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ワクワクドキドキで世界をつなぐ。国境を超えるエンターテインメント空間の創出に向けて

CICクリエイティブ・ディレクション部を率いる山田 竜太。空間を通じて人をワクワクさせたいという想いを軸に、エンターテインメント空間の領域で卓越した成果を上げてきました。「エンターテインメント空間デザインに国境はない」と話す山田が一貫して大切にしてきたこと、乃村工藝社だから実現できることを語ります。

 

想像を超える感動を。エンターテインメントクリエイティブディレクターが目指すもの

コンテンツを起点に空間実装をしていくコンテンツ・インテグレーションセンター(CIC)(※)のクリエイティブ・ディレクション部に所属する山田。空間づくりにおけるクリエイティブ領域の全体統括を行っています。

山田  「クリエイティブ・ディレクション部ではあらゆる空間を取り扱っていますが、お客さまから『エンターテインメント』というキーワードが出た瞬間が、私たちの出番です。近年はマンガやアニメといったキャラクターコンテンツを空間実装する仕事を多く手がけています。


自身をエンターテインメントクリエイティブディレクターと位置づけ、デザイン自体はデザイナーに任せながら、俯瞰した視点から空間全体をディレクションするのが私の役割です」

山田が得意とするのは、おしゃれな空間よりもワクワクドキドキといった感情を誘う演出空間。来場者の想像を超えた感動を生み出すことを目指してきました。

山田  「今の時代はSNSなどを通じて、多くの人が、訪れる空間について前情報を持っています。ですから、実際に空間を訪れた人が『想像通りだった』では期待を超えていません。


例えば、物語に出てくるキャラクターを原寸大にしたり、照明や音響、動くギミックなどの演出性を高めたりします。空間を訪れたからこそ生まれる感動や、驚きに満ちた体験をつくり出そうと努めています」

ワクワクドキドキをかたちにする上で鍵を握るのが、実績と経験。乃村工藝社だからこそできることがあると山田は言います。

山田  「乃村工藝社には長い歴史の中で積み重ねてきた膨大な実績があり、さまざまな経験と感性を持った人が在籍しています。『こんな仕掛けを入れたら驚くだろうな』『これ作れたら感動するけど、どう作る?』といったアイデアや疑問が浮かんだ時、その領域に長けたデザイナーや制作管理など、経験とスキルを持った人が必ずいるのが当社の強みです。


ひとりでは決してできないことを、共に実現できる仲間が多くいることに、頼もしさを感じています」

そんな山田がいつも大切にしているのが、さまざまな空間を自らも“体験”すること。ひとりの来場者として、現場からインプットすることに時間と労力を惜しみません。

山田  「その場にいる人の反応をリアルに見ながら、何をどう感じているのか想像したり、時には話しかけたりして、驚きや感動を生み出す仕組みや仕掛けについて考えを巡らせます。空間を創り出す近道は、空間を体験すること。感覚を常に研ぎ澄ませておくためにも、リアルな場所に足を運ぶことには時間を惜しみません。


先日も、ある展覧会を見てきたのですが、iPadで描かれた全長90メートルに及ぶ作品には圧倒されました。展覧会では飾るものがあらかじめ決まっていますが、展示の仕方で見え方や生まれる感動は大きく変わるもの。空間を実際に体験することで、ワクワクドキドキを生み出すための手がかりが見つかると思っています」

CIC (Content Integration Center:空想実装集団)は、コンテンツへの深い理解を起点に、心躍るような「空想」を新たな体験価値へ変換し、あらゆる空間へ、そして社会へ「実装」させていく乃村工藝社のクリエイティブチームです

 

幼少期の記憶が原点に。エンターテインメント空間デザインの最前線で歩んだキャリア

井上雄彦 最後のマンガ展
 

▲「井上雄彦 最後のマンガ展」

幼少期を海外で過ごした山田。3歳の時にフロリダのディズニーワールドを訪れたことが空間づくりの原点だと言います。

山田  「記憶は定かではないですが、楽しいところに行った記憶だけが漠然とあって。その後、日本に帰国してから、その思い出を辿るようにほぼ毎週、友人を誘って東京ディズニーランドに通っていました。


その非日常的な空間に魅了され、パークに流れるBGMを録音して家に帰ってからも現地にいるような雰囲気を楽しんだものです。今になって思えば、そのころからエンターテインメント空間を創り出すことに興味があったのかもしれません」

父の影響もありテーマパークのロボットをつくるエンジニアを志し、大学で機械工学を学んだ山田。しかし、一般教養の授業で「空間デザイン」を知ったことが転機に。テーマパークそのものをつくる道を目指したいと、他大学に進み、環境デザインを専攻。指導教授に勧められて選んだ就職先が、乃村工藝社でした。

2002年の入社後、それまで温めてきたエンターテインメント空間への想いを実現する機会が、早くも訪れます。1年目の終わりに、山田は北海道のお化け屋敷のアトラクション制作メンバーに抜擢されました。

山田  「空間、小道具、お化け造形のデザインだけでなく、照明、BGMやセリフなどの台本をつくってそれを具体的に形にしていくところまで、すべてのプロセスに携わらせてもらいました。


施設のオープンに立ち会い、恐怖におびえ泣きながら出てくる子どもたちの姿を見て、確かな手ごたえを感じたのを覚えています。当時、エンターテインメント空間のデザイン案件はほとんどありませんでしたが、人を楽しませる空間づくりに関わっていく決意を固めました」

そんな山田にとって、もうひとつの転機となったのが、7年目の2008年に「井上雄彦 最後のマンガ展」を担当したこと。マンガを空間化する難しさと直面しながらも、ファンの期待を超えた空間づくりには、たくさんのこだわりが詰め込まれていました。

山田 「2次元のマンガ世界を3次元の空間に変換するには、ストーリーの中から要素を丁寧に汲み取り、一つひとつ空間へと落とし込んでいく必要があります。


『最後のマンガ展』では、展示室の奥の壁を鏡張りにすることで空間に奥行きを持たせ、ストーリーが長く続いていくことをダイナミックに演出したり、屏風状の壁面に作品を陳列することで、ページをめくるリズムを表現してみたり。マンガを読む動作と展示空間での動きをシンクロさせるような工夫を施しました。


また、マンガの中の主人公が幼少期を振り返る場面では、曲線の壁を黒く塗り照明を落とすことで、自分自身を見つめる時の心の在り様を映し出そうと試みました。


展覧会のハイライトとなる部屋では、井上先生のアイデアで、マンガの中の主人公が手から落とした木刀を実際の展示空間に置いたのですが、さらにその片側を浮かせて、床に落ちた瞬間にこだわった時のことを今も思い出します」

 

「進撃の巨人展」の成功とその後。空間づくりを通じて日本と海外の橋渡しをする存在に

▲「Jeddah Events Calendar 2023 -Anime Village at City Walk」

その後も、韓国のテーマパークのお化け屋敷を世界コンペで受託し、全体ディレクションを担当して好評を博するなど、活躍を続けた山田。2014年に携わったのが「進撃の巨人展」でした。

山田  「原画展示では人間が巨人に襲われる残酷なシーンを赤く照らしたり、戦いの躍動感を表現するために額縁を斜めに設置したり。入社してから培ったエンターテインメントデザインを惜しみなく盛り込みました。


また、マンガを知らない人にも巨人に襲われる恐怖をリアルに感じてもらいたくて、体感型オープニングシアターを作りました。音や光だけでなく風や可動メカなどを仕込んで、襲ってくる巨人の気配を感じられる演出を施しています」

当時は漫画『進撃の巨人』の人気絶頂期。大きなプレッシャーと戦いながらのプロジェクトでしたが、展覧会は盛況のうちに閉幕。大きな反響を呼んだことが、のちの海外プロジェクトへとつながります。

山田  「『進撃の巨人展』を手がけたことがきっかけで、物語のその後の世界観を表現した『進撃の巨人展FINAL』にも関わることになりました。国内だけでなく、サウジアラビア、シンガポール、台湾、インドネシア、韓国と巡回しています。

『進撃の巨人』を愛する世界各国の方々からも好評を頂けたことが、自分にとっては非常に思い出深く、大切なプロジェクトになりました」

そして2022年と2023年には、サウジアラビアの都市ジェッダで開催されたエンターテインメントイベント「Anime Village at City Walk」をクリエイティブディレクション。それまで未知の世界だった中東地域での成功は、山田にとって大きな自信になったと言います。

山田  「国が異なっても、ワクワクドキドキしたい気持ちは同じ。自分が信じるエンターテインメントデザインを貫けば、幼い日の私がアメリカのテーマパークに魅せられたのと同じように、異なる文化圏の人にも喜んでもらえたことが実感でき、感慨深かったです。


日本のマンガをはじめとするコンテンツの空間実装化は、アジア以外の地域にもまだまだ可能性を感じています。それぞれの文化的な背景に配慮しながらも、国境を越えて人を笑顔にすることは、まさに私がやりたいこと。人が笑顔の時に、争いは起きません。これまでに培ってきたエンターテインメントデザイン力がどこまで通用するかを確かめる意味でも、大きなやりがいを感じています」

 

チームの力で感動と驚きの空間をかたちに。乃村工藝社のDNAを未来へ

今後もワクワクドキドキする空間づくりに取り組んでいきたいと話す山田。将来像をこんなふうに描いて見せます。

山田  「言葉が通じなくても伝わるという意味で、エンターテインメントデザインに国境はありません。説明しなくてもワクワクドキドキを感じられる空間を、国内・海外を問わず、これからもひとりでも多くの方に届けていきたいと思っています。


『エンターテインメントデザインをやっているヤマダという人間が、日本にいるらしい』と噂されるような存在になれたらいいですね」

山田は2023年で入社22年目。ベテラン社員の立場から、乃村工藝社の魅力、可能性について次のように話します。

山田  「かつて舞台の大道具を担った乃村工藝社の創業者が、作り物の馬に涙を流す“からくり” を施したことで、観客が驚き、感動をしたと聞きます。それ以来、『人を楽しませたい、驚かせたい』という想いが当社には脈々と受け継がれてきました。そのDNAを私もしっかりと受け継いでいると思います。


そして繰り返しになりますが、さまざまな知見を持つ人たちが総力を結集し、ひとりでは決してできないような空間をつくることができるところに、乃村工藝社の魅力、可能性があると考えます。それが、いまも私がこの会社にい続ける理由でもあります」

乃村工藝社のDNAを次の世代へと引き継ぐために──「人を楽しませたい、驚かせたい」という決してブレない想いを軸として、ワクワクドキドキする空間づくりに、山田はこれからも全力で挑み続けます。

※ 記載内容は2023年12月時点のものです

山田 竜太(やまだ りゅうた)
 

― 世界中の人がワクワクドキドキする空間創造を。― 幼少時、フロリダのディズニーワールドを訪れた時からエンターテインメント空間の創造を夢見て、2002年乃村工藝社に入社。以来、国内を中心にエンターテインメント空間を手掛け、近年その領域を海外に拡げて世界の人たちにワクワクドキドキする空間を届けている。

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