社員食堂は誰のもの?「餅は餅屋」の仕事術

新規顧客開拓や新規プロジェクトの開発を担う部門の山口です。
ある企業から乃村工藝社へ、「社員食堂を新しくしたい」というご相談をいただいたときのお話です。
それは一見すると、内装や家具の入れ替えを行なう、比較的シンプルなプロジェクトに見えました。
ところが、いざ蓋を開けてみると、そのプロジェクトは思いのほか複雑な様相を帯びていたのです。
一体、何が問題だったのか。そして、どう解決へと向かったのか。
そんなお話に、少しだけお付き合いください。
社内空間をめぐる複雑な事情
社員食堂のリニューアル計画は、当初、内装や家具の入れ替えの延長のように見えていました。
しかし実際には、複数部門が関わるプロジェクトでした。
食堂は福利厚生の一環として人事部の管轄。一方で、会議室不足という課題を抱える総務部からは、時間帯によってはミーティングスペースとしても活用したいという声が上がります。
どちらの意見も、会社のことを思ってのものです。
しかしながら、その両方の部門の意見を誰がどう取りまとめるか、先行きの見えない状況でした。
社員食堂とは、誰のための空間か
本来、社員食堂は「利用者のための空間」であるはずです。ところが議論は、いつの間にか「どちらを優先するか」という方向へと傾いていきました。福利厚生としての質を守るのか。全社的な効率を重視するのか。管理する側の論理が前に出るほど、板挟みは深刻になります。
問題は対立そのものではなく、議論の方向性でした。「どちらが正しいか」ではなく、「どうすれば両立できるか」という視点で意見を出し合うべきだったのです。
目的が揃わなければ、議論が噛み合わないのも道理です。
第三者が潤滑油になるとき
このプロジェクトには、私たちはあえて「第三者」という形で参加しました。まず始めたのは人事と総務、それぞれの話を丁寧に聞くことから。当事者同士では、立場が先に立ち、議論が硬直してしまうこともあります。その間に入ることで、議論は少しずつほぐれていきました。外部の立場だからこそ、どちらかに肩入れすることなく、双方の意図を翻訳し、整理することができる。これはプロジェクトの「潤滑油」のような役割です。
何を守りたいのか、誰のための空間なのか。その原点に立ち戻ることで、議論は「どちらを優先するか」から「社員にとってどう両立できるか」へと変わっていきました。
部署の都合ではなく、利用する社員にとっての心地よさと使いやすさ。その視点を軸に据え直したことで、食堂としての快適性を保ちながら、時間帯によって会議利用も可能な空間として設計をまとめることができました。
いわば、「餅は餅屋」。
問いを整理し、目的を揃えることもまた、空間づくりに関わる専門家の役割のひとつなのです。
この社員食堂の話は、決して特別なものではありません。部門をまたぐプロジェクトでは、同じようなすれ違いが起こり得ます。
大切なのは、「どちらが正しいか」ではなく、「何のための空間か」という視点を持ち続けること。ですが、立場が絡み合う現場では、自分たちだけで状況を整理するのが難しい場面もあるでしょう。
そんなときには、専門性を持つ第三者に委ねてみることも、仕事術のひとつ。「餅屋」に任せてみることを、ひとつの選択肢として考えてみるのはいかがでしょうか。