空間創造によって
人々に「歓びと感動」を届ける

乃村工藝社
乃村工藝社 SCENES

たくさんの体験から、子どもたちの夢中を引き出す【前編】

  • #関西
  • #リニューアル/リノベーション
  • #2025
2026.07.06
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JUNOPARK
JUNOPARK
積水ハウス コミュニケーションデザイン部 CXデザイン室/ キッズ・ファーストグループ グループリーダー 箕輪憲良さん

箕輪憲良さん積水ハウス
コミュニケーションデザイン部 CXデザイン室/ キッズ・ファーストグループ グループリーダー

積水ハウス コミュニケーションデザイン部 CXデザイン室 矢城利恵香さん

矢城利恵香さん積水ハウス
コミュニケーションデザイン部 CXデザイン室

乃村工藝社 クリエイティブ本部 クリエイティブプロデュースセンター nora 部長/デザインディレクター 大西 亮さん

大西 亮さん乃村工藝社
クリエイティブ本部 クリエイティブプロデュースセンター nora 部長/デザインディレクター

乃村工藝社 クリエイティブ本部 プランニングプロデュースセンター 企画3部 第8ルーム ルームチーフ 横田智子さん

横田智子さん乃村工藝社
クリエイティブ本部 プランニングプロデュースセンター 企画3部 第8ルーム ルームチーフ

自由研/COLEYO  川村哲也さん

川村哲也さん自由研/COLEYO

planning & design ─遊びながら感性を育む[住育エデュテイメント施設]

JUNOPARK

京都・木津川市

来場者の楽しさと、企業が発信したいメッセージとをどう融合させるのか? 企業が設置する多くの施設に共通する課題だ。子どもたちの「幸せ」を徹底的に議論し、具体的な像にブレークダウンしていく。そうやって生まれたコンセプトを、子どもたちが夢中になるカタチにつくり込む。これまでにない企業コミュニケーションの場が、新たに誕生した。

 

力作の高層タワーがいきなり倒壊

子どもたちが4つのチームに分かれて一斉にスタート。挑戦するのはタワーの建設だ。ヘルメット姿に防護メガネの子どもたちが手にするのは、長さ50cmほどの木製の棒と、たくさんの穴が開いて角度が自由になるプラスチックのジョイントボール。それらをつなぎ合わせて、タワーを組み上げていく。時間内にどれだけの高さまで到達できるかを競い合う「2メートルタワー建築」の体験アクティビティだ。

制限時間がくると、興奮した子どもたちの声が静まり、高さ計測の時間。計測スケールの2.5mを超えたチームからは、大きな拍手や歓声が上がる。しかし、そこで終わりではない。続く耐震実験では、タワーの土台が地震のように揺れる。いくつかのタワーは無残に倒壊。今度は、子どもたちから落胆の声が上がる。

すかさずクルーが子どもたちに語りかけ、地震に強い構造の形をレクチャーしていく。各チームは、作戦会議を開き、より地震に強いタワーの建設に再びチャレンジ。自分が組み上げるタワーがどんどん高く、強く進化するのが嬉しくて、何回も通いつめる子どもがいる一方で、家族チームで、子どもよりも真剣に取り組む大人の姿が珍しくない。

ユニバーサルデザインをテーマにした「戦略アスレチック」の体験アクティビティでは、障害物のあるコースを子どもたちが攻略する。チームのどの子も、最初はなんなく通過。2巡目は、目、手、脚などに不自由がある人、妊婦さんや手押し一輪車で荷物を運ぶ人など、行動に制約がある人を疑似体験できる装具を身に着けて挑戦する。すると仲間の声援もむなしく、コースの途中で脱落する子どもが続出。得点も1巡目には遠く及ばない。

全員を座らせてから、クルーがコースの障害を取り除くヒントをレクチャーし、チームごとに作戦会議。子どもたちは、コースのどの部分がネックなのかを話し合い、コースの改造に取り掛かる。そして最後の本番チャレンジ。装具を着けた状態で改造コースに挑戦する。ゴールできる子どもが増え、得点が入るたびにチームは盛り上がっていく──

2025年8月、積水ハウスが京都府木津川市にオープンさせたJUNOPARK(ジュノパーク)は、子どもたちの感性を育む「住育エデュテイメント施設」だ。施設には、「デザイン」「構造」「ユニバーサルデザイン」「住環境」「資源循環」「自然環境」の6つのテーマについて、5つの体験アクティビティと、22の体験ギャラリーがある。「住」にまつわるテーマを楽しみながら学ぶことで、暮らしのなかで幸せを感じる感性を育むことを目的としている。

4フロアある広い館内では、一日中、にぎやかに子どもたちの声が響き、中央の大きな吹き抜けには、巨大な樹を思わせる螺旋階段。元気に階段を上がっていく子どもたち、樹の根元の図書スペースで静かに本を開く子どもたち、体験ギャラリーにくぎ付けの子どもたち。それぞれが自分のお気に入りの場所を見つけ、思い思いに過ごしている。

子どもたちの夢中が、感性を育む

<資源の循環 ビフォーアフター>リサイクル前のモノのロープを引くと、意外な場所でリサイクル後のモノが反応する

JUNOPARKは、住宅技術の研究開発を行う「積水ハウス総合住宅研究所」に併設された体験型研究施設「納得工房」だった建物だ。そのリニューアルを考えるにあたって、まずは積水ハウスの社内で徹底的に議論してきたと、同社の箕輪憲良さんはいう。

「納得工房は、研究所の成果をお客さまが見える形にして、住宅選びの参考にしていただく施設でした。リニューアルは、次世代のために何かができる企業になりたい、幸せを提供できる企業にしたいという経営の方針発表とタイミング的にマッチしたところから始まりました」

しかし、テーマが大きいだけに、新しい施設のコンセプトを具体化するのは容易ではなかった。プロジェクトをリードしていた同社の矢城利恵香さんが語る。

「私が参加した最初の頃は、まだコンセプトはないけれど、“幸せ”をテーマにした施設をつくると言われたんですね。でも、“幸せ”って抽象的すぎてよく分からない。広告代理店にお願いしてコンペも行なわれていたのですが、その提案を見てもイメージが違う。それで、漠然とした“幸せ”ではなくて、もう一度、テーマの設定からやり直そう。何をするのか、ゼロベースから考えようということになりました。

それから3~4カ月ぐらいかけて、積水ハウスはどんな会社なのだろう、積水ハウスが次世代の子どもたちに伝えたいこと、残したいことって何? といったことを話し合いました。関連部署の方にも入っていただいて、ずっとグループディスカッションを続けたんです。それで、現在、JUNOPARKが掲げる6つのテーマが見えてきました」

しかし、議論はそこでは終わらない。6つのテーマとつながる「子どもの幸せ」をどう実現するのか。続けて、一段ずつ掘り下げていく議論を続けたと矢城さんはいう。

「どうすれば子どもたちを幸せにできるのか。かつて当社の社員たちが夢中になってきたことを話し合ったり、専門家の方々へのヒアリングを行なったりしました。それで見えてきたのは、子どもたちが幸せになるには、まずは豊かに感じられる心が必要だと。豊かに感じられる心を育むには、夢中になること。夢中になるには、たくさんの体験をすること。
 つまり、子どもたちは、たくさん体験することによって、なにか自分の夢中を見つけられて、その夢中になったものから子どもの感性が育まれて、感性が育まれることで幸せになる──そういう4階層のピラミッドがつくられて、それがコンセプトになりました」

大事なのは、ちゃんと失敗できることです

左:<マイルーム大改造>本物の素材を自由に組み合わせ、タブレット上に自分だけの部屋をつくり上げる
右:体験ギャラリーの展示は、どれも子どもたちが自分で動かしてみると、何かが分かる仕掛け

コンセプトは決まった。では、それをどんな具体的な形に落とし込めばいいのか。そこからも長い議論の連続だった。実際の施設づくりを担当することになった乃村工藝社のクリエイティブディレクター、大西亮さんは、通常とは違う厚い体制で臨んだという。

「いつものように、役割分担に応じてタテ割りのチームを組むのではなく、最初から企画、展示、演出、アートディレクターなどが集まって、強力なコアになるクリエイティブデザインユニットを構成したんです。そこで基本的な部分を設計して、各コーナーを担当するスペシャリストチームに渡していく。チームには、社内、社外を問わず、活躍できる人に最初から入っていただきました」

乃村工藝社のコンテンツディレクター、横田智子さんは、最初は積水ハウスが伝えたいことと、子どもたちがどれだけ楽しめるかのバランスを取るのが難しかったという。

「子どもが主役の施設だから、と子どもが楽しめそうなノリの内容を最初はご提案しました。でも、積水ハウスだから伝えられることをもっと考えてほしいというフィードバックがあって、先方の各部署にヒアリングしながらつくり込んだら、今度は真面目になり過ぎたね、と。その頃には自由研にも入っていただいていて、関係者みんなが一緒になって、議論と試行錯誤を繰り返しました。

一緒に北海道の参考になる施設を見学に行ったりもして、これで行けるねというところへ着地するまで約1年。走りながらつくる感じで、それ以降も、みんなでほぼ毎日、JUNOPARKの打ち合わせをしていましたね」

実際のコンテンツをつくるにあたって、プロジェクトに参加した自由研/COLEYO・川村哲也さんの知見が大きく役に立った。自由研/COLEYOは、子どもたちの「探究する楽しさ」をテーマに、子どもの体験教室やイベントの開催、ノウハウの収集・発信、企業との共同研究などを行なう会社だ。川村さんはいう。

「“夢中”とか“モチベーション”は、僕たちも大事にしてきたテーマなんです。真面目と遊びとのバランスでいうと、やはり入り口の部分は、遊びというか、楽しさが際だっていることがポイントです。伝えたいメッセージは、最後に、ちゃんとその体系の中で気持ち良く落ちるように設計すればいい。最終的には、そういう方向でまとまりましたね。

京都で子ども向けの教室を経営していますけど、そこでは300人の生徒が毎日違う体験プログラムをやってるんです。その経験から学んだのは、子どもたちにワクワクしてもらうには、ちゃんと失敗ができるようなデザインになっていることが大事です。子どもたち自身がやってみて、うまくいかないなとか、もっとうまくやる方法があるんだと思ったタイミングで、色々と知りたくなる。だから、あまり教えないでスタートして、まずは失敗を体験してもらう。それで、みんな夢中になります。そういったステップを踏んでもらうには、1つのアクティビティに35分とか、45分くらいはかかります。JUNOPARKでは、それが基本になりました」

<ゴーストハウス調査隊>
手分けして不快の原因を突き止める。洗面所の窓には蛾が飛び交い、湿気や臭い、水漏れ音など、不快要素が盛りだくさん

これは「学級崩壊」ですね

5つのアクティビティで、最初に内容が決まったのは、「2メートルタワー建築」だった。

「たまたま弊社で耐震タワーの授業を持っていて、それをダイナミックにする形でご提案しました。いったん、子どもたちは高さに意識が向くのですが、高いだけじゃダメだと理解する。地震の仕掛けで、とてもテンションが上がります」(川村さん)

 仕掛けには、安全性と子どもたちをその気にさせるリアリティがつくり込まれた。

「安心安全を徹底するために、木製の棒は角を丸めてあります。ヘルメットや防護メガネは、安全のためであると同時に、子どもたちのテンションを上げる効果も意識しています。計測台に上がる子には安全帯をしてもらいますが、本物は着脱が難しいので、子どもが扱えるものにカスタマイズしました。起震装置も工夫しました。揺れ幅が3段階に調整できるようにして、例えば半数のチームのタワーが倒壊するといった、子どもたちが盛り上がる揺れ幅にしてあります」(横田さん)

どのアクティビティでも、子どもたちの盛り上がりを仕掛ける一方で、興奮させすぎないことも大事な要素だった。特に「戦略アスレチック」では、そこが課題になった。

「内容が決まった段階で、検証テストを行ないました。そうしたら興奮した子どもたちを統制できない。学級崩壊だねって、関係者みんなで頭を抱えました」(横田さん)

<戦略アスレチック>子どもたちの盛り上がりを仕掛ける一方で、興奮させすぎないことも大事な要素だった。

 

「あの時は、子どもたちの興奮度合いが想像の斜め上を行っていましたね」(矢城さん)

「それで、私は娘の学校の子たちに来てもらって、自分で進行役を務め、実際にやってみたんです。やってみて思ったのは、真面目なところから入って、反応しない子どもたちを盛り上げるのは難しいけれど、盛り上がった子どもたちを、バランスを取ってコントロールすることはできるかな。そう思いました」(箕輪さん)

結局、進行の細かな工夫と、子どもと接するクルーの訓練でバランスが取れたという。

「子どもは、身体的にクリアできるギリギリのものに、ものすごく盛り上がるんです。自分の体がどんどん成長して、できることが増えていくタイミングなので、飛べるか飛べないかの距離って、絶対に飛びたいんですよ。

一方で、ちょっとした動作で簡単に落ち着いたりもします。スタートの前や説明の時に座らせるとか、一回、深呼吸させるとか、ちょっとした動作を間に挟むだけで、心の落ち着きを取り戻してくれる。オープン前のクルー研修では、声の大きさ、高さ、スピード、この3つで子どもたちの興奮をかなりコントロールできますとお伝えしたら、みなさん、一所懸命に練習をされて、ちゃんとできるようになりました。

人と競い合うことで子どもたちは興奮しますけれど、感性を育む施設なので、順位がつくような戦いにはあまり落とし込みたくはない。だから、戦略アスレチックではタイムトライアルをなくしましたし、他のアクティビティでも、1回目の自分を2回目の自分が超えるという要素にとどめています」(川村さん)

<再生モノづくりラボ>ゴミの山から選別したゴミを判定機で正誤とポイントを確認し、リサイクルマシンへ投入。最後は、きれいなキーホルダーに生まれ変わる

 

プロフィール

積水ハウス コミュニケーションデザイン部 CXデザイン室/ キッズ・ファーストグループ グループリーダー 箕輪憲良さん

箕輪憲良さん積水ハウス
コミュニケーションデザイン部 CXデザイン室/ キッズ・ファーストグループ グループリーダー

積水ハウス コミュニケーションデザイン部 CXデザイン室 矢城利恵香さん

矢城利恵香さん積水ハウス
コミュニケーションデザイン部 CXデザイン室

乃村工藝社 クリエイティブ本部 クリエイティブプロデュースセンター nora 部長/デザインディレクター 大西 亮さん

大西 亮さん乃村工藝社
クリエイティブ本部 クリエイティブプロデュースセンター nora 部長/デザインディレクター

乃村工藝社 クリエイティブ本部 プランニングプロデュースセンター 企画3部 第8ルーム ルームチーフ 横田智子さん

横田智子さん乃村工藝社
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自由研/COLEYO  川村哲也さん

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