加西市鶉野町に残る約1.2kmにおよぶ滑走路跡は戦時中につくられた飛行場のもので、ほかにも多くの戦争遺跡が周りに点在し、今日まで残されています。
加西市地域活性化拠点施設「soraかさい」はこれら遺跡周遊のための交流拠点としての役割を担い、その中の「鶉野(うずらの)ミュージアム」は戦争の史実を伝えるフィールドミュージアムの中心としてつくられました。
施設の基本計画は株式会社オオバと、設計からは株式会社いるか設計集団も加わり3社の共同企業体で受注し、当社は主にミュージアムの展示を担当しました。その後、単独で展示製作を受注し、期間は計画から完成まで約6年におよびました。完成にむけては、検討委員会を経て、加西市様をはじめ、長年調査を重ねてこられた郷土戦史研究家、保存会、監修の先生方、原寸大飛行機模型制作会社など、多くの方々と共につくりあげました。
滑走路上に建つこのミュージアムでは、この地に深く関連のある2機の原寸大飛行機模型展示を核としつつ、短くも濃密な鶉野飛行場の歴史を紹介しています。この地のもつストーリーと場所性を生かした、鶉野ならではのミュージアムを目指しました。この地の記憶を紡いでカタチに残し、継承していくことがこのミュージアムの使命であり、平和について考え、人々をつなぐ場となることを願っています。
「加西市地域活性化拠点施設」にふさわしいフィールドの交流拠点となるよう、魅力的な施設づくりが課題でした。
特に展示機能をもつミュージアムの役割は、2機の原寸大飛行機模型をメインに展示しつつ、鶉野飛行場や加西市にまつわる歴史展示を行うことで、平和を考える場所とすることでした。展示手法としてはコンテンツに重きをおき、主に映像技術を用いることがご要望でしたが、一方で実物資料展示も望まれていました。
このミュージアムの最大の魅力は、歴史の生き証人である滑走路そのものに展示空間を設置し、その上にメイン展示である2機の原寸大飛行機模型を配置していることです。組み立て・試験飛行が行われた「紫電改」は滑走路上へ、特攻へ飛び立っていった「九七式艦上攻撃機」は滑走路から空へ飛び立つように配置し、滑走路、空、建築、展示が一体となった迫力ある空間で、この場所とそれ自体がもつストーリーを生かした鶉野ならではの展示となっています。
展示構成は、「技術」「歴史」の2つのゾーンとし、格子壁を介して表裏一体の空間としました。戦争という史実に2つの側面からアプローチすることで、複合的な視点で考えるきっかけを与えることが狙いです。
映像展示については、資料展示と合わせることで理解への相乗効果が生まれるよう計画しました。特に「ストーリーウォール」では、鶉野飛行場の歴史を4編のストーリーとして構成し、横長空間を活かした四連映像として展開しています。また、それらのストーリーとリンクする4つの資料展示を行い、各々が補完し合う構成としました。映像で資料の背景を知り、資料で映像にリアリティを与えることで、より深く伝わる展示を目指しています。
また、コンテンツには、ここで生きた人々の言葉をダイレクトに取り入れることで、戦争を過去の出来事としてだけではなく、肌で感じられるような表現としました。
- オープン
2022
- 所在地
兵庫県
- クライアント
加西市様
- ソリューション
企画、デザイン・設計、コンテンツ設計・制作、制作・展示施工
- 受賞
「ディスプレイ産業賞 2022」奨励賞(1.文化・公共施設部門)
「日本空間デザイン賞 2022」Longlist(08.博物館・文化空間)
「iF Design Awards 2023」(Interior Architecture部門)
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