました」これからも会社に大きなインパクトをもたらすアプローチに関わっていきたいと話す妙中。今後をこう展望します。妙中 「今後もBIMを含めたDX化に携わり続けたいと思っています。CO2排出量の削減にも応えられなければ仕事がいただけない時代になりつつありますが、他社に先んじて取り組めばそれだけチャンスも広がります。スピード感を大切にしながら、日々の業務に取り組んでいきたいですね」無限大の可能性を持つBIM。その可能性を開けるかどうかは、社内の“人”の手にかかっています。妙中が、そして乃村工藝社が今後どのような道をたどるのか、目が離せません。  

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