空間創造によって
人々に「歓びと感動」を届ける

乃村工藝社

近隣や行政との調整文化、うまく説明するには

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グローバル展開されている企業様の案件に、多く関わる機会をいただいております、久森です。

外資系ブランドの店舗づくりに携わっていると、思いがけない仕様変更の交渉が、次々と発生することがあります。

消火設備の散水障害による什器の高さ制限に対応したと思えば、今度は本国仕様の材料が日本では不燃材として認められず、再び変更の相談が持ち上がる。そうしたやり取りが積み重なっていくことが珍しくありません。

その都度、予定していなかった説明や調整が増えていき、日本側は負荷が増えやすい。また一方で本国側も、「なぜできないのか」が十分に理解できないまま、あれもダメ、これもダメと変更が重なることで、背景が見えないまま、判断できなくなっていきます。

こうした現場を数多く見てきましたが、「このやり取りが、もう少し何とかなれば……」と感じる場面に、心当たりのある方もいらっしゃるかもしれません。

こうした状況の背景には、日本特有の「様々なルールが重なる構造」があります。その正体は、単一のルールではなく、地域の事情などによる複数の前提の重なりにあります。

 

制約は「1つのルール」ではなく「重なり」でできている

消防法ひとつをとっても、都道府県ごとの条例に加え、消防署の立ち入り調査など現場判断によって運用が異なります。看板に関しても、景観条例が影響したり、地域特有の規制が存在する場合もあります。

さらに、建物の構造や立地、地下かどうかといった条件によっても判断は変わります。そのため、「あの店舗では問題なかったのに、こちらでは認められない」という状況が起き、説明の前提自体が案件ごとに変わってしまいます。

これらは法規や条例に基づくため回避できず、担当者は前提を整理しながら本国へ説明していく必要があります。

 

「イメージ」で前提を共有するという方法

こうした制約は、背景を知らなければ理解しづらいものです。ヨーロッパが石造り文化であるのに対し、日本は木造建築が密集してきた歴史があるといった、前提となる認識に違いがあります。

そこで有効なのが、相手がイメージしやすい具体に置き換えることです。例えば「京都」は海外でも知られた都市であり、神社仏閣や木造建築が密集する風景を思い浮かべやすい場所です。道も狭く、火災が起きれば被害が広がりやすい。そうした前提を共有することで、消防法の厳しさにも納得感が生まれます。

また、映画などにも登場する日本の地下道や地下街は、海外でも知られる存在です。地下街が旅行者から迷宮扱いされる、といった笑い話は有名ですね。日本は地震が多く、地下では避難経路が限られるというリスクがあります。そのため、地上とは異なる基準が設けられているのです。

こうした具体的な情景とともに説明することで、「なぜその制約が必要なのか」が伝わりやすくなります。

いかがだったでしょうか。もちろん、こういった事例はあくまで個別具体的なもので、常に発生するわけではありません。これを「細かい規制がケースバイケースでたくさんある……!」と捉えると、どうしてもネガティブな印象を持ってしまいがちです。

一方で、日本の制度は一律に厳しいルールで制限しているというよりも、必要な場面ごとに個別に規制を設けている、と見ることもできます。その分、条件さえ満たせば柔軟に対応できる余地が残されている、と捉えることもできるのではないでしょうか。

一つの捉え方として、こうした視点の切り替えが、相手との認識を揃えるうえで有効に働く場面もあります。

土地柄、ちょっと特殊な規制がある。これを納得できるようイメージとして伝えられれば、きっとスムーズな進行につながっていくはずです。
この視点が、本国との距離を縮め、プロジェクトを前に進める鍵になりましたら幸いです。

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