Project Introduction
プロジェクト紹介

乃村工藝社でのプロジェクトの流れ

お客さま(クライアント)の​空間に関するあらゆる課題を​解決することが、​私たちの仕事です。​

生活者発想を基点とする集客力の高い環境の創造により、お客さま(クライアント)の事業繁栄とそこに集うお客さま(エンドユーザー)の心の豊かさを創造し、お客さまに歓びと感動を提供する。 ​
私たちは、その空間に​訪れることによってはじめて感じる​ワクワクやドキドキといった「感動体験」を演出し​空間の中でヒトとヒト、ヒトとモノ​、ヒトとコトが直接出会うコミュニケーションを創出します。​
商業施設、ホテル、博物館​、ショールーム、展示会、イベントなど​人が交わる全ての“場”の魅力を​最大限に高める「空間プロデュース企業」です。​

乃村工藝社でのプロジェクトの流れ

プロジェクトとメンバーの関わり

営業職プランニング職デザイナー職ディレクター職
① 調査・企画・コンサルティング
① 調査・企
画・コンサル
ティング

お客さまの要望や課題に関する各種調査・分析、コンセプトや事業・運営プランなどを策定

②デザイン・設計
②デザイン・
設計

コンセプトや企画に基づくデザイン・設計

③ 制作・施工
③ 制作・施工

デザイン・設計に基づく展示物の制作、施設内外装の施工

④ 運営・管理
④ 運営・管理

事業・運営プランに基づく施設やイベントの運営・集客支援、活性化およびメンテナンス

さまざまなプロジェクトメンバーが関わり、切磋琢磨して築き上げた実績

Culture社風を知る

建築の知識と「人中心の空間づくり」への情熱。理想をかなえたデザイナーの挑戦

建築の知識と「人中心の空間づくり」への情熱。理想をかなえたデザイナーの挑戦

建築と空間体験——学生時代に抱いた2つの関心を胸に乃村工藝社でのキャリアを歩んできた安藤 陽介。2005年の入社以来、先端のデジタルツールを柔軟に取り入れながら、“人の過ごし方”に寄り添う空間づくりに取り組んできました。挑戦と革新を重ね、体験価値を生み出し続ける、その想いと歩みを紐解きます。企画から建築・内装まで一貫して関わる──コンセプトを保つデザインアプローチ安藤が所属するのはクリエイティブ本部 クリエイティブプロデュースセンター “no.10”。建築からインテリアまで幅広く手がけ、空間を通して新たな体験をデザインするチームの一員です。安藤 「担当領域は案件によって異なります。最近では社内のリクルーティングスペースやアパレル店舗、サウジアラビアのカフェなどを手がけました。昨年は住宅を建築から内装まで一貫して担当し、今は地元の名産品と連携した体験型研修施設や、大型商業施設のリニューアルに取り組んでいます」近年は、企画の初期段階から建築やインテリアまで、一貫して関わるケースが増えてきました。中でも安藤が得意とするのは、街並みの中での施設のポジショニングなどを含む大規模な案件。プランナーと連携しながら企画段階から関わっています。安藤 「私のチームでは、初期に立てたコンセプトをそのままカタチにする“分かりやすさ”を大切にしています。企画段階から関わることで、施設全体として一貫性のあるコンセプトを築きやすくなり、バラバラに進行するよりも、完成度の高い空間をつくることができると考えています。ただ、全てを自分だけで完結させるのは難しいため、プランナーとの協働が欠かせません」no.10では、デザインの質だけでなく、プロセスにおける顧客満足も重視しています。その一環として、ゲームエンジンと呼ばれるソフトウェアで完成予想を可視化しています。安藤 「ゲームエンジンを使えば、完成後の空間を実際に歩いているような体験ができます。従来の静止画のパースとは異なり、空間のイメージを直感的に伝えられるので、お客さまの意思決定が早まり、結果的にプロジェクトの質も上がります。手間はかかりますが、ほとんどの案件で導入しています」建築には時間とコストがかかり、一度つくったものをやり直すのは容易ではありません。安藤 「お客さまには、納得した上で次のフェーズに進んでいただきたい。そのために、デジタルツールを活用して丁寧に合意形成を行っています。空間づくりにおいて、このプロセスは非常に重要だと考えています」カルチャーと建築が交差する場所で見つけた新しい視点▲「安川電機みらい館」撮影:ナカサアンドパートナーズ 河野政人カルチャーやアートに興味を持っていた安藤は、高校生のときに訪れた豊田市美術館で「空間そのものの魅力」に惹かれ、大学では建築を学ぶことを選びました。安藤 「当時、建築といえば建物という"箱"をつくる仕事で、建築家が自分の個性を投影する作品づくりという印象が強くありました。しかし、学んでいるうちにもっと生活者に寄り添い、実際の暮らしに根ざした提案をしたい──そう考えるようになりました。音楽も好きで、学生時代にはDJをしていた経験があります。お客さんが喜ぶ姿を間近でダイレクトに感じられる体験から、"人との距離が近い"仕事に強く惹かれました。内装やディスプレイ業界への興味もそこからです」そうした思いを抱きながら就職活動を進める中で、乃村工藝社と出会います。安藤 「雑誌で見た実績や、大学の先輩が楽しそうに働く姿に惹かれました。当時の社屋の自由な雰囲気も魅力的でしたね」生活者に寄り添うデザインができる環境だと感じ、入社を決意。入社後に配属されたコミュニケーションデザイン部門では企業のショールームやイベント空間などの設計を担当しました。空間づくりに携わる中で、ある確信を深めていきます。安藤 「デザインや空間によって、人の過ごし方は大きく変わるんです。空間の造形によって、人の視線や動きが自然と誘導されていく。展示物をどう見せるか、どう感じてもらうかを設計することで、来場者の体験の質そのものを高めることができます」安藤は“仮説・検証・改善”を重ね、自ら体験設計の知見を深めていきました。その考え方が結実したのが、2015年に主担当を務めた体験型ショールーム「安川電機みらい館」です。安藤 「産業用ロボットやモーターの技術を、一般の方にも分かりやすく伝えるための空間を手がけました。未来的な技術を展示する施設として、空間自体をロボットの中にいるような雰囲気にデザインし、通常の垂直な壁ではなく斜めの壁面を採用。壁と壁の角度も90度ではなく不規則な形状を用いることで、特徴的な空間を創出しました。また、床にLEDをライン状に仕込み、色の変化や点滅によって未来感を表現しました」また、デジタルツールの活用にも積極的に取り組み、CGを自ら手がけることで、より細やかな空間づくりを実現しました。安藤 「斜めの壁面が多い設計では、3D空間上で実際の見え方を確認しながら細かな角度を調整していく必要があります。通常はパース制作を外部に依頼するケースが多いのですが、意図した空間に仕上げるには、自分で検証しながら微調整する方が断然スムーズなんです」この案件は複数のアワードを受賞。人々の体験や行動を意識した空間づくりの手法は、その後の案件にも大きな影響を与えることになります。技術と想いを重ねてつくる、唯一無二の空間▲リアス海岸の住宅2016年、入社時から希望していた商業系案件を担当するデザインチーム「onndo」に異動します。現在も安藤が所属しているno.10の前身となるチームです。そこで待っていたのは、中国・上海にある商業施設「Times Square」を1棟丸ごとリニューアルする大規模プロジェクトでした。安藤 「床を抜いてブリッジを架ける、外観も一新するなど、建築・インテリアを含む全面的な改修でした。約3年かけて、ゼロベースから空間全体を構想できたことは、自分にとって理想的なプロジェクトでしたね」このプロジェクトは、デジタルツール活用の転機にもなりました。安藤 「外国の方への提案時は、言葉や文化の違いもあり“図面”だけでは意図が伝わりにくく、“ビジュアル”がないと理解してもらいにくいように感じます。そのため、過去には何度もパースの修正を求められた経験がありました。改善策を考えた結果、“体験できる提案”に勝るものはないと感じ、VRの導入に踏み切りました」当時としては先進的な取り組みで、社内でも数件しか実施されていない手法でした。安藤 「プレゼンテーションの際に、VRゴーグルを社長に装着していただき、私がコントローラーで操作しながら空間を体験してもらいました。さらに、外部企業と提携してVRモデルを活用した解析も実施。6人の被験者に脳波計測することで、居心地の良さなど空間に対する感情を数値化することができました。改修前後の違いを定量的に示すことで、プレゼンテーションの説得力が格段に高まりましたね」そして2024年は、個人邸「リアス海岸の住宅」(KUKAN DESIGN AWARD 2025 Shortlist)の設計に挑戦。建築からインテリアまで一貫して手がける集大成的なプロジェクトでした。安藤 「乃村工藝社で住宅の設計を任されることは珍しく、建築から携われる機会も貴重でした。この案件では、BIM(Building Information Model)※をフル活用し、設計から施工まで一貫してデータ管理を行いました。デジタル空間の中で建築一棟を丸ごと建てるような感覚で、使用する材質、床や壁の仕様、設備の詳細まで、あらゆる情報を集約していきます」日本海側特有の強い北風という地域特性に対しても、街の路地構成を建築に取り入れるというアプローチで解決を図りました。安藤 「建物単体の設計ではなく、周辺の地形や街並みとの関係性、住む人の視点から見える風景まで、総合的に考えて設計できたことが何より楽しかったですね」デジタル技術と豊富な経験を駆使し、生活者の視点を持った建築設計を実現。安藤にとって、これまでの学びと視点を総動員できた案件となり、国内外のアワードを受賞しました。※BIMとは、Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略称。 3次元のデジタルモデルに床・壁・天井などの「属性」や、仕上げ・コスト・スケジュールなどの「管理情報」を持たせ、設計・施工・維持管理に情報を活用することで業務を効率化する仕組み人に寄り添い、未来を描く空間デザインの哲学安藤は、建築からインテリアまでを手がける中で、人々の暮らしに寄り添うデザインを追求してきました。その仕事の中で最もやりがいを感じるのは、お客さまに喜んでもらえた瞬間だと言います。安藤 「建築は完成まで全体像が見えにくく、仮説・検証の繰り返しです。そのプロセスの中で、自分の仮説が正しかったと実感できたときや、細部へのこだわりに共感を得られたときに大きなやりがいを感じます。中でも、人の幸せに少しでも貢献できたと感じられる瞬間は、何にも代えがたい喜びがあります」今後のビジョンについて、安藤は学生時代から温めていた思いが実現しつつあることへの歓びとともに語ります。安藤 「学生時代に建築を学んでいましたが、より消費者や生活に身近なデザインをやりたいという思いから乃村工藝社に入社しました。一方で、いずれは人を中心とした視点で建築にも携わりたいという気持ちもずっと抱いていました。最近は建築案件を任せていただく機会が増え、学生時代に描いていた理想に近づいていることを実感しています。今後も生活者やインテリアなど人に近い部分から、建築、そして街づくりへと領域を広げながら、常に人を中心に考えたデザインを追求していきたいと思います」入社して20年近くが経ちますが、乃村工藝社での仕事に対する思いは今も変わりません。安藤 「振り返ると、乃村工藝社には、自分から学び挑戦する意欲があれば本当に多くのチャンスを与えてくれる環境がありました。デジタルツールの導入や部署の異動など、節目ごとに自分の関心や挑戦したいことに取り組ませてもらえたのは、非常にありがたかったですね。そうした機会をもらえたことに感謝しています」建築から空間設計、そして体験設計へ。「空間には、人の行動を変える力がある」——そう信じ、安藤は今日も現場で挑戦を続けています。※ 記載内容は2025年5月時点のものです

社内外のネットワークで未来を切り開く──空間構想の最前線に挑戦する開発営業のリアル

社内外のネットワークで未来を切り開く──空間構想の最前線に挑戦する開発営業のリアル

2018年に開発営業職として乃村工藝社にキャリア入社した小椋 瑞希。現在は主任として国内の複合開発の構想業務に携わっています。前職では信託銀行で機関投資家の国内有価証券資産管理を担当していた小椋が、空間づくりとの出会いを経てキャリアチェンジした背景と、新たな環境で見つけたやりがいを語ります。構想段階からお客さまに寄り添い、情報編集力で信頼を築くビジネスプロデュース本部第一統括部 開発1部 横浜営業所に所属する小椋 瑞希。ビジネスプロデューサーとしてさまざまな事業の開発に携わっています。小椋 「私の所属する部署では、国内のデベロッパーを中心に、都心部の複合開発や新規施設開発の企画検討をサポートしています。プロジェクトの最上流にあたる土地の取得段階や事業判断の段階も含めた構想業務を中心にご相談を受けています」その中でも小椋は、横浜エリアを中心としたデベロッパーとのネットワーク構築や新規業務開発を担当しています。小椋 「商業施設、オフィス、エンターテインメント施設、温浴施設、公園など、多様な開発案件に携わっています。『この立地にはどのような用途や規模が良いのか、何をやったらいいか決めかねている』といった漠然とした企画段階でのご相談もあれば、ある程度の検討を重ねた上で、プロの目線での意見を求められることもあります」こういった相談に対して、社内のプランニング職メンバーを中心としてチームを組み、エリアや立地を分析。地域のニーズとお客さまの意向をふまえた方向性を導き出していきます。そんな業務の中で、大切にしているのは「情報編集力」だと言います。小椋 「どの切り口からご相談が来るか分からないため、幅広いジャンルの情報収集を心掛けています。日頃からお客さまと情報交換し、事業の特長やご興味のありそうなことをキャッチして、ご相談時にすぐ対応できるよう準備。こちらから話題を振ることで新たな仕事につながることもあります。情報収集の一環として、セミナーや異業種交流会にも積極的に参加しています。『サステナブル』『農と食』など昨今よく話題になるキーワードを見かけたら足を運び、お客さまが接点を持っていなさそうな人とのネットワークを構築。意外な場所で共通の知り合いと出会ったり、思いがけない人脈とつながったりします。そうして得た知識・情報を編集しながらお客さまと話を進め、課題解決のカギを探るようにしています」乃村工藝社の強みは、多様なノウハウや専門知識を持った社員が在籍し、お客さまのニーズに応じて適切な人財を配置できる点だと言います。小椋 「いろいろな人財がいて適正なチームアップができるため、安心感や総合力をご提供できます。さらにオリジナリティや業界に特化した専門性が求められる場合は、外部のネットワークを活用してチームを編成することも。乃村工藝社が全体のディレクションやプロジェクトマネジメントを担うことで、社内外のネットワークを活かした最適なチームづくりを実現しています」ワークプレイスにメリハリの必要性を感じたことが、空間デザインへの道を開いた前職では信託銀行で資産管理業務に従事していた小椋。集中力や正確性が必要な職場ではリフレッシュできる空間が必要と感じ、2015年頃から社会人向けデザインスクールで空間デザインを学び始めました。2017年に銀行を退職後、デザイン事務所や建築事務所でインターンを経験。小椋 「デザインスクールやインターンでの経験を通じて、空間の変化が人の気持ちの切り替えに与える心理的効果の大きさを実感しました。またデザインの力を知り、この業界からニーズに応えていきたいと思いました」プロジェクトマネジメント業務を通じて前職のスキルも活かせることに気づき、空間づくりに関連する企業の営業職を目指した小椋は、2018年に乃村工藝社と出会います。小椋 「募集職種が『開発営業』で、新規顧客の開拓や新しい業態の開発など、幅広い構想プロジェクトの上流工程に携われることに惹かれました。前職は比較的、決まったメンバーと定められたルールに沿って遂行する仕事が中心でしたが、もっといろいろな方とチームアップをして、新しい切り口の仕事にチャレンジしてみたいという気持ちが生まれたんです」こうして新たなキャリアをスタートさせた小椋にとって、営業として最初の象徴的な案件となったのが、『住友生命「Vitality」プラザ』に関するプロジェクトでした。小椋 「2018年の夏頃、展示会で健康増進型保険のPRをされていたところに情報交換で飛び込んだところから関係がスタートしました。お話を伺うと、単に新商品を販売するのではなく、地域と連携し、ライフスタイルに寄り添った健康サポートをしたいという想いをお持ちであることが分かってきました。当時、乃村工藝社は地域創生に力を入れているまちづくりの事例があったため、その視点からコミュニケーションを続けました。すると、そうした理念を実現するためのリアルな拠点を持ちたいというお話が挙がり、ご相談をいただくことにつながりました」約1年間のコミュニケーションを経て業態開発の業務を受注し、保険を販売する店舗ではなく、健康増進活動を体験・サポートする情報発信拠点として、2019年に第1号店、続けて2~3店目を経て、2021年には銀座に旗艦店がオープンしました。この経験から小椋は重要な気づきを得ます。小椋 「最初から店舗づくりなどの手段を提案するのではなく、お客さまのビジョンやミッションを理解することに重点を置き、相談役として議論を重ねることで、結果的に信頼関係が築けて成功につながることを学びました」新商品開発と周年プロジェクト、異なる挑戦に共通した“ネットワークの価値”▲横浜ランドマークプラザ「ヨコバル」2021年からは、新たな分野への挑戦として国産木材を活用した商品『(仮称)WOOD FLOOR UNIT 3.2』開発プロジェクトに携わりました。小椋 「もともとお取引のあったお客さまから、総合林業事業を展開するグループ会社の新商品開発についてご相談をいただきました。特徴的だったのは、特注品ではなく既製品として大量販売できる商品を目指したことです。社内でアイデア交換会を実施し、各部門の知見を集めることから始めました。さらに総合金属建材メーカーやワックスメーカーなど外部企業にも声をかけ、最終的に三菱地所さま・MEC Industryさまを含む6社が参画する開発チームを編成しリリースすることができました。林業の活性化や森林の循環も考慮し、大量採用可能な商品開発を目指しました。価格や強度のバランス、一般的な床の耐荷重レベルの達成など、さまざまな検証が必要でした。商品開発は私にとっては初の試みでしたが、社内の経験豊富なメンバーや法務・広報と連携し、2年半をかけて完成。現在は環境配慮に対する意識の高まりもあり、『ビル1棟で採用したい』といった大型案件の問い合わせも寄せられています」同じく2021年から取り組んでいるのが、横浜ランドマークプラザの30周年を契機としたプロジェクトです。小椋 「横浜を代表する施設として、今後どう街を牽引する存在であり続けるかを、お客さまと数年がかりで議論してきました。特徴的だったのは、複数の分野において有識者への聞き取りを行い、外部の視点をフラットに取り入れたことです。通常は企画の方向性を決めてから検証のためにヒアリングを行うことが多いで、このプロジェクトでは大きな枠組みだけを決め、先入観なく意見を聞くというアプローチを採用しました」その結果、地域と食の魅力を発信する場所作りが第1弾のテーマとして選ばれ、2025年5月29日に「ヨコバル」がオープンしました。小椋 「お客さまが数あるテーマの中から、まず『食』を選ばれたのは、来館者にとって身近に感じやすいという文脈でした。また、横浜在住のアーティスト・山下 良平さんに壁画制作をお願いできたのは、デザインスクール時代にスクールの経営層だった方にご紹介いただいたおかげです。このプロジェクトを通じて、さまざまな分野の方と常日頃から接点を持つことで、従来にない業務の切り口や提案が生まれることを実感し、大きな学びとなりました」お客さまの一言を拾い上げ、社内外の情報を元に解決への糸口を探す開発営業の醍醐味について、小椋はこう語ります。小椋 「お客さまの『雲をつかむような案件』が、先に進んでいけるようになることに醍醐味を感じています。お客さまと一緒に頭を悩ませながら進めていくのが面白いところで、時にプレッシャーもありますが、やりがいにもつながっています」信頼関係の構築において小椋が心掛けているのは、事業への深い理解と柔軟な対応です。小椋 「お客さまの事業に深く踏み込んで、悩みやニーズをしっかりと把握することが重要です。雑談の中で出てきた案件に対しても『できません』とは言わず、まずは実現可能な方法を模索します。正解がない中で、お客さまのニーズと社内外で収集した情報を元にベストな判断を下すことが開発営業のミッションだと考えています」今後の展望について、2つの軸で事業開発を進めていきたいと語ります。小椋 「1つは『持続可能な社会』や『地球と共生する』というテーマを、ただ掲げるだけでなく、人の日常やライフスタイルに実際に落とし込んでいく空間や企画を提案することです。2つめは、エンターテインメントなど非日常的要素を日常に取り入れていくこと。集客を検討する際には、こうした要素が求められていると感じています。最終的には、両方の軸を融合させることで、新しい空間づくりにつなげていきたいですね。今後もジャンルを問わず、みんなを巻き込んで新しいチャレンジをしていければと思っています」 乃村工藝社の魅力について、小椋は次のように話します。小椋 「個性を活かして働いている方がたくさんいると感じています。画一的な知識やスキルではなく、それぞれの興味関心や得意分野を専門スキルにしている方が非常に多いんです。特に開発営業では、プロジェクトごとにチームが変わるため、常に新しいメンバーとのチームづくりが求められます。いろんな人と出会い、多様な考えを取り入れながら、自分の進め方をアップデートしていきたい方には向いている環境だと思います」小椋自身も、組織の中で目指す姿を明確に持っています。小椋 「『とりあえず小椋に相談すれば、いいチームを作ってくれそう』『何かアイデアをもらえそう』『聞いてみたら有益な情報がありそう』と思ってもらえるような存在でありたいですね。私自身、好奇心旺盛で何でも興味があるというところが個性だと考えています。幅広い分野に興味を持ち続けることで、自分らしさを発揮していきたいと思っています」 ※ 記載内容は2025年5月時点のものです

金融の世界からプランナーへ。好きなことの先にある世界一幸せなキャリアチェンジ

金融の世界からプランナーへ。好きなことの先にある世界一幸せなキャリアチェンジ

2019年に乃村工藝社に経験者採用で入社した杉本 たく。現在はホテルや展示空間、地域と連携する施設の企画に取り組んでいます。前職は外資系金融機関で働いていたユニークな経歴を持つ杉本。キャリアチェンジした理由や新たな仕事で見つけたやりがい、これからの展望を語ります。お台場の“緑”を建物に呼び込む。月日とともに、変化していく空間を創り出す▲ARTBAY TOKYOクリエイティブ本部 プランニングプロデュースセンターに所属する杉本。ホテルを中心としたホスピタリティ領域を中心に、商業施設、図書館、博覧会等、様々な領域の仕事を手がけています。杉本 「現在は主にホテルや商業、博覧会の仕事を担当していますが、そこから発展してまちづくりや新しい施設のブランディングといった業務も手がけています」その代表的な実績の一つが、お台場で実施された『ARTBAY TOKYO』(会期終了)。これは臨海副都心エリアを拠点とするアートによるまちづくりプロジェクトで、この土地の魅力を引き出す空間づくりに挑戦しました。杉本 「このプロジェクトで面白かったのは、私を中心としたチームがプロデュース的な立場で、外部の建築家やアーティスト、デザイナーなど、多種多様なクリエイターと協働したことです。世界的なアーティストから同世代の新進気鋭の建築家まで、さまざまな方々と一緒に作り上げていく過程で多くの刺激を受けました」プロジェクトは2018年から調査を開始し、2020年後半に完成するまでの約2年間をかけて実施されました。杉本 「お台場は商業施設がたくさんありますが、他の街にあるような歴史的な文脈がそれほど強くはありません。そこで、『お台場らしい空間や体験とは何だろうか』ということを、プロジェクトを象徴するARTBAYHOUSEというパビリオン建築のために招いた建築家の萬代基介氏と綿密な議論を重ねました。そして、お台場は実は名前の由来となっている江戸時代に作られた島がいまも残っています。そこに自生する植物をパビリオンの中に移植して育てることで、建物全体が月日とともに緑に覆われ、変化していく空間を生み出しました。そこには屋根のない空間があったり、光の入り方が異なる部屋があったり。自然が入り込んできて移り変わっていく。人と緑の新しい関係を体験できる面白い空間ができあがりました」コロナ禍でのオープンとなり、従来型の広報活動は制限されましたが、SNSを通じて予想以上の反響がありました。杉本 「白い壁面が印象的な建築デザインを活かして、若い方々がSNSなどの撮影スポットとして使ってくれたり、建築の専門誌にも取り上げられたり、話題になりました。また、中に入居したカフェを通じて、デザイナーやクリエイターの方々との新しいつながりも生まれました。床材に使用した砂利のテクスチャーは、特にお子さまの感覚を刺激し、さまざまな来場者の反応を引き出すことができたと思います。SNSなどを通じて口コミが広がり、最終的には行列ができるほどの人気のパビリオンとなりました」好きなことの延長線上にある、世界一幸せな仕事現在は空間づくりのプロフェッショナルとして活躍する杉本。その原点は、幼少期に見ていたテレビ番組にありました。杉本 「小学生の頃、テレビの住宅紹介番組を好んで観ていて、こだわりがつまった建物が紹介されるたびに、魅了されていました。5人家族の末っ子で自分の部屋がなかったこともあり、実家の建て替え計画を考えて、簡単な間取り図を用いて親にプレゼンしていたほどです」しだいに建築を学びたいという気持ちが強くなった杉本は、大学では建築を専攻。その後スイスへの留学も経験します。そこで建築に対する新たな視点を得ることになります。杉本 「スイスでは、建築の本質的な考え方を学びました。例えば学校や美術館を設計する際、その施設そのものの在り方から考えていくアプローチです。スイスは政治的・経済的に安定している国なので、『良い建築とはなにか』『美しい空間とはなにか』、純粋に空間や建築の面白さや美しさを追求できる環境がありました」スイスの留学中、杉本の価値観を大きく変えた出来事がありました。杉本 「日本では大学卒業後すぐに就職するのが一般的ですが、スイスではまったく違いました。社会学を学んでから建築を勉強したり、30歳半ばで学び直したりと、自分のペースで人生を組み立てている人が多かったです。自分が大切にしたいものは何かをじっくりと考え、様々な経験をしながら進む道を決めていく。その姿勢に驚きと感銘を受けました」学生時代、各国を旅する中でスリランカを訪れた経験も、杉本のキャリアに大きな影響を与えます。杉本 「スリランカで見た世界遺産の近くにある文化施設が、非常に印象的でした。修復作業が見える展示や参加型・体験型の展示を行っていて、とてもよくできていました。それが日本のODA(政府開発援助)のプロジェクトだと知り、このような国際貢献の在り方もあるのかと、強く惹かれましたね」国際貢献に惹かれた杉本は、まずは学生時代に国際機関でインターンとして働き始めます。そこで「建築だけでなく、金融経済の知識も国際機関のキャリアを考える上では大事」だというインターン先の所長からのアドバイスによって、次のステップとして外資系金融機関を志望します。杉本 「国際的総合金融サービス会社に入社しましたが、少人数で多くの業務をこなす、とてもハードな環境でした。一人ひとりのプロフェッショナリズムや、日々結果を出すことの大切さを学びましたが、ただ、金融は自分の興味関心からは遠い領域。貴重な経験ではありましたが、生涯をかけてやりたい仕事であるとは感じませんでした」そんな中、偶然が重なって乃村工藝社と出会います。杉本 「入社した最初の頃に携わった仕事が、未来の商業施設の在り方を考えるリサーチプロジェクトでした。領域は違えど、リサーチは前職でも経験していた業務。商業空間の歴史的変遷や国内外の最新事例等、試行錯誤を重ねながら夢中になって取り組みました。最終的には辞典のようなボリュームの、非常に内容の濃い資料となり、お客様にも評価を頂けました。同プロジェクトにアサインされたメンバーも個性的な人たちばかりで、このような面白い人たちと、未来の空間の在り方を考え、デザインできる。自分にとってはこれ以上ない仕事だと感じました」当たり前を疑い、既成概念を超えて。地域とつながる新しい場を生み出していく▲ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園杉本が初めて本格的に手がけた実績は、マンションギャラリー「Brillia品川南大井 コミュニケーションサロン oooi」です。マンションギャラリーの概念を見直し、新しい形を提案しました。杉本 「従来のマンションギャラリーは販売前に突然現れて、販売が終わると撤去される『ブラックボックス』的な存在なのではないかと考えました。私たちはこの在り方に疑問を持ち、『これからの時代に相応しい新しいマンションギャラリーとはどのようなものだろう』という問いから始めました」プロジェクトでは、マンション購入検討者だけでなく、地域住民にも開かれた空間づくりを目指しました。杉本 「重要なのは、その地域での暮らしがイメージできるかどうか。そこで、1階と2階で空間を分け、1階を地域の方も利用できるコミュニケーションスペースにしました。マンションを買おうと思っている方はモデルルームを見た後に1階に降りてくると地域の方たちが話していたり、活動していたり、地域の雰囲気が分かり、リアルな暮らしのイメージが湧いてきます。マンションができる前から、新しく入居される方と地域の方との関係が少しずつでき上っていく。そんな場所を目指しました。『縁側』のような、内側と外側をつなぐ空間をつくり、人と人とのつながりが外から物理的に見える、視覚的にも心理的にも開いた施設にしました」この取り組みは、グッドデザイン賞を受賞。人、企業、地域をつなぐ新しい価値を提供し、社会課題の解決を重視した点が高く評価されました。もう一つの代表的な実績が、「ザ ロイヤルパークキャンバス 札幌大通公園」です。このホテルプロジェクトでは、2つの大きなチャレンジに取り組みました。杉本 「一つは北海道の木材を多様な形で使用すること。もう一つはホテルを地域のショーケースとして位置付けることです。北海道にゆかりある職人やアーティストによる家具、アート、写真、植物などが購入できる仕組みを導入。地域の作り手と宿泊客をつなぐことで、地域経済の循環を生み出し、ホテルが小さな経済圏の1つの拠点として、価値づくりの起点となるような場所を目指したんです」また数々の新しい試みをする中で、30代以下のミレニアル・Z世代をターゲットに、あえて全ての客室にテレビを置かない選択をしました。杉本 「札幌はジャズフェスティバルが開催される音楽の街。テレビの代わりにレコードプレイヤーを設置し、これが賛否両論を呼びました。ビジネスユーザーの方からは否定的な意見もありましたが、一方、若い世代には実際に針を落として音楽を聴く体験が新鮮だと、好評です。良いホテルとは、作り手のパーソナリティが感じられる場所。最大公約数的な無難な空間ではなく、尖った体験を提供することで、記憶に残るホテルを目指しています」集合知が生むクリエイティビティ。人が面白い会社だからこそ、挑戦も出会いも尽きない杉本はこれからの目標について、これまで温めてきた夢の実現に向けて語ります。杉本 「以前から私は文化を通じた国際貢献をしてみたいと考えていたため、日本を飛び出して世界、特にアジア地域で仕事をしていきたいですね。施設としてはホテルでも文化施設でもいいのですが、国づくりに関われるような施設や空間がつくれるといいなと思っています」2025年3月にルームチーフに昇格し、チームマネジメントの立場となった杉本。リーダーとしての想いを次のように語ります。杉本 「乃村工藝社に入って感じるのは、チームとしての集合知の豊さ。集まることで生まれるクリエイティビティの素晴らしさです。一人の突き抜けた才能が引っ張て行くというよりは個性豊かな集合体として、その掛け合わせで面白いアイデアや新しい空間が生まれていく。一人ひとりの面白い個性や特徴を活かした空間づくりを、プロジェクトでもルームのメンバーに対しても大切にしていきたいと思っています」乃村工藝社の良さは、先人たちが築き上げてきた長い空間の歴史を活かせるところだと杉本は言います。杉本 「大切にしているのは歴史から学ぶという視点。その中で、自分たちがつくる空間を通し、先人たちが紡いできた思想やクリエイティビティをどのようにして一歩進められていけるかを常に考えています。お客さまからの課題に全力で応えることはもちろんですが、同時にクリエイターとして歴史を引き継ぎつつ、次の世代に何を残せるかを大切にしています」この分野に興味を持つ方へ、杉本はエールを送ります。杉本 「外から入った身として言えるのは、とにかく人が面白い会社だということ。デザイナーに限らずどんな職種の方でも、生涯にわたって関係が続いていきそうな、かけがえのない出会いがたくさんありました。プロジェクトごとにメンバーを編成していくので、どんどん新しい人たちとも出会える。本当に面白い人たちと、大小さまざまなジャンルのプロジェクトができる会社です」必ずしも建築や空間デザインを専門的に学んでいなくても大丈夫だと、杉本は言います。杉本 「文学部出身など多様なバックグラウンドを持つ方が活躍されています。自分の好きなことの延長線上に仕事を見出せる場所。興味があれば、ぜひ飛び込んでほしいですね」※記載内容は2025年5月時点のものです

二次元を超え、心を震わせる立体へ──夢を具現化するディレクター(制作管理)の流儀

二次元を超え、心を震わせる立体へ──夢を具現化するディレクター(制作管理)の流儀

テーマパークなどで来場者を魅了するモニュメントや装飾物などの「大型特殊造形物」。その制作を指揮するディレクターとして、数々のプロジェクトを手がけてきた藤沼泰裕。ジブリパーク 魔女の谷「ハウルの城」をはじめ、二次元のビジュアルを三次元の造形へと昇華させるスペシャリストです。彼が培ってきた制作管理の極意とは何か、そして今後のビジョンについて迫ります。 二次元を三次元に変換するには、緻密な計画とお客さまとのイメージ共有が鍵営業推進本部 第四事業部プロダクト・ディレクション1部 第2課に所属し、主任を務める藤沼。ディレクター職として、テーマパークをはじめとする非日常空間に、モニュメントや装飾物といった「大型特殊造形物」を創出し、数多くのプロジェクトを手がけてきました。藤沼 「直近では、アート施設の大規模改修プロジェクトにおいて、所長として約1年間指揮を執りました。現在は工事も完了し、施設は無事オープンを迎えています」藤沼が手がけるのは、訪れた人の記憶に残る、圧倒的な存在感を放つフォトロケーションやモニュメント。高さのある巨大造形や、空間一体を演出するスケールの大きな装飾など、その仕事は“非日常”をかたちにする、スケールと精度が試される創造の現場です。藤沼 「大型特殊造形物の制作は、空間・構造・演出が高度に融合する、極めて複雑なプロセスです。素材の選定や構造設計はもちろん、内部に組み込む照明や設備の配置計画、分割・搬入・現場での据え付け方法に至るまで、すべての工程において高度な専門知識と精密なオペレーションが求められます。一つでも設計にほころびがあれば、全体の完成度に直結するため、細部まで妥協のない設計と管理が不可欠です。なかでも最もシビアに問われるのが、“見た目”の完成度です。素材の質感や光沢、表面のテクスチャーに至るまで、緻密な設計と検証を重ね、本物以上のリアリティを追求します。作品全体のボリューム感を損なうことなく、世界観に没入できる精度で仕上げる──そのためには美術的な感性と構造的な知見の両立が不可欠です。単なる施工とは一線を画す、極めて高度な造形表現が求められます」二次元のデザインを三次元へと昇華させるうえで、最も繊細かつ難易度が高いのが、「お客さまの頭の中にあるイメージをいかに正確に共有し、具現化できるか」だと藤沼は語ります。藤沼 「最初にあるのは、二次元のイラストやパースのみ。そこから三次元の立体へと具現化していくのですが、使用する素材の質感や細部のニュアンスなど、具体的なイメージはお客さまの頭の中にしか存在しません。そのイメージをいかに正確に引き出せるかが、成功の鍵を握ります。だからこそ、初回の打ち合わせでは疑問点や不明点をすべて洗い出し、とことんヒアリングします。“少し聞きすぎかな”と思うくらい細かく質問するのも、世界観を深く共有するため。お客さまの想像を超えるクオリティに仕上げるためには、最初のすり合わせこそが最も重要だと考えています」細かなニュアンスのすり合わせを怠れば、完成物がイメージと大きくかけ離れてしまうこともあります。特に短納期の案件では、一度の判断ミスが全体の進行に影響を与えかねません。加えて、来場者が実際に見て、時には触れるものだからこそ、安全性や耐久性への配慮も欠かせません。サンプルの提示や仕様確認を重ねながら、細部まで丁寧に詰めていくことで、高い品質と信頼性を両立させています。藤沼 「大規模な造形物の場合、現場に搬入する際にパーツごとに分割して運搬する必要があります。そのため、どのように分割し、どの順番で搬送・搬入を行うか、さらには現場での組み立て方法も事前に緻密に計画しなければなりません。制作の段階から、まるでパズルのように、構造や工程を精密に検討することが求められるのです」大型特殊造形物の道を極める――案件を重ねて深まる知見▲初めて携わった「富士急ハイランド ナガシマスカ」 の招き猫学生時代から「テーマパークの造作に関わりたい」と漠然と抱いていた思いを現実のものにしたのは、乃村工藝社に入社早々、先輩が主導する遊園地の現場で、アトラクションのシンボルとなるモニュメントの制作に携わる機会を得ます。藤沼 「右も左もわからない中で、実際に業界の第一線に立つことができ、非常に感動した瞬間でした」その後、ショールームや展示会などの内装業務を経て、本格的にテーマパークのプロジェクトに関わり始めました。しかし、翌年には案件の受注規模が縮小し、担当が藤沼一人となる厳しい状況に直面します。藤沼 「限られたリソースでどうお客さまの期待に応え、さらに多くの仕事を獲得するかを必死に考えました」と当時を振り返り、課題を乗り越える力強さを見せました。 次第に案件を獲得し、制作を担当しつつ営業業務も兼任するようになった藤沼は、大型特殊造形物の制作に関する高度なノウハウを積み重ねていきました。スケジュール管理、制作方法の検討、図面管理、見積もり、品質管理など、多岐にわたる業務を網羅し、そのすべてに精通。特に、限られた制作期間でのスケジュール管理においては、独自の手法を確立しました。このスケジュール管理法は、後にジブリパークのプロジェクトでも活かされ、高く評価されています。藤沼の業務はただの制作にとどまらず、精緻な計画と迅速な対応力が求められる大型特殊造形物の世界で、他に類を見ない独自のポジションを確立しています。藤沼 「2カ月分の全工程を最初に作成し、必要なタスクをリスト化して明確にします。『何月何日何時に、どこの工場に誰が来て、何を確認するのか』を徹底的に計画。これにより、プロジェクト全体の進行が円滑に進みます。大規模なプロジェクトでは会議の日程調整や進行に無駄が生じがちですが、事前にスケジュールを共有することで、効率的に進行できます。スケジュール管理には常に細心の注意を払い、全員が同じタイミングで確認できる環境を整えています」また、施工においても大きな挑戦があります。藤沼 「テーマパークなど営業時間が決まっている現場では、作業時間が限られているため、進行を緻密に計画する必要があります。パーツの搬入、クレーンでの設置、電気配線、組み立てを効率よく進めるため、作業順序や人数を計算し、天候などにも配慮しながら作業を進めます。こうした現場で培った判断力や効率的な作業進行能力は、現在の仕事の基盤となっています」ジブリパークに「ハウルの城」を創造――前例なき大型造形への挑戦▲ 制作担当の仲間たち藤沼にとってこれまでにない挑戦となったのが、2024年に完成したジブリパーク「魔女の谷」にある「ハウルの城」の制作でした。これまでの大型特殊造形で培った手腕が評価され、抜擢された本プロジェクトは、大規模な建築外装と一体化した前例のないスケール感を誇るものでした。藤沼 「これまでの造形物よりもはるかに大きく、しかも建築と融合するのは初めての経験。考慮すべき点が多く、非常に難易度の高い案件でした」世界観を追求するため、素材選定にも特別なこだわりを持って取り組みました。藤沼 「全体監修を指揮したスタジオジブリ・宮崎吾朗監督からは、『軍艦のような、無骨でどこか怪しげな工業製品のように』という明確なイメージが提示されましたが、その世界観をどう造形として表現するかは決して簡単ではなく、素材や構造を一から検討し、具現化する必要がありました」藤沼が導き出したのは、下地にFRP(繊維強化プラスチック)、表層に銅板などの金属素材を組み合わせる構成。重厚で無骨な存在感を表現しながらも、耐久性や施工性、現場での組立効率までを見据えた、精密な造形設計を実現しました。藤沼 「これまでの案件は比較的単独で進めることが多かったのですが、今回は完全にチームプレイ。構造、メカ、造形、図面、要領書、現場管理──それぞれがプロフェッショナルとしての自覚を持ち、自分の役割を全うしてくれました」過酷な現場環境でも、チームの士気が下がることは一度もなかったと語ります。藤沼 「誰ひとり『無理だ』とは言わず、常に『どうすれば表現できるか』に真剣に向き合ってくれた。その前向きな姿勢が、このプロジェクトを前に進める大きな力になりました」数多くの協力会社との連携を支えに、藤沼はその経験を経て、ディレクター職という仕事の醍醐味をこう語ります。藤沼 「自分が関わった造形や空間に対して、『すごい』『かっこいい』『かわいい』といった言葉をいただける瞬間、その反応を直接感じられることが最高の歓びです。驚きや感動を届け、来場者に新しい体験を提供することこそが、この仕事の真の魅力だと思います」既成概念を超えて“面白い空間”を生み出す、という挑戦大型特殊造形の分野で確かな実績を築いてきた藤沼。その歩みは、常に“挑戦する姿勢”を貫いてきた軌跡でもあります。藤沼 「“これ、どうやって造ったの?”と驚かれるような複雑でユニークな造形にこそ惹かれます。難しければ難しいほど、やりがいを感じる。結果的に大型造形に関わることが多くなりましたが、本質的にはスケールやジャンルにとらわれず、“面白い空間”をつくり続けたいという気持ちが根底にあります。固定観念にとらわれず自らの可能性を広げながら、次世代への技術の継承にも力を入れていきたいですね」誰もが知るテーマパークやアミューズメント施設の空間演出を手がけてきた藤沼は、これからも“歓びと感動”を超える体験を生み出し続けます。※ 記載内容は2025年2月時点のものです 

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