文化環境事業部の田代 春佳。2019年の入社以来、営業職として公共の文化施設の提案活動やプロジェクトマネジメントに携わってきました。担当プロジェクトで国際森林認証取得に挑戦するなど、ソーシャルグッド活動に取り組んできた田代。キャリアを通じて大切にしたい想いに迫ります。 営業職として空間創造プロジェクトをリード。空間創造の新しい価値を求めて営業推進本部 文化環境事業部で主任を務める田代。ミュージアムやこども施設など公共の文化施設に携わり、営業職としてプロジェクト開発および推進を担っています。田代 「開発フェーズでは、お客さまからご相談いただけることもあれば、飛込み営業をする場合もあります。いずれにせよ、まずは表面化したお客さまの課題やモヤモヤを一緒に整理し、本当に解決すべき悩みを特定して、当社ができる解決策をご提案することがミッションです。推進フェーズでは、お客さまのご要望と社内状況を踏まえ、予算、納期、人財アサインなどプロジェクトに関連するあらゆるものを管理します。プロジェクトは生ものでフェーズや環境によって刻々と状況が変わります。それらを常に最適化することは試行錯誤の連続ですが、社内外の関係者がうまく連携してプロジェクトが進行するとうれしいですね」一方、乃村工藝社ならではの魅力も多いと話す田代。田代 「乃村工藝社の事業内容は、企画からデザイン・設計、制作・施工、運営・管理までと幅広く、BtoBからBtoCまで空間創造に関するあらゆるクリエイティブに携われることが魅力だと思います。現在、経営やマーケティング視点を学ぶためにMBA取得に取り組んでいるのですが、その中で“The Elements of Value”(※)というフレームワークを学びました。『Functional』『Emotional』『Life Changing』『Social Impact』という4つの段階に分けられた『顧客がほしいと思う30の価値要素』から構成されるものです。このフレームワークに当社の事業内容を当てはめると、設計や施工によるハードのソリューションと運営・管理によるソフトのソリューションを持つ当社は、個々人のアイデア次第で、より多くの価値創造に挑戦できる土壌があると感じます」※ Eric Almquist, John Senior and Nicolas Bloch, “The Elements of Value”, BAIN & COMPANY, 30 Jan 2023 国内の課題に直面したことが転機に。異文化を通じて培った空間創造への関心▲ 入社2年目に担当した「浜松市こども館」リニューアル田代が空間創造の分野に興味を持つようになったのは大学生の時。文化人類学を専攻し開発学を学ぶ中で、転機となる出来事がありました。田代 「ケニアのスラム街に暮らす女性に講演をしていただく機会があり、講演後に東京都内を案内したのですが、彼女から『日本は確かに経済的に豊かな国だけど、幸せな人は多いのか?』とポツリと問われて。その思いもよらない言葉に、本当に豊かなコミュニティやまちってどんなものだろう、と考えるようになりました」 未来のまちのモデルを求めて向かったのがイギリス南部にある小さな町Totnes。ここでの経験が、田代が空間創造に興味を持つ原点となりました。田代 「Totnesは持続可能な社会への移行を目指す市民運動『トランジション・タウン』の発祥の地です。エネルギーを多量に消費する脆弱な社会から移行し、 適正な量のエネルギーを使い、地域の人々が協力し合って柔軟でレジリエンスの高い社会の実現を目指すその活動は、現在世界中に広がっています。地域の人々が集い、オープンなプロセスで “地球” と “自分たち”にも優しいまちについて生き生きと話すその姿に、学生時代にケニアの女性から突きつけられた課題を解決する糸口が見えたような気がしました。こうしたコミュニティが生まれる空間づくりに携わりたいと思い、地域の拠点施設の空間づくりをはじめ、広い事業領域を手掛けている乃村工藝社に仲間入りさせてもらいました」 空間づくりを通じて社内初の国際森林認証を取得。循環型社会に貢献する方法と出会う▲ 2023年11月にオープンした「魔法の文学館」(江戸川区角野栄子児童文学館)入社後、営業職として文化公共施設を主に担当してきた田代。特に印象に残っているプロジェクトがあります。田代 「入社2年目に『浜松市こども館』のリニューアルを担当させていただきました。『浜松市こども館』は親御さんたちへ子育てを楽しむ環境を提供している公共施設です。プロジェクトはリニューアルに併せて浜松市産材である天竜材を活用し、世界最高水準の森林認証であるFSCプロジェクト認証の取得を目指す、当社には前例のない試みでした」認証取得は手探りの連続だったという田代。しかし、浜松市林業振興課の皆さんと、前向きで志の高い協力社の方々とのチームワークで、同時期にリニューアルを担当した「浜松城」プロジェクトと併せて、城および公共の類似児童施設として全国初のFSC®プロジェクト認証の取得につながりました。田代 「適切なサプライチェーンをつなぐことは、空間の製造過程で木材をたくさん使い、多くの協力社と一緒にものづくりを行う会社ならではの循環型社会に寄与する貢献の仕方です。こんな方法があったのか!と納得すると同時に、循環に寄与する目には見えないプロセスのデザインをしているのだと、じわじわとやりがいを感じました。施設理念と木材活用に強い想いをもつ浜松市の皆さまに、貴重な気づきの機会をいただきました。後日、浜松市林業振興課様が開催された『天竜の山々をめぐるツアー』に参加し、ただ美しいだけではなく生物や植物の多様性も守られている森を見て、少しでも貢献できたことを大変うれしく思いました。お客さま良し、自分良し、地球良しな空間づくりをしていきたいなと、改めて思いました」 同じく2023年11月にオープンした「魔法の文学館」(江戸川区角野栄子児童文学館)も田代にとって忘れられないプロジェクトのひとつです。田代 「角野 栄子さんは『魔女の宅急便』の作者として知られる児童文学作家で、児童文学のノーベル賞と言われる国際アンデルセン賞の受賞者でもあります。その想像力あふれる世界観と功績を、後世に伝えるための文学館の展示設計施工プロジェクトを担当させていただきました。『魔法の文学館』は子どもたちが自由に本を選び、手にとって楽しむことを通じて、豊かな想像力を育む場として誕生しました。文学館を生みだす過程で、江戸川区の皆さま、角野 栄子さんやアートディレクターのくぼしまりおさん、角野 栄子オフィスの皆さま、建築事務所様、ランドスケープ設計事務所様、出版社様をはじめとする多くの方々、そして社内メンバーや協力社様と、まだ形のない想像を創造するという非常に貴重な経験を通して、多くのことを学ばせていただきました。先日、子どもを授かった友人が“子どもが生まれたら連れていきたい施設”に『魔法の文学館』をあげてくれて、とてもうれしかったです。リアルな場だからこそできる体験を模索し、感性を育む空間づくりに関われることは歓びですね」 幅広い事業領域を活かした、乃村工藝社だからこその多角的な価値創出を目指して2023年からは「(仮称)静岡市海洋・地球総合ミュージアム整備運営事業」の展示設計施工のプロジェクトマネジメントを担当する田代。「駿河湾とつながるみんなのキャンパス」を事業コンセプトに、開業を目指して地球と海洋を探究する楽しさを伝える空間づくりに携わっています。田代 「当社としては今回はじめてPFI事業の代表企業として参画し、展示制作だけでなく約15年間の運営業務も担います。 目指すのは、見たり体験したりして楽しいというだけでなく、地球や海洋の未来を守る活動を促す、新しい形のミュージアムづくりです。決して簡単なことではないですが、設計制作だけでなく運営事業も担うことを決断した当社だからこそ挑戦ができること。今までの経験を活かし、空間創造を通じた三方良しの仕組みづくりの可能性を広げることにつなげたいと思っています」乃村工藝社の一員として、多角的な価値創造への貢献を目指す田代の挑戦は続きます。 ※ 記載内容は2024年1月時点のものです