西伊豆の土肥地区にある旧鈴木邸という母屋と3つの蔵からなる大きな邸宅は、江戸時代より地域の中心的な存在として親しまれてきました。“古美と過ごす価値”を念頭に、このたび宿泊2室のオーベルジュとして各建屋と外構を改修しました。
母屋は閉塞感のある間取りを見直し、上下左右へと空間の広がりをもたせて現代の快適性を確保しました。3つの蔵は各々がもつ空間的個性を活かして最低限のデザインを加えることで昔の雰囲気を継承したいと考え、2棟を贅沢な屋外露天風呂をもつ宿泊棟へ改修し、1棟をラウンジとスパを兼ねた機能としました。
周辺の宿泊施設とも掛け合わせられ、地域に溶け込みそして愛されるオーベルジュが実現しました。
【社会課題/お客様の課題/ご要望】
土肥は、長きにわたり温泉旅館街として人気を得てきた一方で、飲食店のバリエーションが少なく、観光拠点となるカフェや西伊豆の食資源を活かした観光コンテンツがないことなどから、観光客の回遊消費の少なさが長年の課題でした。
この施設整備は事業収益性優先ではなく、この地域のためになる施設にすること、そして観光客ならびに地域住民に受け入れられ愛され続けるような施設にして欲しいというご要望でした。
【解決策】
当社では建物がこの土地で積み重ねてきた時間の経過を尊重し、各建屋が持つ味わいを見つけ出し、それらを魅力へと変えられる設計とデザインが必要だと考えました。
既存不適格の建築物の構造的な負担を考慮しながら間取りを見直し、母屋は奥行きのある小屋組み、ラウンジとした一ノ蔵は粗く塗られた左官壁面、宿泊棟の二ノ蔵はダイナミックなワンルームの空間性、三ノ蔵は二階建ての縦への広がりと板壁の裏に隠されていた土壁など、各建屋の味わいを尊重するとそれがそのまま各施設の魅力そのものになりました。
【お客様の声】
短納期のなか、極めて品質の高いデザイン・施工技術をもって土肥の歴史を代表する旧鈴木邸を再生していただいた結果、「LOQUAT 西伊豆」に来られる観光客のみならず、地域住民の方も毎日のように来館いただき、日々の生活のなかでほんの少しの豊かさを提供する憩いの場となることができました。
連日、宿泊棟のみならず、レストラン、ベーカリーやジェラテリアに関しても、満席や売り切れが続くほどの賑わいを見せています。
<当社プロジェクトメンバー>
【営業・プロジェクトマネジメント】平塚 慎也、八木 信之
【企画】二宮 咲
【デザイン・設計】小糸 紀夫、井上 裕史、中島 忠宏、手塚 亮太郎
【制作・施工】遠藤 淳、井上 敬之、菊地 野原