ワークプレイスづくりの、はじめの一歩

デザインのマネジメントを行っております、藤田です。
社会人には馴染み深い、「職場環境」という言葉。オフィスなどのワークプレイスづくりでは、まさにこれの改善が目的となることが多くあります。
そして職場環境の改善というテーマは、多くの場合、総務に託されます。働き方やコミュニケーションが組織全体の課題である以上、全体を見渡せる立場にその役割が集まってくるのは自然な流れと言えるでしょう。
ただ、いざ取り組もうとしたときに困るのが、「良い職場環境とは何か」という判断です。設備や制度、レイアウトといった検討対象は広く、しかもその中には数値で測れるものと、そうでないものが混在しています。そのため、どこに向かうべきかが曖昧なまま、検討が進んでしまうケースも少なくありません。このことは、空間のデザインにも大きく影響してきます。
そこで、ワークプレイスづくりの際の「はじめの一歩」について、少し考えてみましょう。
社則に見る「総務」という仕事
例えば、各社で制定される社則ひとつとっても、奥深いものです。社則は、会社の成長とともに増えていきます。創業当初はシンプルであっても、組織が大きくなるにつれて項目が増え、長く続く会社ほど細かなルールが蓄積されていく。その一つひとつには、必ず背景があります。過去に起きた出来事やトラブルをきっかけに追加され、実際の運用の中で必要性が生まれてきたものです。
つまり社則とは、会社の歴史そのもの。どのような判断をしてきたのか、その積み重ねの記録であり、組織の価値観や考え方が表れています。
その社則を扱う総務は、歴史の中枢にいる存在でもあります。過去の積み重ねを管理しながら、同時にこれからのルールを形づくっていく立場にあるからです。
裏方は、支える存在として語られがちです。手足のように主役を支える役割、といったイメージですが、身体で例えるならば、その位置づけは胴体に近い。手足は動きとして見える部分ですが、その中心にあるのは胴体です。胴体がなければ、手足だけでは何もできません。環境やルールがなければ、個々の力は発揮されない。見えている成果は、すべてその前提の上に成り立っています。
はじめの一歩で「考えること」
検討の際、多くの企業はまず目に見える要素から考え始めます。レイアウトや設備は具体的にイメージしやすく、検討の起点として扱いやすいためです。もっとも、それだけでは本質に届かない。空間を変えたとしても、使い方が変わらなければ意味はなく、結果として組織の状態そのものは大きく変わらないままだからです。
では、何から考えるべきなのか。
私たちが最初に見ているのは、空間そのものではなく、「どんな会社なのか」という点です。その企業が何をしているのか、どのような価値を生み出しているのかを、あらためて捉え直すところから始めます。
多くの場合、企業の中には自分たちでは気づいていない強みが存在しています。会社の中では当たり前になっていることが、第三者からは特徴として価値あるものに見えることもある。これを見つけ、さらなるイノベーションのきっかけを作ることを、ワークプレイスを考える出発点とします。
はじめの一歩で「すべきこと」
ところが、組織が大きくなるほど分断は起きやすく、他部署が何をしているのか分からない、自分の仕事がどこにつながっているのか見えにくい、といった状況が生まれます。この状態では他のやり方に触れる機会もなく、知見が共有されることもないため、新しい発想は生まれにくくなります。解消のためには、社内で見えていないものを見えるようにする必要があります。
そこで起点となるのが「見える化」です。社内で行われていることを可視化し、それぞれの役割や違いを認識できる状態をつくること。組織を理解するための土台は、そこから整っていきます。
ワークプレイスは、その理解を支える手段になり得ます。空間は単なる器ではなく、情報を伝える媒体として機能するものです。社内の活動を日常的に共有し、言葉だけでは伝えきれないことを自然に伝えていく。また、部署同士のつながりや他者の存在を感じやすくすることで、関係性そのものを可視化する役割も担います。
その結果として生まれるのが、コミュニケーションの変化であり、そこから派生する新しい発想です。空間は単独で何かを変えるものではなく、組織のあり方と結びつくことで、はじめて機能し始めます。
ワークプレイスづくりの出発点は、レイアウトではありません。空間はあくまで結果として形になるものです。先に必要なのは、「自社が何者なのか」を捉えること。その強みや価値を言語化し、組織として共有することにあります。
その理解があってはじめて、空間は意味を持つ。空間そのものがメッセージを帯び、組織のあり方を支える存在へと変わっていくのです。
ワークプレイスづくりのはじめの一歩は、すでに社内にある。
それを見つけ、言葉にし、共有していくこと。構想を現実の空間へとつなげる出発点は、そこにあるのだと考えています。