空間創造の最前線で数々のプロジェクトを牽引する佐藤 光。現在は文化環境事業部の課長として、行政をクライアントとする新たな領域で手腕を振るっています。若手時代の手痛い失敗から、いかにして周囲を巻き込む独自のスタイルを確立したのか。諦めない挑戦の軌跡と、空間づくりにかける熱い想いに迫ります。
想像力を起点にチームのベクトルを合わせる。正解のない空間づくりに向き合う現在地

2014年の入社以来、企業のショールームや展示会などのPR施設を一貫して担当してきた佐藤。2026年からは、博物館や科学館といった文化施設を担当する部署へと異動し、これまでの民間企業向けとは異なるアプローチが求められる環境に身を置いています。
佐藤「今年から現在の部署に配属となり、文化施設の経験が少ない中で課長を務めています。行政のお客さまが中心となるため、築き上げた信頼関係の延長で継続的にお声がけをいただける機会のある民間案件とは異なり、毎回フラットな状態から公正なプロポーザルなどを経て案件を獲得していく必要があります。
そのため、数年先の世の中の動きを見据え、社会的な課題や補助金の動向なども広くリサーチしながら仮説を立て、仕事の種を見つけていくような視点が求められます。これまでとはアプローチの仕方が大きく異なるため、日々新しい発見があります」
経験豊富なベテラン社員が多い部署において、佐藤は自身の役割を「外からの視点をもたらし、組織を広げていくこと」だと捉え、次のように語ります。
佐藤「文化施設ならではの良きやり方は継承しつつ、これまで私たちが追いかけきれていなかった新しい市場も開拓していきたいと考えています。
新たに配属された部署には、長年文化施設に携わってきた経験豊富なメンバーが多くいます。そこに、私がこれまで民間市場で培ってきた知見という新しい視点を掛け合わせることができればと考えています。そのためにも、他部署とのコミュニケーションを積極的にとり、みんなを巻き込みながら事業の枠を広げていきたいですね」
社内外の多様な専門家を束ね、プロジェクトの進行を牽引するジョブリーダーを担う佐藤。日々業務に向き合う中で、根底に置いている価値観があると話します。
佐藤「私たちが手掛ける空間づくりには、最初から明確な正解が用意されているわけではありません。だからこそ、営業の立場であっても、どうすれば課題を解決できるかを自分なりに想像し、その意見をクリエイティブのメンバーに提案していくことを大切にしています。
上がってきたデザインに対してもその意図を深く想像し、お客さまの課題解決にどうつながるのかをチーム全体ですり合わせる。そのために、誰よりも案件を深く理解し、方向性を示す存在でありたいと常に心がけています」
行動力でつかんだ入社の切符。痛恨のミスから学んだプロフェッショナルとしての責任

学生時代、休学をしてバックパッカーとして世界を巡っていたと話す佐藤。その行動の背景には、当時抱えていた強い思いがありました。
佐藤「当初思い描いていた大学生活と現実のギャップに悩み、周囲への焦りや悔しさがありました。その中で、就職する頃には勝負できるようになっていないといけないと逆算し、他の人がやらない経験をして成長しようと決意しました。自分で資金を貯めて休学し、南米をはじめ各国を巡るバックパッカーの旅へ出たんです」
帰国後、就職活動の時期を迎えた佐藤は、ある出会いを振り返ります。
佐藤「あちこちにバックパックしている私を見て当時所属していたゼミの先生からディスプレイ業界で働くOBの方を紹介していただきました。その方がご自身の仕事をとても楽しそうに、そして誇りを持って語る姿に強く惹かれ、この業界を志すようになりました」
就職活動で乃村工藝社に興味を持った佐藤は、OB訪問のつながりがない中でも自ら機会を探し、積極的に人と関わることで企業理解を深めようと行動しました。
佐藤「とにかく乃村工藝社で働きたいという思いが強く、さまざまな方法で社員とお話しできる機会を模索しました。今振り返ると試行錯誤の連続でしたが、結果として複数の社員に会うことができ、仕事のやりがいや魅力を真摯に教えていただきました。その温かい対応と懐の深さに感動し、絶対に入社したいと強く決意したのです」
入社後、大阪に配属された佐藤は、日々の業務に奔走する中で、仕事の本質的な責任に気づかされる出来事を経験します。それは入社5年目の頃、日本を代表する総合電機メーカーの創業100周年記念イベントという重要な案件を担当した時のことでした。
佐藤「当時、私は大型イベントの中の一部分を任されていました。無事に現場を納め、いよいよオープン当日の朝を迎えたのですが、その重要な局面で自分の責任を全うできない事態を招いてしまい、上司から厳しく指摘を受けました。さらにその後の海外での展示会でも、お客さまにとって最も重要な瞬間への向き合い方に甘さがあったことを痛感するミスが重なりました。
その時、自分としては『役割を果たした』という思いがありましたが、上司から『仕事は現場を納めるだけでなく、お客さまに引き渡し、それを見届けるまでが責任である』と指摘され、自分の認識の甘さに気づかされました。
お客さまに寄り添い、同じ視点で取り組めていなかったことに気づき深く反省しました」
この経験を機に、佐藤は自らの姿勢を反省し、仕事への向き合い方を変えていきます。
佐藤「それまでは“業務を完遂すること”に意識が向いていましたが、営業の仕事の本質はそこではないと痛感しました。
業務を通して信頼関係を構築することこそが重要で、常にプロジェクトを俯瞰し、自分が理解できていないグレーな部分を放置せず、自分の言葉で完全に説明できるまで一つひとつ解像度を上げる。リーダーとして全範囲に責任を持つという姿勢は、自身の未熟さを痛感したこの失敗があったからこそ身についたものです」
自ら絵を描き議論の輪へ。JVプロジェクトを牽引した実直なディレクション

▲2025年日本国際博覧会 大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn
提供:(公社)大阪パビリオン / 担当範囲:パビリオン全体の展示設計、施工、保守および10社の出展ブースの展示設計、施工
クライアント:2025年日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会、公益社団法人2025年日本国際博覧会大阪パビリオン
失敗を糧に実直に経験を積み重ねた佐藤は、2025年日本国際博覧会 大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn という、複数の企業が共同で事業を行う非常に難易度の高いJV(Joint Venture:共同企業体)プロジェクトに主要メンバーとして参画します。
佐藤「すでに動いているプロジェクトに途中から入り、情報量が圧倒的に足りない中でのスタートでした。わからないなりに、情報の整理を率先して進め、自分が把握できた情報を一つひとつ可視化し、社内外のメンバーと認識をすり合わせていきました。
わからないことを正直にわからないと表明し、わかった内容を積み上げて議論を主導したことで、少しずつ信頼を積み重ね周囲も私の提案に耳を傾けてくれるようになりました」
佐藤の強みは、営業でありながらクリエイティブな議論にも深く入り込み、自ら絵を描いてアイデアを可視化するスタイルにあります。
佐藤「さまざまな背景を持つメンバーが同じ方向に動いていくには共通認識を持つことが何より重要だと思います。漠然とした情報を同じ視点で見つめるために、絵や図、例えを用いて議論を主導しました。社内外問わず打ち合わせで、何か話がずれているなと感じたときは『例えばこういうことですよね~』と絵を描いてみたりして細かく認識を合わせる工夫をしました。『そうそう』となることもあれば『いやいや、こういう風に考えていた』と反応はさまざまですが、ズレを早めに発見して、そこを起点に議論を積み上げていくことができるので大切な作業だと思います。
クリエイティブのメンバーが夜中まで議論しているところに一緒に入り、チーム全員で、当社としてはこう進めるべきだと方向性をすり合わせていました。過去の案件で培ってきたこの伴走のスタイルが、複雑なプロジェクトを推進する上で大きな原動力になりました」
数々の困難を乗り越え、プロジェクトが形になった時、空間づくりならではの圧倒的な感動が待っていました。
佐藤「万博が開幕して、実際に来場者が私たちの作ったパビリオンに入り、ずっと想像してきた体験の流れや、それを楽しんでいる姿を見た時は、こみ上げてくるものがありました。厳しい調整や泥臭い作業の連続でしたが『ああ、この笑顔を見るために私たちは頑張ってきたんだ』と、すべてが報われた瞬間でした」
佐藤は、乃村工藝社で働く最大の魅力は人であり、チームで創り上げる喜びだと語ります。
佐藤「この仕事は一人では絶対にできません。私の周りには、仕事の厳しさを教えてくれるだけでなく、本気で楽しもうとする熱いメンバーがたくさんいます。そんな温かくもプロフェッショナルな人たちと一緒に、ものづくりの中心に立って空間を創り上げることができる。それが、乃村工藝社の営業の最高のやりがいだと感じています」
失敗の積み重ねが自分を強くする。空間の枠を超えた「コトづくり」への飽くなき探求心

数々の現場を経験し、現在は新たに配属された部署で組織を牽引する立場となった佐藤。今後のキャリアについて、空間という枠にとらわれない新たな価値の創造を見据え、次のように語ります。
佐藤「今までやったことのないことにチャレンジし続けたいという思いが常に根底にあります。当社の仕事は、単なる空間づくりではなく、そこに生まれる人の『想い』や『振る舞い』、『関係性』を設計する仕事です。
今後は、空間そのものをつくるだけでなく、そこで生まれる体験やコミュニケーションといったコトづくりの視点を掛け合わせて、お客さまの課題を解決する手段をもっと広げていきたいと考えています。そのために、私自身も新しい市場や知識を貪欲に吸収し、挑戦を続けていきたいです」
さらに、佐藤は自身の経験を踏まえた熱いメッセージをこう送ります。
佐藤「仕事をする上で一番のエネルギーになるのは、これをやりたいという強い思いです。乃村工藝社には、熱意を受け止め、形にしようと伴走してくれる仲間がたくさんいます。もし少しでもやりたい気持ちがあるなら、その思いを大切に是非最初の一歩を踏みだしてほしいです」
そして最後に、これから新しい環境に飛び込もうとしているすべての人に向けて、自身の経験を踏まえたエールを付け加えました。
佐藤「周りで活躍している人たちを見ると、みんな優秀で失敗なんてしていないように見えるかもしれません。でも実際は、裏ではみんな苦労していますし、たくさんの失敗を経験しています。私も最初はうまくいかないことばかりで、悩んでいた時期がありました。この失敗だらけの社会人生活の中で手にした事実は、チャレンジの先にしか成長はない!という当たり前のことです。
自分の課題としっかり向き合い、一つひとつ丁寧に行動を積み上げていけば、必ずできることは増えていくはずです。だからこそ、失敗を恐れずに飛び込んできてください」
ひたむきな熱意からキャリアをスタートさせ、数々の失敗と自省を成長の糧にしながら、周囲と協力してプロジェクトを牽引するリーダーへと成長した佐藤。実直に挑戦を続けるその真摯な姿勢は、これからも多様なプロフェッショナルたちと伴走しながら、空間の新たな可能性を切り拓いていきます。
※ 記載内容は2026年4月時点のものです
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