井上 大輔(いのうえ だいすけ)
大学で都市デザイン工学を学び、2007年に乃村工藝社入社。大阪事業所にて展示会、企業系ショウルーム、文化施設、官公庁イベント、複合商業施設、万博などのさまざまな分野の制作管理に携わる。中部支店への異動をはさみ、2024年に課長に昇進。現在も大阪事業所にてマネジメントプレーヤーとして活躍中。
ディレクター職として制作管理を担い、2024年からは課長を務める井上 大輔。これまで、水族館や博物館、展示会など幅広い分野のプロジェクトに携わってきました。社内外の各所と協力しながらひとつのものをつくり上げるやりがいや学び、後進の育成に向けた想いなどを語ります。
営業推進本部 近畿事業部 プロダクト・ディレクション2部第1課で課長を務める井上。多岐にわたる分野に横断的に対応するチームで、10人のメンバーを束ねながら、さまざまなプロジェクトに携わっています。
井上 「現在は、主に2025年に開催される大阪・関西万博のプロジェクトに携わっています。私の役割は、メンバーの各プロジェクトへの割り振りや進捗管理、うまく現場を取りまとめられているか、確認やフォローアップなどですね。
制作管理は、デザイナーが描いたデザインを実際の『空間』として具現化するのが仕事。現場に立ち会って、工程の管理はもちろん、安全や品質の管理、さらにはコストバランスも考えながら制作・施工の現場をディレクションしていくのが仕事の基本です。私も課長になるまでは、日々そのような仕事をしていました」
デザイナーが描いたデザインを、実際の施工に落とし込む過程ではさまざまな調整が必要になります。
井上 「デザインがお客さまに承認されると、実際にモノをつくるために協力会社に内容を説明して施工図に反映していきます。コストバランスを考えて経済寸法を検討したり、ここは人がよく触って汚れそうだから素材を変えた方がいいと代案を提案したりと、調整を重ねながら最善策を見つけていきます。
デザイナーにはデザイナーのこだわりがありますし、お客さまの考えもあります。我々制作管理としては安全や品質を担保しなければなりません。それぞれの意見をすり合わせ、より良い着地点を探るような仕事です」
もちろん、プロジェクトを進める際には、営業担当者との連携も欠かせません。
井上 「工事の費用は、契約した金額で進めることが第一ですが、進めていく中でやることが増えたり減ったりすることがあります。そういった現場の情報を、営業にきちんと伝えるのも仕事のひとつです。スムーズにプロジェクトを進めるためには、社内においても営業、デザイナー、そして制作管理が密にコミュニケーションを取ることも大切だと思っています」
管理職となってマネジメントする立場となった井上には、普段から心掛けていることがあると話します。
井上 「現場に顔を出したり、積極的に声をかけたりしてメンバーとのコミュニケーションを取るように心掛けています。自分もそうだったのですが、気にかけて貰っていると思うと、何かあったときも話しやすいのではないかと思うんです。
それから、現場のメンバーの負担を減らすために、社内のやり取りや調整などはなるべく自分が引き取るように努力しています」
井上がこれまでに携わったプロジェクトで特に印象に残っているのは、入社3年目で任されたある公共資料館の展示改修工事だと言います。
井上 「それまでは主に展示会を担当していましたが、部署異動で初めて文化施設に携わることになりました。仕事の厳しさを知ったのはこの時です。
例えば、搬入に使う道路は公道か私道かまできちんと確認するなど、細かなところまで目を配り、さまざまな調整や配慮をしなければ、お客さまや関係者にご迷惑をおかけしたり、工事が遅れてしまう可能性もあると学びました。この他にも、提出する書類の取りまとめや手順なども一から学び、制作管理の根本を改めて理解したように思います」
それから4年後には、世界最大級の規模を誇る水族館のサンゴ礁大水槽の改修という大規模プロジェクトで制作管理を託され、大きなやりがいを感じたと振り返ります。
井上 「オーストラリア北東部沖に広がる世界最大のサンゴ礁『グレートバリアリーフ』をテーマにした水槽です。周りは専門知識を持った人たちばかりだったので、イメージを膨らませるために、現地を紹介する動画を繰り返し見てサンゴ礁の知識をつけました。
水槽内につくる擬岩の形状を決めるにしても、生き物への細かな配慮が求められます。例えば、岩に凹んでいるところがあると水溜まりになってプランクトンが発生するとか、トンネルは大きくしないと魚がつまるとか。ウミガメが食べてしまわないようにアクリル材のシール部分をカバーするなどの作業も必要と、普段とは違う配慮が多くて大変でしたが、こうした生き物に関わる仕事自体が新鮮でしたし、多くの方々の目に触れる場所をつくり上げるやりがいも感じました」
このプロジェクトでは、水槽を施工する大手ゼネコンと水槽内の設備を手がける会社、そして乃村工藝社という3社が同じ現場事務所に駐在。「協働を通じて新たな気づきを得た」と話します。
井上 「ひとつの事務所の中に違う会社が席を並べること自体が初めてのことでしたし、3社が同じ目標に向かって邁進するプロセスが楽しかったですね。各社との関係が徐々に深まると、『この部分は当社が先に進めさせていただきますね』などとコミュニケーションがいっそう活発になり、作業がスムーズに進みました。
また、近い距離感で各社の仕事を目にする中で、仕事の進め方や段取りの仕方、安全書類のまとめ方など参考にしたい部分が見えてきて、とても学びの多いプロジェクトでした」
▲ 京都鉄道博物館
携わるプロジェクトが展示会から文化施設や企業のショールームなどの常設施設へと広がってきた井上。一見すると異なる仕事に思えますが、実は多くの共通点があります。
井上 「施工期間が2、3日しかない展示会の場合は、その後の解体を見据えてなるべく簡略化できるものは簡略化するという特徴があります。しかし、天井に始まり、壁、床に取りかかるという作業手順や、人員の配置方法などは、展示会も常設施設も本質的には変わりません」
2015年には、「京都鉄道博物館」の新設プロジェクトを任され、施設全般の制作管理を担いました。鉄道会社のルールにのっとった安全基準の策定などに心を砕いたと言います。
井上 「デザイナーが描いた図面を見て、どの部分にどのようなルールを適用するかを鉄道会社側と共に調整し、施工図に反映させていく作業が大変でした。例えば、スロープの斜面と踊り場では、見てすぐ分かるように床の色を変えたり、手すりを決められた構造に設定したりと、お客さまの細かいルールにきちんと沿うことに神経を使いました」
当時、構造計算の専門家とのやりとりを通じて新たな視点も得られました。
井上 「例えば、建築物や構造物の設計においては、上部よりも基礎部分の強度を高めなければならないなど、ある程度の知識を身に付けることができました。そういった知識を踏まえた上で描いたスケッチをもとに構造計算を依頼することで、作業を手戻りなく効率的に進めることができました。また、お客さまも含めて鉄道ファンの方も多かったので、SLの希少なナンバープレートなど、その場その場で豆知識を手に入れられたのもとても楽しかったです」
これまで携わってきたプロジェクトに想いをはせ「上司が幅広い分野を学ぶ機会を与えてくれた」と感謝する井上。
井上 「仕事が舞い込むたびに『過去の経験だけでは通用しそうにないから、やり方を考えないと』と試行錯誤を重ねるからこそ、鍛えられて視野が広がるんです。同じことを続けるのが性に合わない私の性格を見抜いた采配に、今でも感謝しています」
そして制作管理の仕事を続けてこられたのは、何よりも「達成感」があるからだと言葉に力を込めます。
井上 「朝早い日や残業になる期間もありますし、協力会社の方々に現場で段取りよく動いてもらうために苦労する場面も多いです。でも、手がけたものが完成し、訪れる人たちが喜んでいる姿を見ると『ああ、よかったな』と苦労がすべて吹き飛びます。次の仕事に向け、また頑張ろうと思えるんです」
さまざまな現場を経験してきた井上は、「携帯ゲームの父」とも呼ばれた横井 軍平氏の「枯れた技術の水平思考」という言葉に共感していると言います。
井上 「既存の技術を違う分野に活用することで、新しい価値を生み出すという意味です。この考え方は、私たちの仕事にも共通するところがあるのではないかと思っています。
ひとつのやり方があったとしたら、それを多角的に、表からも裏からも横からも見ることで新たな打開策が生まれてくる。どんな課題に対しても、さまざまな角度から検討し、出来る方法を考える、我々制作管理の仕事に通じるものがあると思います」
井上は自身のキャリアに目を向け、これからも制作管理の道を歩んでいけたらと考えています。
井上 「自分は制作管理として、協力会社をはじめとしたさまざまな人に動いてもらい、知恵や知識も借りながら完成に導いていくことに面白さを感じています。今後もこの仕事で世の中に貢献していきたいです」
さらに、自らの経験を活かして後進の育成にも力を入れていきたいと語ります。
井上 「私がかつて上司に鍛えられたように、柔軟な発想で臨まなければ成功しないようなプロジェクトにチャレンジできる機会を、多くつくっていきたいですね。
後輩たちには、しんどいことがあっても周りの人たちと協力して進め、最終的に達成感を味わってほしいと願っています。言われたことをただこなすのではなく、自分の裁量でできることを見つけて取り組んでいけば、おのずと仕事の楽しさを実感できるのではないかと思います」
最後に、乃村工藝社の魅力として、先人たちが築き上げてきた歴史と実績を挙げます。
井上 「歴史や実績が物語る通り、乃村工藝社では大きなプロジェクトも含めた数多くの仕事を経験することができます。その中で自分の関心のある分野ややりたいことを仕事に結びつけていくチャンスが数多くあります。やる気さえあれば、社員一人ひとりの可能性は無限に広がっていくのではないでしょうか」
分野を問わず、マルチに活躍してきた井上。今後はそのノウハウや仕事の醍醐味を後輩たちに伝え、仲間や会社の未来をいっそう明るく照らしていきます。
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
大学で都市デザイン工学を学び、2007年に乃村工藝社入社。大阪事業所にて展示会、企業系ショウルーム、文化施設、官公庁イベント、複合商業施設、万博などのさまざまな分野の制作管理に携わる。中部支店への異動をはさみ、2024年に課長に昇進。現在も大阪事業所にてマネジメントプレーヤーとして活躍中。
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