「らしさ」は、センスで決めない。会社の顔づくりの本質

主に営業を担当しております、高森です。
「この会社らしさを、空間で表現したいんです」
とは、企業のショールームやオフィスづくりの相談で、よく耳にする言葉です。
対外的に企業を発信する場だからこそ、「らしさ」は欠かせない要素として語られます。
ただ、その言葉を深掘りしていくと、意外なほど解釈が分かれ、議論が止まってしまう場面も少なくありません。
そんな「らしさ」について、乃村工藝社の現場で培われてきた考え方をお伝えします。
空間づくりで「らしさ」が迷子になる理由
空間づくりで求められる「自社らしさ」ですが、その意味を丁寧に聞いていくと、色や素材、デザインといった「見た目の話」に集約され、議論は感覚論に傾き、判断の拠り所が曖昧になっていくことがあります。
「らしさ」は便利な言葉である一方、人によってその捉え方は異なります。
経営者は企業の歴史や理念を思い浮かべ、担当者は競合との差別化を考え、現場は日々の業務風景を思い出す。どれも間違いではありませんが、共通の認識ではありません。
結果として、「なぜそれをやるのか」「本当に必要なのか」という問いに、明確な答えが出せなくなってしまうのです。
「らしさ」の正体は、伝えたい意思そのもの
企業の空間づくりにおいて、私たちは「ブランドコミュニケーション」を、企業の存在意義やミッション、パーパスといった考えを、社内外にどう伝えていくかという取り組みだと捉えています。
そこで大切になるのが、「なぜ?」を繰り返し問い続けることです。
「この事業は、何のために行っているのか?」
「売上を上げるため」
「なぜ、売上を上げるのか?」
問いを重ねていくと、自社の価値をより多くの人に届けたい、より良いものを生み出したいといった思いに行き着くことがあります。
こうして「なぜ」を掘り下げていくことで、目的の奥にある価値観が少しずつ言葉になっていきます。
このプロセスが、最終的に関係者全員が納得できる、ブランドコミュニケーションの「軸」となる共通認識を生み出します。これが、「会社の顔」をつくるための出発点になります。
軸を言語化することで、会社は判断できるようになる
こうしたプロジェクトでは、「まずは、みなさんで考えてみましょう」という呼びかけからスタートすることで、うまくいくケースがあります。そのためにワークショップや対話の場を通じて行うのは、「なぜ?」を実践し、軸を形にしていく作業です。
やがて「それは自分たちらしいか?」という問いに、基準に沿って答えられる状態になると、提案に説得力が生まれ、判断が前に進みやすくなるのです。
「会社の顔づくり」とは、表現ではなく基準をつくること
時代や環境が変化しても、ブレない判断基準が共有されていれば、軸に沿った判断に立ち返ることができます。「会社の顔づくり」とは、表現を整えることではなく、そうした判断の基準を組織の中に持つための取り組みです。
空間に限らず、企業の「らしさ」が問われる場面で、その基準は意思決定の拠り所になります。
目を引く表現を生み出すことがゴールではなく、自分たちらしい判断ができる状態をつくること。
その視点を、日々の意思決定の中で思い出していただけたらと思います。