「本国と同一仕様」ができないときの伝え方

グローバル展開されている企業様の案件に、多く関わる機会をいただいております、久森です。
外資系ブランドの店舗づくりでは、ブランドの一貫性を保つため、多くの場合で同一の仕様を前提とします。
しかし日本では、その特有の条件にあわせるため、同一仕様の「同じ品質」が成立しない場面にたびたび直面します。これに対応しようとするとコストは増加しますが、本国としては日本だけコストを度外視することもできません。結果、日本側の担当者が本国の要望と現地の都合の板挟みになってしまいます。
私自身も、外資系ブランドの店舗づくりに長く携わる中で、何度も経験してきたことです。なぜこのギャップは生まれ、どうすれば乗り越えられるのでしょうか。
同一仕様という前提が崩れるとき
グローバルの前提は「本国と同一の定まった基準での展開」。本国の図面や仕様をもとに各国展開されるケースが多く、コストも一定の範囲に収まる前提で想定されているのが一般的です。
しかし日本では、その前提が揺らぎます。細部の仕上がりや空間の完成度への期待が高く、わずかな「粗さ」も印象に影響してしまうためです。さらに搬入条件や施工環境、各国で異なる法規の影響により、同一仕様では成立しないこともあります。
私が実際に関わった店舗プロジェクトでも、本国の仕様のままでは実現できず、仕様変更と品質担保が必要になったケースが存在します。その結果、コストは当初想定を上回り、本国との認識に違いが生じることがありました。
板挟みを生む「実感の差」
この違いの背景にあるのは、合理性の違いではなく「実感の差」です。本国が納得しにくいのは、必要性を実感できていないためです。
日本の品質は、言葉だけでは伝わりません。納まりや空間の完成度といった価値は、図面や数値だけでは捉えきれないものです。
つまり問題は情報不足ではなく、その必要性が実感されていないことにあります。見ていないものは判断できない。その中で日本側の担当者は、本国と現地の間で説明を求められます。この構造が板挟みを生み出しているのです。
「説明」から「体験」へ
見ていないために判断できないのであれば、実際に見てもらうのが早道です。
現場を見てもらうことで、認識が変わる場面は少なくありません。言葉で伝わらない、現地に合った空間と品質は、見て、感じて、はじめて理解されるものです。
これを本国に理解してもらうためには、「どうすれば伝わるか」を工夫する必要があります。映像や調査資料で現地の見え方を共有する、あるいは本国とつながる立場の方に現場を見てもらうなど、「見て、体験してもらう」ための方法を模索していきます。
今回のケースでは、クライアント様の日本法人トップが本社からの出向者だったことが幸運でした。本社側と意思疎通ができる立場の方が実際に現地に赴いて現場を理解したことで、現地事情の説明が通りやすくなったのです。結果として合意形成が進み、日本の条件に合わせた仕様で実現でき、コストアップ分も認めていただけました。
日本で求められる品質は、現地なりの理由に基づいたもの。そしてそれは、実際に見れば理解できるレベルの差でもあります。
つまり、その価値を十分に共有する手段さえあれば、解決できる問題と言えるでしょう。
実際にこうした進め方で円満に解決したケースも多くあります。共通認識をつくることで、合意形成は前に進みます。
だからこそ、「説明」だけに頼らないことが重要といえるのではないでしょうか。
百聞は一見にしかず。説明だけでは理解されない、と感じたときには「体験」で伝えることも考えてみてはいかがでしょうか。